端末の準備
今回からは、Gear VR用コンテンツの制作を始めていきます。
第2回でGear VRについての概要を説明しましたが、Gear VRでコンテンツを実行するには、対応スマートフォンとGear VRが必要になります。
当時の対応機種は「Samsung Galaxy S 6または、S 6 edge」でしたが、現在はその後に発売されたGalaxy S 7 edgeも対応しています。また、S 7 edgeを予約購入した方にGear VRをプレゼントするというキャンペーンをやっていましたので、VR体験をされたユーザーも増えていると思われます。
今回はアプリがGear VR端末で動くようにするところまでを説明します。
筆者が使用するGear VRとGalaxy |
開発準備の流れ
Gear VRのコンテンツはAndroidアプリなので、まずはAndroidアプリの開発環境をインストールします。
コンテンツ開発には、Viveのときと同様にUnityを使います。Unityについての概要は第4回をご覧ください。
なお、本稿ではWindows 10を使用しますが、Mac OS Xも同様の手順です。
Java SE Development Kit 8のインストール
Androidアプリ開発のためにはJavaが必要になりますので、まずは「Java SE Development Kit」をインストールします。
Windows 10の場合、「Start」メニュー→「システム」→「アプリと機能」の一覧に「Java」で検索して以下のような項目が出てこなければ未インストールです。
未インストールの場合、次の手順でインストールします。
Oracleの「Java SE Development Kit 8」のページを開きます。
インストーラをダウンロードします。今回は本稿執筆時点の最新バージョン 8u92 をダウンロードします。項目名直下にある「Accept License Agreement」をチェックし(次画面(1))、下部にあるリンクから自分のPCに合ったファイル(次画面(2))をダウンロードします。今回使用したPCは64bitですので、Windows x64の項目にあるリンクからEXEファイルをダウンロードします。
- ダウンロードしたインストーラをダブルクリックしてインストールを開始します。インストールする内容を選ぶダイアログでは次画面のようにデフォルトの選択のままで問題ありません。
- インストール先のパス設定は、ドライブの空き容量などを考慮して適当な場所を指定してください。
以上でインストールが完了します。
Android Studio のインストール
次に、Androidアプリの開発環境を整えるために、Android Studioをインストールします。
- 「Android Studio」のページからインストーラをダウンロードします。
ここからは、インストーラの手順に従い、セットアップを進めていきます。
- インストールコンポーネントの内容はデフォルトのままです。
- インストール先のパス設定は、空き容量なども考慮しつつ、自分で分かりやすいように設定します。
- Android Studioのインストールが完了した後、Android Studioをそのまま起動し、セットアップを始めます。
続いて、Android Studioで必要なコンポーネントをダウンロードしていきます。
- インストールタイプを聞かれますが、”Standard”を選びます。
- セットアップが終わった後、スプラッシュ画面に出てくる右下の「Configure」から「SDK Manager」を起動します。筆者の持つGalaxy S 6 edgeはAndroid 6.0なので、これに対応したバージョンを入れるように設定し(次画面)、インストールします。
以上でインストールが終わります。
adbへパスを通す
続いて、Windows 10でパスの設定を行います。
- Windowsボタンを右クリック→「システム」→「システムの詳細設定」項目をクリック→「詳細設定」タブを選択→「環境変数…」ボタンでダイアログを開きます。
「ユーザー環境変数」の「新規…」ボタンを押して、「PATH」という項目で、adbがインストールされているパスを設定します。
Android SDKをインストールした場所にある「platform-tools」フォルダを指定します。 保存した後、コマンドラインを立ち上げます。
「> adb version」とタイプしてバージョン情報が出てくると設定が完了しています。
デバイスIDの登録
開発用のアプリを自分のデバイスで動かす為の手順を進めます。
- まず、Android端末を開発に使えるように設定します。手順は端末によって違いますが、「設定」→「端末情報」で表示される「ビルド番号」を何回もタップする方法が一般的です。詳しくは「Galaxy S6 開発者向けオプション」というキーワード等で検索してみてください。
次に端末のデバイスIDを取得します。
- Android端末をPCに繋いだ状態で、コマンドラインで以下のようにタイプすると、デバイスIDを取得できます。
> adb devices
ここで表示されるデバイスIDをコピーしておきます。
Oculusの開発者サイトへのログインを行います。アカウントを作っていない場合はここで作成してログインします。
ログインした状態でhttps://developer.oculus.com/osig/を開き、OSIG(Oculus Signature File) ファイルを生成します。
ここに先ほどのデバイスIDをペーストしてファイル(“oculussig”というファイル名)をダウンロードしておきます。
Unityの準備
Unityですが、執筆時点の最新版は5.3.5f1というバージョンでしたので、今回アップデートしました。インストーラはUnitiのサイトからダウンロードできます。
インストーラからのインストール中に以下のようなダイアログが出てきますが、今回はAndroidアプリを書き出せるようにする必要があるので、次画面のように「Android Build Support」にチェックを入れておきます。
Unityプロジェクトを制作
無事インストールできたら、Unityを立ち上げ、新規プロジェクトを作ります。
3Dモードでプロジェクト名を「Buttons」としておきます。
「Buttons」というシーン(Scene)を作成し、それを開きます。
- 何かしら方向やスケール感を感じられるように、適当にCubeオブジェクトを配置します。
- シーンに最初からあるMainCameraの場所がGearVRから見るときの位置になるので、真ん中の辺り(Transformを0,1,0辺り)に移動しておきます。
今回のシーン制作はこのくらいにしておき、VR用に書き出します。
osigファイルの追加
OculusからダウンロードしたOSIGファイルをUnityプロジェクトの中に追加します。
- 次画面のように、Assets/Plugins/Android/assets/以下に配置されるように、フォルダを作成し配置します。
UnityプロジェクトのVR設定
「File」メニューから「Build Settings…」を選択してダイアログを開きます。
右側中央にある「Add Open Scenes」ボタンで「Scenes In Build」に「Buttons」シーンを追加します。
「Platform」欄では、Androidを選択します。
右側にある「Texture Compression」は「ASTC」を選択します。
-
下にある「Player Settings…」ボタンを押すと右側に「Inspector」パネルが開きます。このパネル内では以下の3項目を設定します。
- Virtual Reality Supported : ON
- Bundle Identifier : jp.torques.Buttons
- Minimum API Level : Android 6.0
Bundle Identifierは、自分の所属やプロジェクトに応じて適当に決定してください。
ビルドと実行
Android端末をPCにUSBケーブルでつないだ状態で、「Build Settings」パネルの「Build And Run」ボタンを押すと、ビルドしてインストールまでを行えます。
問題なければ、以下のようなダイアログが出ます。
このままUSBケーブルを抜いて、Gear VRに挿し込むとアプリが起動します。
次回はGear VRのコントローラを使ったアプリを作っていきます。
事例紹介
Galaxyは、6月25日に行われた横浜DeNAベイスターズのホームゲームで”VR始球式”を実施しました。
VR始球式の様子(サムスン電子ジャパンのプレスリリースから) |
VR始球式は、まずマウンド上でGear VRをかぶって選手によるアドバイス動画を見た後に、Gear VRを脱いで始球式を行う、という流れのようでした。
アドバイス動画では選手がマウンドから投げる様子を見ることができるので、Gear VRを脱いだ後に自分が同じ場所で投げられるというのは、おそらくシミュレーションとして素晴らしい体験でしょう。
現地での視点、当事者での視点を再現できるというVRの活用事例は、スポーツの限らず広がっていきそうです。