KDDIは6月6日、同社のVRに関連する取り組みについてラウンドテーブルを開催した。高品位なVRを体験できるHTC Viveによるデモンストレーションが行われたほか、KDDI 商品・CS統括本部 商品企画部 松田 浩路氏と、同社バリュー事業本部 新規ビジネス推進本部 戦略推進部 江幡 智広氏がKDDIのVRへの姿勢を説明した。
同社のVRに関する取り組みは「VR元年」と呼ばれる今年よりも早く、2014年にはスタートアップなどを対象としたインキュベーションプログラム「KDDI∞Labo」でテクノスポーツ「HADO」を採択したほか、昨年には伊勢丹とのコラボレーションでスマホVRの「ハコスコ」を用いたリアルイベントを開催している。
ハコスコについては、5月にKDDIのベンチャーファンド「KDDI Open Innovation Fund」が出資を行っており、VR業界の成長に対する同社の期待が伺える。また、スマホVRの枠組みでは、同社の夏モデルであるサムスン製「Galaxy S7 Edge」の予約購入者全員へVRゴーグル「Gear VR」のプレゼントも行っている(NTTドコモでも同様のキャンペーンは行われた)。
ただ、スマホVRだけでなく、同社は「通信事業者として考えた時、今までゲームを楽しむものとして存在していたVRを、コミュニケーションに振ってみたい」(松田氏)として、ソフトウェアのコンテンツ開発も行った。それが、今回のラウンドテーブルのメインテーマとなった「Linked-door(仮称)」だ。
VR版どこでもドア?
松田氏は、Linked-doorの開発に至った理由を「今は写真や動画を送ることでコミュニケーションをとっているが、VRであれば体験の共有ができる。将来的に空間そのものを送れる世界観が実現できるのではないか」と話す。
Linked-doorは、VR空間とVR空間を繋げるドアのことで、ドラえもんの「どこでもドア」をイメージするとわかりやすい。VRで発生するさまざまなコミュニケーションを、一つの空間内ですべてを表現することは難しい。そこでLinked-doorでは、VR空間を模様替えすることで、別の人間とのコミュニケーションを表現する。なお、Linked-doorはHTC Viveを活用しており、HTC協力のもとにコンテンツ制作を行ったという。
例えば、友人とコミュニケーションするのであれば屋外、家族とコミュニケーションする際は自宅へ移動するといったイメージで、これまでの電話やメール、チャットでは存在しなかった”空間”を、時と場所にあわせて切り替えるといったコンセプトになる。まさに”どこでもドア”という仮称が適当だろう。
このコンセプトコンテンツは、3月に米国で開催された芸術と技術を融合したインタラクティブフェスティバル「SXSW 2016」に出展され、ブース待ち時間が平均40分~1時間程度の中で、最大2時間程度の行列ができたという。体験した人の中には踊り出す人もいたとのことで、コンテンツの方向性に自信を深めたようだ。