NECパーソナルコンピュータが2016年春モデルとして発表した「LAVIE Hybrid ZERO」の11.6型2-in-1モデルは、超軽量ノートPCとしての同シリーズの重量感はそのままに、脱着型の2-in-1機構を実現したことが特徴だ。
NEC Directでの直販価格は、Wi-Fiモデルが17万4800円から、LTEモデルが18万9800円から(いずれも税別)で、2月24日以降に出荷開始を予定している。果たして11.6型の新モデルの魅力はどこにあるのか、本稿で探っていきたい。
前モデルの重量感はそのままに脱着型2-in-1に進化
新たにラインアップに加わった11.6型のLAVIE Hybrid ZEROは、13型モデル同様に見た目よりも圧倒的に軽いことが最大の特徴だ。
前モデルにも採用したマグネシウムリチウム合金を用いることで、脱着型でありながらクラムシェル型に近い重量感を実現しており、一見したところ、実機ではないモックアップかと錯覚するほどだ。
これまでに2-in-1型PCを使ったことがある人なら、絶妙な重量配分に気付くかもしれない。
脱着型の2-in-1では、タブレット側にディスプレイやマザーボード、バッテリーなどPCとしての基本部品をすべて搭載する。このため重量バランスは「頭でっかち」になりがちで、キーボード側に一定の重量がなければ後ろに倒れてしまう。そのため、PC全体としてはどうしても重くなりがちで、NECもバランス調整に苦労したという。
なお、前モデルである13型クラムシェル/コンバーチブルモデルも、第6世代Coreプロセッサーを採用し、2016年春モデルとして新登場した。大きな違いはこのCPUで、13型ではCore i5/i7を採用するのに対し、11.6型モデルは第6世代のCore Mで冷却ファンを搭載せずパフォーマンスよりも、携帯性を重視した。
最軽量構成は驚異の「約585g」、別売の超薄型キーボードも
11.6型モデルのキーボード付きモデルに同梱されるのが、一般的なノートPCに近い「モバイルパワーキーボード」だ。パワーという名前通り、セカンドバッテリーを内蔵しており、タブレット単体で利用する際のバッテリー駆動は約5.5時間にとどまるが、モバイルパワーキーボード装着時には約10.2時間(いずれもJEITA 2.0計測法)になり、十分な長さを確保できる仕組みだ。
さらに別売のオプションとして「フラットカバーキーボード」も提供する。厚さは3.5mm、重量はわずか約187gと薄型軽量で、タブレット装着時の最軽量構成は約585gとなり、他の11.6型の2-in-1と比較しても、驚異的な軽さを誇る。
別売のフラットカバーキーボードを組み合わせることで、最軽量構成の約585gを実現できる |
フラットカバーキーボード。薄型だがストロークがあり、キーボードをタイプした感触を得られる。ただしトラックパッドはない |
外観はSurfaceの「タッチカバー」に似ているが、押し込むとわずかにストロークがあり、カチカチとしたクリック感を得られる点が異なる。そのため、超薄型でありながらも、しっかりとタイプできるのが特徴だ。スタンドはキーボード背面から引き出して組み立てるタイプで、雑に扱うと壊れそうな不安はあるものの、軽さを最優先する人は試す価値がありそうだ。
タブレット側には「USB Type-C」ポートを搭載する。ただし規格はUSB 3.0相当となっており、最新のUSB 3.1やThunderbolt 3の機能は利用できない。たとえばディスプレイ出力などには変換アダプターを用いた上で、従来型のUSB-VGA変換アダプターを利用することになる。タブレットだけを持ち歩いてプレゼンに用いるような用途では、やや不便に感じるだろう。
また、SIMフリーのLTE通信機能に対応しており、タブレット側に通信モジュールとSIMカードスロットを備えている(対応は上位モデルのみ)。モバイル利用時でもWi-Fiルーターなどを併用することなく、インターネットに常時接続できるのは「快適」の一言に尽きる。
国内向けに開発されたPCだけあって、対応バンドも優れている。LTEバンドは1/3/19/21、3G(W-CDMA)は1/6/19でNTTドコモのネットワークを網羅しており、地方への出張でも安心して持ち運べる。SIMフリーであるから、NTTドコモやドコモ系MVNOの多様なSIMカードを自由に利用できるのも嬉しい点だ。
デザイン面で気になる点はあるものの、「軽さは正義」
細かいところを見ていくと、LAVIE Hybrid ZEROはデザイン面でやや気になるポイントがある。液晶ベゼルの幅は標準的だが、液晶との間には段差がある。ディスプレイ表面には光沢のないノングレア処理を採用しており、ビジネス利用に嬉しいものの、古めかしい印象も受ける。タブレットとしても使える以上、タッチ操作できるのは当たり前とはいえ、思わず画面に触れて確認してしまったほどだ。
また、タブレット背面のラベルも気になる。製品版では「高温注意」のレーザー印刷はなくなるとのことだが、NECやインテルのロゴシールに加え、型番や製造番号を記載するラベルも残るという。一般的なノートPCでは底面に貼られるものだが、このモデルはタブレット単体でも販売されるため、やむを得ないようだ。「管理番号」などのテプラが貼られた会社支給のPCとは異なり、個人で仕事に使うPCとして、美しさにこだわる人には残念な点だ。
こうした点を差し引いたとしても、LAVIE Hybrid ZEROの優位性は明らかだ。NEC自身も「軽さは正義」とうたっているが、これは多くのユーザーも同意する点だろう。
単に毎日の通勤や出張が楽になるだけでなく、これまでスマホの小さな画面で苦労していたようなシーンでも、フル機能のPCを使えるようになる。前モデルでは360度回転のコンバーチブル機構により可能だったが、タブレット単体での利用を重視する人に、新モデルの検討をすすめたい。