パナソニックは2月23日に、タフネス仕様が特徴の業務用ハンドヘルド端末「TOUGHPAD」シリーズの新モデルを発表した。26日には、Android版の「FZ-N1」を日本国内で法人向けに発売している。

同時期にスペイン・バルセロナで開催されていた「Mobile World Congress 2016」には、Android版に加え「Windows 10」版の「FZ-F1」も展示。タフネス性能の大部分を継承しつつ、前モデルよりスリムになったハンドヘルド端末として来場者の注目を集めた。

Android 5.1搭載モデル「FZ-N1」。日本国内ではNTTドコモ版、KDDI版を展開する

MWC2016会場にはWindows 10 IoT Mobile Enterprise版「FZ-F1」も展示された

Windows版は「Windows 10 IoT Mobile Enterprise」搭載

前モデルのFZ-E1/X1は、過酷な業務環境を想定したタフネス性能が特徴だった。外観も、いかにも業務用といったデザインであり、仕事中に操作していても「遊んでいる」と誤解される恐れがない。意外に思えるが、これは業務用スマホとして重要視されるポイントとなる。

両モデルはハードウェアとしては共通でありながら、Windows版とAndroid版の両方をラインアップしており、これも現在のトレンドを先取りしていた点といえる。パナソニックはあくまで法人向けの業務用端末と位置付けていたものの、日本でしばらく発売が途絶えていたWindows Phone端末としても面白いデバイスだった。

厳密にいえば、前モデルFZ-E1のOSはWindows Phone 8.1ではなく組み込み向けの「Windows Embedded 8.1 Handheld」だが、ベースは同じものだ。これは新モデルのFZ-F1が採用する「Windows 10 IoT Mobile Enterprise」も同様で、実際にはWindows 10 MobileベースのOSだ。日本マイクロソフトも、FZ-F1をWindows 10 Mobileデバイス群の一部に位置付けている。

FZ-F1は国内で11モデルが登場したWindows 10 Mobileデバイスの一角を占めている(日本マイクロソフトの法人向けWindows 10説明会より)

大きな変更点としては、本体サイズが薄型軽量化した点が挙げられる。前モデルは耐久性が非常に高い一方、本体があまりにも分厚く、片手で持ち続けるのが難しいという問題があった。特に平均的な日本人の手に余るサイズだったこともあり、小型化を求めるフィードバックが寄せられたという。

新モデルのFZ-N1/F1では画面サイズがやや小型化し、横幅や厚さがコンパクトになっている。特に本体背面の形状が大きく変わり、バーコードリーダーのみが盛り上がった形状になり、それ以外の部分は大幅に薄くなっている。握った感触も、一般的なスマホに近くなった。

新モデルFZ-N1/F1(左)と前モデル(右)の比較。バーコードリーダー部分以外が大幅に薄型化した

一般的なスマホのように持ちやすくなった

薄型軽量化のトレードオフとして、落下性能や防水防塵性能はわずかに低下した。そのため、パナソニックは前モデルを単純に置き換えるのではなく、新旧両方のモデルを併売することで選択肢を増やす形としている。屋内作業や接客現場など、極限までのタフネス性能を求めない現場では、小型軽量になった新モデルのほうが便利に使えるだろう。

バーコードリーダーの使い勝手や音声通話が進化

新モデルFZ-N1/F1の特徴は、本体形状だけではない。バーコードリーダーを本体背面に斜めに搭載したことで、使い勝手が向上した。読み取った結果を確認する際も、ディスプレイが見やすい。細かい点だが、こうした積み重ねが作業効率を上げるという。

このバーコードリーダーの傾斜角は、運送業などの現場向けにパナソニックが提供してきた業務用端末のノウハウを活用して決定したそうだ。いわば、長年の試行錯誤から導き出された、最も使いやすい角度といえる。

バーコード読み取り作業の例。リーダーをバーコードに合わせつつ、同時に画面も見やすい

バーコードリーダーの配置には過去のノウハウを応用したという

また、音声通話機能も進化している。前モデルはスマートフォンという位置付けではないものの、音声通話を搭載しており、音声通話のために別途携帯電話などを用意する必要がないという利点があった。FZ-F1/N1では、マイクにノイズサプレッサー機能を搭載し、騒音のある環境でもノイズを除去して音声通話ができるとしている。

これに加えて、NTTドコモとKDDIで接続試験を行い、LTEを利用した高音質通話「VoLTE」にも対応する。特に法人ユーザーは、社内やグループ会社などで端末やキャリアを統一している場合が多い。その場合、業務中の電話の多くにVoLTEを利用できる可能性があり、意外にも法人ユーザーから引きが強い機能なのだという。

アクセサリーも豊富に提供する。端末を長時間保持して行う作業には「ハンドストラップ」、両手を使うことが求められる作業では、腰にぶら下げる「ホルスター」といったアクセサリーを検討したい。また、交換可能なバッテリーパックは通常サイズのほかに、2倍のバッテリー容量を持つLサイズも新たに提供する。

3200mAhの通常バッテリー(上)と、6400mAhの大容量バッテリー(下)