ここは、中堅出版社マイマイ出版の情報システム部。朝一番で部長に何かを言い渡されたまさこさん、何だかプンスカしているようです。
「ハイパーコンバージドシステム」は「何かすごいシステム」?
あーもう! 何よ、あの部長! ついこの前まで「これからはコンバージドシステムだ」って言ってたくせに、急に「ハイパーコンバージドシステムを前提に検討しろ」ですって。基盤の保守期限までもう1年切ってるのに、今さら方向転換は無茶でしょ!
なになに? 何の呪文だ?
(完全に無視)
あーハイハイ、今朝のあの件でご立腹ってことね。ハイパーなんちゃら。
なんちゃらじゃありません! 「ハイパーコンバージドシステム」ですっ!!
そう、それそれ。まさこさん、ここ半年コンバージドシステムの構成検討でベンダーさんとやりあってたもんね。それをいきなり「ハイパーにしろ! 」だから驚いたんだろ?
当たり前じゃないですか!
でも、「ハイパー」ってきっと誰かがさあ、「何かすげえ」くらいの必殺技的なノリで付けたんだろ。IT業界お得意のバズワードってヤツだ。ハイパーでもハイパーじゃなくても、そんなに変わんないって。
「ハイパーキーーック!! 」……みたいなノリってこと?
そうそう。すごいコンバージドシステムだから、ハイパー付けとけって感じだよ。
なーんだ、そっか。よかったー。
あはははははは!
ちょ、ちょっと待つデスー!!!勝手に話をまとめないでくだサイ!
あれ、何か違った?
ぜーんぜん違いまスヨ! そもそも、コンバージドシステム(Converged System)ってどういう意味か知ってマスか?
もちろん。「垂直統合システム」ってことでしょ。どのベンダーさんも売りにしてるわよね。
そうデスね。各ベンダーが主に自社製品のサーバー・ネットワーク機器・ストレージ機器などを組み合わせて提供するので、「どのレイヤーの製品も自社で提供する」という意味で「垂直統合」と呼ばれることもありマス。
やべ。オレ、垂直ってラックの上から下までって意味だと思ってた!
コンバージド(Converged)は日本語で「集約された」という意味なんデスが、ラックに組み込んで設定まで済んだ状態で納品されるので、最初の設計・構築の手間を大幅に減らすことができるんデスね。
ほうほう、便利だな。
昔はシステムごとに適切なハードウェアの組み合わせをイチから設計していマシたけど、最近は仮想サーバが前提で、ハードウェア構成は大体どこも同じような組み合わせになってきマシた。それなら「吊るし」の構成を用意しておけばいいんじゃないか、ということで出てきたのがコンバージドシステムなんデス。
なるほど、「吊るし」かあ。既製品とかセミオーダーとかって意味よね。ところで、センパイのスーツはいつもどこで注文してるんでしたっけ。
いいの! オレは吊るしで十分満足なの!
「ハイパー」って、そのコンバージドのさらに上を行くって意味じゃないの?
だから違いマスって。「ハイパー」にはきちんと意味があるんデス。「Hypervisor」+「Converged System」=「Hyper Converged System」。つまり「ハイパーバイザー(仮想化基盤)を使った集約型システム」のことなんデス。
ええっ!? ハイパーって、VMWareとかHyper-Vとかってことなの?
そうデス、そうデス。仮想マシン(VM)を動作させるハイパーバイザーと仕組みは同じと考えていいデス。ただし、ハイパーバイザーが2階建てになってるんデスよ。
おおっと、何だ何だ? 2階建てってどういうことよ?
(後編に続く)