エイチームは、グループ会社のA.T.bridesで、VRを活用した結婚式場体験サービス「すぐ婚VR」を開発した。

すぐ婚VRは、1つのアプリで結婚式の「入場」と「フラワーシャワー」を体験できるVRコンテンツ。没入感溢れる360度動画で結婚式を体感できるため、遠隔地にある式場を見学しなくても会場の雰囲気が掴める。6月に行われたブライダル産業フェアでデモンストレーションを行い、体験したブライダル関係者から好評だったという。

結婚式場紹介サービス「すぐ婚navi」を手がける同社は、リアル店舗でVRによる式場体験を簡単にできる環境を目指すという。開発担当者であるA.T.brides 開発部 開発グループの福田 龍氏に、開発の経緯やVRアプリ制作における苦労について、話を伺った。

すぐ婚VRには、新郎新婦の双方にフォーカスしたコンテンツを用意。それぞれの視点で結婚式を体感できる

なぜWebエンジニアがVRアプリ開発に?

福田氏は新卒2年目のWebエンジニアであり、アプリ開発には縁がなかった。そんな中でVRアプリ開発へ取り組んだキッカケは、親会社のエイチームで3カ月に1回行われている社内の新規事業コンテスト「A+」への参加だった。

「何をプレゼンすればいいか考えた時、ちょうど『VR元年』というキーワードなど、VRに追い風が吹いている状況にあると感じ、VRを活用したサービスを提案したんです。

結婚式場の紹介サービスを会社として手がけているので、式場見学をVRコンテンツとして提供できないかと考えたのですが、残念ながら(コンテストの)グランプリを取ることはできませんでした。

ですが、役員から『会社に持ち帰ってサービスとしてやってみれば良いのではないか』とお墨付きだったので、4月のコンテストから1人で2カ月間開発を続け、ブライダル産業フェアの出展にこぎつけたんです」(福田氏)

VRプラットフォームは、サムスン電子のGalaxy Gear VRを活用。スマートフォン(Galaxy S7 Edgeなどサムスン製に限る)を利用したVRヘッドマウントであるため、コードレスでVR体験が容易である点が決め手になった。

Galaxy Gear VR

Oculus Riftなども候補に上がったものの「主な用途が動画再生であるためオーバースペック」「将来的に全国に配備することを考えると、PCとセットで用意する必要があるなど管理が煩雑になる」(福田氏)ことがネックになったそうだ。

Gear VRは、「Oculus Mobile SDK」と呼ばれるOculus Riftと共通のソースコードを使用している開発キットが用意されている。VRコンテンツの開発が簡単にできるだけでなく、将来的にOculus Riftへの応用も可能となる。Gear VRを入口に、ノウハウを蓄積した上でOculus Riftを活用するという展開も考えられるだろう。

この「Oculus Mobile SDK」は、開発者にとってかなり使いやすく作り込まれているそうで、アプリ開発とは無縁だった福田氏も「いろいろ苦労した部分はありましたが、『Gear VRを被って顔を動かしたら視点が動く』といった基本要素はSDKでカバーされており、なんとか1人でアプリを製作できました」と語っていた。

ただ、SDKでカバーされていないポイントもあり、動画の制限があってデータ容量削減を強いられたほか、「視点を数秒間固定(注視)してリンクジャンプする」というVRでよく利用されるハンズフリーのインタフェース構築や、アプリ内でメッセージのポップアップなどは、有料プラグインなどを活用した上で、独力で実装したという。

真ん中のハートマークを動画の再生リンクに合わせて注視することで再生画面に移る

こうしたポップアップはプラグインなどを用いて自力で制作したという

>>デモンストレーションでわかったVRの課題は?