東京大学 大学院情報学環は7月22日、セキュリティ人材の育成などを目的に、東京・八重洲にセキュア情報化社会研究寄付講座(SiSOC-TOKYO)のオフィスを開設した。
同オフィスでは学生や企業のセキュリティ担当者を対象に、実践的な演習環境である「SiSOC サイバーレンジ」を構築し、高度セキュリティ人材の育成を図る。また、サイバーレンジの構築だけでなく、IoTやFintechといった最新のIT環境にあわせたセキュリティ検証カリキュラムについても検証を行う予定だ。
演習プログラムではオランダへの短期留学の副賞も
東京大学は、2015年4月に寄附講座「セキュア情報化社会研究グループ」を設置。東京電機大学や名古屋工業大学大学院などと連携しながら、産官学の協力のもとに人材育成を目指してきた。東京大学大学院情報学環の教授 須藤 修氏は、同グループのメリットを「文理融合型」にあると語る。
NISCが打ち出したサイバーセキュリティ戦略によると、セキュリティ関連技術者26.5万人のうち16万人がスキル不足に陥っているほか、人材数も8万人程度が不足しているという。こうした状況下で、特にトップレベルに位置する「トップガンと、その真下にいるレベルの人材育成が急務」(須藤氏)だという。
グループでは東大だけでなく、東京電機大学との連携や、「今後は慶應義塾大学との連携も検討している」とのことで、幅広い枠組みで人材育成を進める。その先行例となるのがデロイトトーマツと共同で開催する「SiSOC サイバーセキュリティトレーニング」だ。
東京大学の学部生・大学院生を対象としており、実践形式でセキュリティの情報収集やターゲット選定、脆弱性認識、攻撃などの方法論、脆弱性診断について学習する。期間は9月17日~19日で、応募締切は8月26日まで。定員を上回る応募があった場合は書類選考となる(応募要項※PDF)。
オランダ大使館やデロイト オランダが講演として参画しており、ペネトレーションテストやハッキングゲームなどで優秀な成績を収めた受講者2名には副賞としてオランダのサイバーセキュリティ関連企業への短期留学を提供する。
「セキュリティでは、アメリカとイスラエル、ロシア、そしてオランダが第一線の国と言われている。その一角でセキュリティを学べる環境を提供したい。日本は中国からの攻撃を受けるケースが多いが、中国はこれらの一流国よりも少しレベルが落ちると言われている。中国への対策にもなるはずだ」(須藤氏)