イーベイ・ジャパン(eBay)は8月5日、「小売・製造業者 海外展開支援プロジェクト」を開始した。これにあわせ、京都市・京都商工会議所が初めて、同プログラムを活用して越境ECへの取り組みを行う。
プロジェクトには、デジタルコンテンツ制作フォネックス・コミュニケーションズとデジタル決済プラットフォームのPayPal、中小企業の海外展開支援を行う中小機構が参加。イーベイはプロジェクト参加主体の特設ページをeBay.comに開設して販売支援と地域の歴史・伝統を訴求する。フォネックス・コミュニケーションズは出品企業の商品データ作成や翻訳サポートを行い、PayPalは同社サービスの利用者向けにメールなどでプロモーションする。
本物の「made in japan」を世界へ
イーベイは190カ国で展開、1.6億人が利用する世界最大級のマーケットプレイスとして海外では著名だが、2002年に日本市場から撤退しており、国内の認知度は低い。ただ、イーベイ・ジャパンはその後も事業を継続しており、主に越境ECのサポート業務で存在感を発揮している。近年では訪日外国人の増加などにあわせて海外を意識する企業も多く、そうした中で今回の取り組みを打ち出した。
イーベイ・ジャパン ビジネス開発部 部長 岡田朋子氏によると、同社のマーケットプレイスでは日本に関連するキーワードの取引高が400億円に達する一方、「例えば『着物』というキーワードであっても、実際に販売されているのは中国製」(岡田氏)と、日本製かのように錯覚させる販売物が多いのだという。そこで「本当に日本で作られた物を売ることがイーベイ・ジャパンの使命」(同)として、海外展開の支援に至った。
取扱高の6割をビンテージなどを含む中古品が占めており、「カメラや楽器といった趣味・嗜好の強いものが伸びている」(イーベイ・ジャパン 事業本部長 佐藤丈彦氏)という中で、日本の伝統工芸品は海外ユーザーのニーズに合致すると判断。今回の支援策に結び付いたという。
国と国をまたぐ越境ECのニーズが多い中で、海外から日本の伝統工芸品に対する興味・関心も上昇しており、同社プラットフォームにおける検索ボリュームの月間平均が約500万件に達している。訪日外国人のインバウンド需要は、中国などのアジア圏が半数以上を占めているが、こと伝統工芸品に限ればアメリカなどの欧米圏のニーズが多い。これは、文化の違いが大きいようだ。
一方で伝統工芸品産業の生産額は、1979年の約5,000億円から2012年には約1,000億円と急減している。国内需要の低下や後継者の不足といった複合的な要素が絡む中で「海外需要を取り込み、需要の増加で産業の維持も目指したい」と岡田氏は意気込みを語る。
もちろん、オンラインだけでは取り込めないニーズもあることから、イーベイに出品する店舗にイーベイステッカーを配布し、サイトへの送客と共に、京都の文化の周知も図る。織物の製作工程や、着物の羽織り方といったバックグラウンドを知ってもらうことで、製品に対する理解度を深め、購買につなげようという狙いだ。