ビジネスの現場でモバイルデバイスを駆使することが当たり前の時代になりました。しかし、モバイルデバイスの移り変わりは非常に早く、あれもこれもと見てるうちに、また次の新しいデバイスが登場することも珍しくありません。
この連載では、ライターの山口 健太氏がPCやスマートフォン、タブレット端末、はたまたウェアラブルデバイスまで、枠にとらわれることなく、ビジネスで活用できる"モバイルデバイス"を紹介していきます。
Surfaceに似てる? HPの3-in-1 Windowsタブレット
日本HPが12月10日に発表した「HP Elite x2 1012 G1」。第6世代Core MプロセッサーやUSB Type-Cポートを搭載しており、LTEモデルもラインアップするなど、Windowsタブレットの最新トレンドを余すところなく採り入れたスペックが魅力的だ。
一見したところ、外観はマイクロソフトのSurfaceシリーズに似ており、HPならではのオリジナリティが感じにくい印象を受ける。しかし、日本HPに言わせれば「法人向けタブレットとして、中身は大きく異なる」そうだ。この記事では、その魅力を探っていく。
外見は似ているが内部設計は法人ユーザーを意識
HP Elite x2 1012 G1のデザインを見て真っ先に気になるのは、マイクロソフトのSurfaceシリーズに似ているという点だ。
12型ディスプレイの画面解像度はWUXGA+(1920×1280ドット)を採用し、Surface Pro 3以降に、Windowsタブレットのトレンドになりつつある3:2のアスペクト比を実現している。
キックスタンドは形状こそ異なるものの、最大150度まで自由に角度を変えられる設計で、使い勝手が似通っている。また、別売のキーボードは専用のPOGOピンで物理的に接続する。根本の部分を折り曲げてマグネットでタブレットに接着できる構造も、Surface Pro 3以降とよく似ている。
HPはこの相似ぶりをどう考えているのか。日本HP 執行役員 パーソナルシステムズ事業本部長 兼 サービス・ソリューション事業本部長の九嶋 俊一氏は、「Surfaceを意識していないといえば嘘になる」と語る。
だが、HP Elite x2 1012 G1にはSurfaceと明確に異なる点があるという。
「基本はコンシューマー向けの製品であるSurfaceは、内部でバッテリーが完全に接着されている。HPの場合もバッテリーは内蔵型だが、作業員がオンサイトで交換できる構造とした」(九嶋氏)
日本HPによれば、法人ユーザーはタブレットであっても5年程度の運用を想定しているという。
さらに最近では、セキュリティの観点から本体交換ではなく、オンサイトで修理を求めるケースが増加。これに対して日本HPは、通常1年間の製品保証に加えて、製造終了から最低5年間は部品を保持する。保守サービス「Care Pack」の購入時には、最長5年間の保証も提供していく。
一見したところSurfaceに似ている製品だが、その内部には法人ユーザーの要求に応える工夫が入っていることがうかがえる。
USB Type-Cを搭載、充電もUSB PD
ほかにもHP Elite x2 1012 G1には、Surfaceとは異なる見どころが満載だ。CPUには第6世代のCore Mプロセッサーを搭載し、高性能でありながら冷却ファンのないファンレス構造を実現した。
これはAtomを採用したSurface 3と、第6世代Coreの「U」プロセッサーを採用したSurface Pro 4の中間を狙ったスペックといえる。Core Mは省電力を優先したCPUだが、Atomとは異なりSATA接続のSSDをサポートするため、ストレージに不満を感じることがほとんどないはずだ。
インタフェースとしてUSB Type-Cを採用する点も面白い。HPはUSB Type-Cを活用する2種類のアクセサリーも同時に提供する。「HP USB-C トラベルドック」(1万2000円)はまだ開発中とのことだが、USB×2ポート、Ethernet、HDMI、VGAを搭載し、持ち運びも意識した小型軽量タイプに仕上げている。
もう1つは上位モデルの「HP Elite USB-C ドッキングステーション」(2万5000円)だ。USB3.0×1ポート、USB2.0×3ポート、Ethernet、DisplayPort、HDMIを搭載し、タブレット本体を充電する機能も備える。データと充電を1つのポートでまかなえる、USB Type-Cの特徴を活かしたアクセサリーだ。
タブレットの充電にもUSB Type-Cを用いる。本体付属品の「HP 45W USB Type-C ACアダプター」は、USB PD規格に対応し、最大15V・3Aの45W出力に対応する予定だ。アップルの新型MacBookの採用後、なかなか対応機種の増えないUSB PDだが、ようやく普及の兆しが見えてきたといえる。
春にはLTEモデルも登場
HP Elite x2 1012 G1では、USB Type-Cドック以外に、無線のドッキングステーションも提供される。これは高速無線通信規格「Wi-Gig」を利用したもので、1.2メートル以内の距離で障害物のないことが条件だが、ディスプレイやUSBのデータを4.7Gbpsで転送できる上、遅延もほとんどないという。
多くのタブレットは外部ディスプレイやUSBデバイスの有線での接続をサポートしているものの、外出時や帰社時にケーブルの着脱が面倒になるのが悩みのタネ。社内や社外の移動など何度も自席を離れるビジネスパーソンに便利な機能といえよう。
Wi-Fiモデルとは別に、追ってLTEモデルも発売予定だ。製品構成はNTTドコモ版とKDDI版の2種類で、各キャリアのプラチナバンドに対応する。なお、KDDI版では2GHz帯のLTEに対応しないものの、日本HPによれば800MHz帯のLTEだけでも問題なく利用できるとしている。
HP Elite x2 1012 G1の価格は、Wi-Fiモデルの最小構成時で9万9800円(税別)から、2016年2月下旬の発売を予定している。一方のLTEモデルは14万9800円(税別)で、2016年春に登場予定だ。発売はまだ少し先のことだが、2016年春のWindows 10タブレットとして申し分のないスペックに仕上がるのではないだろうか。