前回まで数回にわたり、仮想環境にUbuntuデスクトップをインストールして使ってみる方法を紹介した。この流れで、もう少しUNIX系OSベースのディストリビューションについて紹介したいと思う。今回取り上げるのは「FreeNAS」だ。
企業の中には、コンシューマー向けに販売されている廉価なNASデバイスでは機能が足りない、もしくはコンプライアンを満たせないが、NetAppなどの高価なストレージアプライアンスは購入できない……といった中間層が存在する。そういった場合に有用なのがUNIX系OSをベースに開発されたソフトウェアアプライアンスだ。まずは、その代表的なものの1つであるFreeNASを取り上げる。
FreeNASとは?
FreeNASは、一言で言うとFreeBSDベースのNASソリューションであり、米iXsystemsが開発している。同社は「TrueNAS」というストレージ製品も開発しており、FreeNASはそのオープンソース版といった位置づけになっている。両者には機能やサポート面に違いがあり、ハードウェアも含め商用サポートや多様な機能が必要な場合にはTrueNASの購入を検討することになるが、「ハードウェアは自前で用意する」というのであればFreeNASで事足りるかもしれない。
FreeNASのWebサイト |
また、FreeNASは「オープンソースでNASソリューションをセットアップしよう」と考えた場合、最初に候補に上がるソリューションでもある。インストールが簡単で出来が良く、管理も簡単だ。FreeBSD ZFSのパワーをそのまま利用可能なため、大規模ストレージを柔軟に運用でき、対応するプロトコルやサービスも多い。実用的に利用できるソフトウェアアプライアンスなので、もし使ったことがなければぜひ1度、使ってみていただきたい。
FreeNASをインストールする
FreeNASをインストールするには、まずFreeNASのサイトからインストール用ISOイメージをダウンロードし、そのISOイメージからPCを起動してインストールを実施することになる。ディスクは1つでも構わないが、システムディスク向けに1つ、ストレージディスク向けに最低でも2つは用意しておきたい。ディスクを複数のパーティションに分割して運用することもできるが、故障時のスワップなども考えると、ストレージ部分はディスク2つのミラー構成というのが最低限用意しておきたいところだ。
インストールには、FreeBSDのデフォルトインストーラに似たシンプルなインストーラが用意されている。システムをインストールするディスクの選択と、rootのパスワードを入力したら、後は自動的にインストールが実施される。インストールが完了すると、ISOディスクを抜いて再起動するように促されるので、そのとおりにする。すると、最初のセットアップの画面が表示されるはずだ。
最初のセットアップ画面 |
しかし、この状態ですでにWebブラウザ経由でセットアップできるようになっているので、画面に表示されているURLにWebブラウザからアクセスして設定を継続する。セットアップはウィザード形式になっているため、表示される内容に合わせて適切な値を入力してもらえればよい(もちろん、このままコンソール経由でセットアップを実施してもらっても構わない)。
使用言語やタイムゾーンの設定、ストレージ設定、ディレクトリ設定など、ひととおり入力が完了すると、次のような管理コンソール画面が表示される。
最初のウィザードセットアップが終わった時点では、「運用に必要になる最低限の設定が終わった」にすぎない。ここから、ストレージプールを作成・セットアップし、利用するサービスを有効にして……といった作業を行っていく。Web UIがよく出来ているので、基本的にはこれを操作していけば、設定もモニタリングもできるようになっている。「コンソールから作業するほうが楽」という場合は、コンソールからログインしてコマンドを実行してもよい。
FreeNASは、その機能の豊富さが魅力だ。ベースがZFSであるため、ZFSの強力な機能をそのまま利用できる。すでにZFSを使ってストレージを運用している場合、FreeNASのUIは管理の手間の軽減につながるかもしれないので(CUIに慣れている場合には逆に負荷になる可能性もある)、ぜひ1度試していただきたい。
まずは使ってみよう!
商用のストレージアプライアンスは、中身のソフトウェアを公開していないので詳しいことはわからないが、FreeBSDと仮想化技術(Xen、bhyve)とZFSをベースに構築されているものが少なくない。TrueNASもそうだし,FreeNASを使ってみるとその当たりがよくわかるだろう。
コンシューマー向けに廉価に販売されているものの中には、Linuxをベースに開発されているものもある。このように、ストレージアプライアンスやネットワークアプライアンス、果てはさまざまな組み込み機器に至るまで、ネットワークを利用するデバイスは中身がLinuxや*BSDベースというものが多くなっている。こういったことが体感としてわかってくると、セキュリティ対策なども身近に感じられるようになるので、1度は中身を覗いておくのがお薦めだ。