今IoT(Internet of Things)が注目される2つの理由、それは「インターネットに何でも低コストで簡単につなげるようになったこと」と「膨大なデータの活用で、何か新しいことができるようになるかもしれない”可能性”」にありました。「それって、ビッグデータにも関係してくるのでは?」とまさこさん、いいところに気がついたようです。

センサーで収集した膨大なデータをどう扱うか?

モノがインターネットにつながり、大量のデータが集められるようになっても、それを処理するための技術がなければ活用できまセン。さっき話したクラウドのほかにも、ビッグデータ技術、音声・映像認識(コグニティブ)、そして機械学習や人工知能(AI)といった各分野の技術の進化があり、IoTデータを活用する環境が整いつつあるからこそ、ここまで注目されるようになったんデスよ。

産業だけでなく、自然現象や農作物、人間の活動までデータとして処理することが可能になったってことね。センサーから送られてくるデータを、POSデータやWebのアクセスログと同じように分析する……つまり、モノの行動分析ね!

分析だけじゃなく、人工知能で機械が勝手に判断するってことだろ? でも、それってかなり未来の話だよな。オレのスマホちゃん、「OK, Google! 」って言っても全然反応してくれないもん。

それ、センパイの発音が悪いだけです。

ガクッ!

実は、もう実用化されて世界中で使われているサービスもありまスよ。世界中のクルマが今走っているスピードをセンサーで測って集めて、世界中のどんな道でも混んでいるのか空いているのか分かるようにするサービス、それがGoogle Mapsの渋滞情報でス。例えばこんな感ジ。

Google Mapsの渋滞情報の表示例

わっ、本当だ!

Google Mapsの渋滞情報は、世界中のAndroidデバイスが備えているGPSで位置情報を定期的に取得して、Googleのサーバに送信しているんでスね。デバイスの移動距離と移動時間から、家にいるのか歩いているのか、はたまた車に乗っているのかを判断するんでス。

おおお、賢いな!

車で移動中ならその平均速度を算出して、ほかのデバイスの情報と重ね合わせることで、その道路が空いているか混んでいるかを割り出しているんでス。詳しくは「Google Traffic」で検索して調べてみてくだサい。

Android端末がIoTのデバイスになってるのね。で、GPSがセンサーに当たるわけかあ。世界中のAndroid端末って何台くらいあるのかしら。

Android端末は、世界中で14億台がアクティブだと言われていマスよ。

じゅ、14億台……! その端末たちが、それぞれ何分かに1回データを送ってくるんでしょう? めちゃくちゃな量よね?

位置情報が2分に1回送信されるとしても、1秒間に1,200万台から送られてくる計算になりマスね。こうした特性を持つデータは「ビッグデータ」と並んで「ファストデータ」と呼ばれたりしマス。

ち、ちょっと壮大すぎて、システム構成が想像つかないわ。

ビッグデータやファストデータを扱うためのリファレンス構成として、「ラムダアーキテクチャ」という考え方がありマス。こっちも時間があるときに調べてみてくだサイね。

てゆーか、オレのスマホちゃんAndroidだから、こいつも渋滞情報の提供に協力してるのか。追跡されてるようでちょっと気持ち悪いけど、ホントにIoTの一員なんだな!

人間の行動を特定するデバイスには、プライバシーへの考慮がついて回ります。たとえ匿名化されていても、自分の行動がデータ化されていることを知ると、多少なりとも違和感を覚えるものデス。

匿名だとしても、何となく気になっちゃうよな。……べ、別に悪いことはしてないけど!

ホントでスかあ? まあ、少し前に鉄道会社がICカードの改札通過履歴を他社に販売するという話が問題になりまシタし、監視カメラで個人を認識することの是非についても議論されていマスよね。皆、ひっかかるところなんデス。

確かにちょっとね。集めた行動データを自社内でサービス向上に使うならまだしも、他社に販売となると違和感が出てくるわね。

Google Mapsの場合、位置情報を送信しないように設定することもできマス。IoTデータを活用するサービスを立ち上げる際には、プライバシーへの配慮をしっかり設計することが大切なんデス。

IoTって最初は軽く考えてたけど、もうイッパイイッパイだあっ。うちの会社で活用しろって、無茶振りすぎるでしょ、ブチョー!

ホントよね。接続レベルでの活用についてはまだ考えられそうだけど、集合知レベルになるともはや想像すらつかないわ。

話がちょっと長くなりまシたね。IoTは、さまざまな分野の技術の積み重ねによって実現されるモノです。よほどの勝算があれば、センサーをばらまいて一気に集合知レベルの未来を目指すのもアリですが、事業として考えるなら、まずは接続レベルでコストを抑えつつサービス向上を考える、って辺りが現実的デスよね。

「IoTで何かできそう!」って気はするけど、慌てて見切り発車でスタートするのは良くないものね。

そうそう、「急いては事を仕損じる」って奴でス。とはいえ、もしかすると、サービスを運営していく中で蓄積されるデータから意外な活用方法が見えてくるかもしれまセン。その時に集合知レベルのサービスを検討できるよう、他社事例や技術情報の収集は続けておくことをオススメしマスよ。

ハナちゃん、ありがとう! とーってもよくわかったわ。IoTって、いろんな立場の人が全然違う観点で話してて、でも全部IoTだって言うからほーんとわけわかんなかったのよね。まずは「インターネットを活用」とか、「センサーで活動をデータ化」って辺りからじっくり考えてみる!

あっ、オレもう新サービス10個くらい思いついちゃったぜ!

自分の仕事してくださーい。