じんわり続くデスクトップ戦争

LinuxベースのデスクトップOSは、目まぐるしいペースで進化を続けてきた。日本の場合だと、PC-UNIXと呼ばれた時代からデスクトップ向けのLinuxディストリビューションを使ってきたユーザーから見れば、現在のLinuxディストリビューションの完成度の高さには目を見張るものがある。Linuxを日常的に使うWebデベロッパーや研究者は「何を今さら」と思うかもしれないが、多くのWindowsユーザーはこうしたLinuxデスクトップの出来の良さを知らずに過ごしているのだ。

その登場当初、Linuxデスクトップを開発していたベンダーやプロジェクトは、「打倒Windows」を掲げて熱心に活動を続けていたが、実質的にCanonicalが方向転換という内容の発表を行ってからは、「やはりデスクトップでWindowsの牙城を崩すことはできなかったか」という空気が広まっていったように思う。

しかし、現状は大きく違っている。Linuxデスクトップは、この1年で大きくシェアを伸ばした。Net Applicationsの調査によると、2016年6月には2%を超え、2016年7月も同じペースで増加を続けている。割合を見れば小さく見えるかも知れないが、OS市場の割合としては大きな変動だ。2016年7月のMacのシェアが7.87%であることを考えると、MacBookを使っている人の3~4人に1人は、Linuxを使っている計算になる。これはなかなか驚異的な数字だ。その上、さらに増加の傾向を見せているから、今後の動向からは目を離せない。

サクッと試せる「Ubuntu online tour」

現在は仮想環境技術が普及しているし、無料で使えるアプリケーションもいくつか公開されている。それ以前であれば、Linuxデスクトップをダウンロード・インストールするというのは、1台しかPCを持っていないユーザーにとってはハードルの高すぎる作業だったが、今のPCを使っているならばそれほど難しいことではない。インストーラをダウンロードして仮想環境へインストールすればよいだけだ。

しかし、人間の堕落というのは恐ろしい。何でもかんでもブラウザを開いてログインすればアクセスできる日常。アプリもワンクリックでダウンロードして使い始められるスマートなデバイスに囲まれた生活。こういった生活に慣れてしまうと、ダウンロードして仮想環境にインストールするという作業が、煩雑なものに思えてくる。

ということで今回は、Microsoftとも仲良くなったCanonicalが開発を支援しており、代表的なLinuxデスクトップの1つでもあるUbuntuをブラウザで体験できるサイト「Ubuntu online tour」を紹介しよう。

対象となっているバージョンは多少古いが、Ubuntuの雰囲気を感じてもらうにはこれで充分かと思う。まずはサイトにアクセスし、触ってみてほしい。

Ubuntu online tourの閲覧画面

とりあえず体験してみるという点では、この辺りで良いだろう。興味を持っていただけたなら、次のステップとして仮想環境で利用したりしてみていただきたい。

企業や政府機関での採用が進むかも?

Microsoftは、Microsoft AzureやOffice 365を推し進めるなど、自社プロダクトをサービスへとシフトさせつつある。こうなってくると、必ずしも「OSはWindowsでなければならない」という状況ではなくなる。特に決まった作業しかしない業務でのPCとなると、別にWindowsでもLinuxでもどちらでも良いような状況も出てくる。

仮に企業でUbuntuなどの利用が増えた場合、それを管理することになるのは本連載の読者だろう。可能な限り避けたい事態だとは思うが、そうなる危険性があることは覚えておいたほうがよい。ポイントさえ押さえれば、Windowsよりも簡単に管理することもできるので、もしそういった状況に陥った場合には、本連載を参考にするなどして効率良く手を抜いていってもらえればと思う。