4月20~22日に開催された「第2回 IoT Tech」では、成田国際空港 営業部門 CS推進部 営業企画推進室マネージャー 萩原通晴氏による講演「成田国際空港のCSとITの推進」において、成田国際空港のIoTに対する取り組みが披露された。本稿では、その模様をダイジェストでお届けする。
東京オリンピックを見据えた整備とCSへの取り組み
1978年の開校以来、北米とアジアの結節点として重要な役割を果たしてきた成田国際空港(以下、成田空港)。国際線就航都市は37カ国3地域107都市に及び、2015年度の旅客数は3,692万人、発着回数は23.5万回を見込む。2015年4月に機能的でデザイン性の高い第3旅客ターミナルビルをオープンし、2020年の東京五輪を前に日本と世界を結ぶ表玄関としての役割をさらに拡大させている。
成田国際空港 営業部門 CS推進部 営業企画推進室マネージャー 萩原通晴氏 |
成田空港では、旅客ターミナルビルの管理をはじめ、滑走路や航空機を安全に離着陸させるための各種設備でさまざまなIoTを活用する。萩原氏はまず、オープンしてちょうど1年が経過した第3旅客ターミナルを例に、空港施設がどのような技術で運営/整備されているかを紹介した。例えば、旅客取り扱い施設では施設建設の際に旅客の動きをシミュレーションして、施設内やターミナルまでの動線に問題がないかを確認したのだという。シミュレーションでは、施設が3D表示され、色分けした乗降客が一定の時間内にどういった動きをするかが一目瞭然であることが示された。
航空機が離発着する空港基本施設については、滑走路や航空保安無線、航空保安照明などの機器がある。滑走路では、航空機を誘導するためのVOR/DME(超短波全方向式無線標識施設/距離測定装置)を使って信号をやり取りし、滑走路に誘導する。特に、天候によって視界が悪い場合などは、進入角度などを設定することで自動で着陸できる仕組みだ。照明は進入角指示灯、滑走路灯、駐機位置指示灯など約20種類を整備しているという。
「第3旅客ターミナルの整備と第2旅客ターミナルビルの到着階ロビーのリニューアルが完了し、計画されていた大きな施設の整備はほぼ終わりました。特に第2旅客ターミナルビルのリニューアルでは、東京オリンピック・パラリンピックの開催を見据え、日本の玄関としてふさわしい和の抽象美を彷彿とさせるモチーフを取り入れたデザインで、日本の品格、繊細さ、上質さを演出しました」(萩原氏)
続いて、萩原氏はCS(Customer Satisfaction)の取り組みを紹介した。成田空港では顧客満足の向上のために、「成田空港CS協議会」、「NAAグループCS推進連絡会」、「CS推進委員会」という3つの柱を設けている。このうち、直接顧客と接する空港内の各機関や企業の代表で構成されるのが成田空港CS協議会だ。2002年に発足し、航空会社、交通機関、店舗・サービス、警察、警備会社、清掃会社など関連28団体が所属し、「めざせ、CS No.1エアポート」を掲げて一体となったCS活動を展開しているという。
CS推進体制の”3本柱” |
例えば、顧客から届いた声は3営業日以内に対応する決まりだ。顧客の声はデータベース化され、全役員・社員が共有している。対応や改善のための取り組みは、マネージャクラスによる週1回、役員クラスによる月1回の社内ミーティングで協議され、速やかに実行される。実際の改善例として、駐車場からターミナルまでの雨除けの設置やほじょ犬用のトイレ施設の設置、ムスリム向けハラール認証レストランやパンフレットの設置などを紹介した。