法人向けタブレット市場は、意外とも言うべきか、Android OSが伸びを示している。Panasonicは法人向けタフネス端末「TOUGHPAD」シリーズにAndroid版の最新モデルを追加したほか、ASUS JAPANもAndroidタブレット「ZenPad for Business」を法人向けに展開する。
国内の法人向けタブレット市場ではiPadの存在感が大きく、最近ではWindowsが2in1デバイスで攻勢を強めているという印象が強い中、「なぜ今Androidなのか」を取り上げてみよう。
現場レベルでAndroidモデルの需要増を感じているPanasonic
Panasonicは6月に開催した端末発表会で米IDCの調査結果を引用し、世界の法人向けタブレット市場でAndroidが高いシェアを持っていると指摘。タブレット市場全体は縮小傾向にあるものの、2015年には法人向けスレート型(板状)タブレット端末の60%がAndroid OSだった。
一方でIDC Japanによる2015年の国内法人向けタブレット市場では、デタッチャブル型(2in1デバイスなど)を含めたシェアではiOSが39.2%と振るわず、Windowsが25.1%までシェアを拡大。肝心のAndroidについてもそれを上回る35.7%と健闘しており、iOS一辺倒となっていた市場環境に変化の兆しが見えている。
Panasonicの現場から吸い上げた声でも同様に、Androidを指名買いする法人顧客が増加しているそうだ。WindowsとAndroidの両モデルを取り揃える同社のTOUGHPADシリーズにおいて、OS別販売比率がかなり拮抗するところまで来ているという。
「これまで5インチや7インチのモデルでAndroidを展開してきたが、大画面でもAndroidを使いたいという声が増えており、10.1インチモデルの導入を決定した」(パナソニック AVCネットワークス社 常務 ビジネスモバイル事業担当 ITプロダクツ事業部 事業部長の坂元 寛明氏)
背景としては、業務用のプロファイルで個人利用とは分離できる「Android for Work」の登場や、業務に活用できる生産性アプリが充実してきたことを挙げ、「Androidタブレットを用いて、設計図やマニュアルを外出先や現場でストレスなく表示できるよう、高精細液晶モデルの要望が増えてきた」(坂元氏)と、ニーズに合わせた製品造りを行ったと明らかにした。
Android 6.0搭載で880gの軽さを実現した「FZ-A2」。氷漬けになっても動作し続けるタフネス性能を示した |
5型画面のハンドヘルド端末「FZ-N1」。Windows 10版に先駆けてAndroid版が国内に展開する。Panasonicの神戸工場内でも活用されていた |
ASUSは法人向け「ZenPad」に無料MDMを標準搭載
一方でASUS JAPANもAndroidタブレット「ZenPad」シリーズを国内の法人向けに展開することを6月に発表。こちらは発売済みの個人向けモデルと比べて、2つの大きな違いがある。
1つ目は、ASUS独自のユーザーインタフェース「ZenUI」を採用しないこと。なるべく「素」の状態に近いAOSP(Android Open Source Project)ベースのAndroidを搭載しており、余計なカスタマイズを行っていない。そのため、サードベンダーによる業務用アプリの開発・運用が容易になるメリットがあるという。
2点目は、ASUS独自のMDMシステムである「ADAM(エイダム)」を標準搭載する点だ。プリインストールされているためデバイス台数ごとの追加費用がなく、わざわざMDMを選定する必要もない。法人がスマートデバイスを導入する際、ほぼ必須と言えるMDMがデバイスに最適化されている上、Web上の端末管理コンソールの使用料だけでコストを抑えられるメリットは大きいだろう。また、コスト感で言えばZenPad製品自体も7型モデルで2万1384円~(参考価格)と安価に抑えられている。
機能面でも、iPadを小型のデジタルサイネージとして利用する小売店が町中でよく見られるが、ADAMにも同様の「KIOSKモード」がある。特定のアプリを全画面に表示し、ホームボタンなどを押してもほかの画面は使えない専用モードだ。
通常はOSのカスタマイズなど、多大な開発コストがかかるところだが、「標準搭載のADAMなら無料で使える」(ASUS担当者)とのことで、安価であるメリットと合わせてサイネージ用途での裾野の広がりも期待できるだろう。「ZenPadはiPadより安くて頑丈」ともASUS担当者が語るように、iPadからの置き換えを広く狙う構えだ。
このように法人ユーザーにとっては、Androidタブレットの「バリエーションの豊富さ」が魅力になりつつある。高いユーザーエクスペリエンスを誇るiPadやキーボードを接続した生産性で勝るWindowsタブレットなど、それぞれのプラットフォームに特色がある中で、完成度が高まってきたAndroidも候補の一つとして捉えるべきだろう。