NICT(情報通信研究機構)は4月6日、第4期中長期計画を発表した。同計画は、平成28年度から5年間を視野に入れた活動方針をまとめたもので「戦略的研究開発の強化」、「オープンイノベーションの拠点機能強化」、「グローバル展開の強化」の3つの柱で構成される。
“ソーシャルICT革命”を目指す、組織体制の強化
戦略的研究開発の強化に関しては、従来のフロンティア研究分野をさらに拡充するとともに、研究において成果が出てきたものをプロジェクト化し、実用化に向けて推進していく体制として「総合研究センター」、「研究センター」、「開発センター」、「総合研究室」が設けられる。
NICT 理事 伊丹俊八氏 |
理事の伊丹俊八氏は、「研究開発という観点では、『ソーシャルICT革命』の理念の下、ICTの研究成果から新たな価値を創造する実社会融合型ICT研究に軸足を置く」と説明する。
ソーシャルICT革命とは、総務省が掲げるICT活用構想で、社会全体のICT化により、新たな価値の創造や社会システムの変革をもたらそうというものだ。その実現に向けては、次の5つの重点領域があると考えられている。
- 観る:さまざまなモノの情報をセンサなどのIoTデバイスによって把握する
- 繋ぐ:広域から集積したデータをネットワークで繋ぐ
- 創る:集まったビッグデータを解析し、新たな社会的価値を創造する
- 守る:サイバーセキュリティにより、情報やネットワークまで含めた社会を守る
- 拓く:未来のイノベーションとなる先進的な基盤技術を拓く
これらのうち、「創る」に関しては、従来フロンティア研究分野とされていた脳情報通信研究を次世代のAIと位置付け、「AI・脳情報通信研究群」としてまとめられた。また、オープンイノベーションの観点から、これまで最先端技術の実証を行う場だった総合テストベッド研究開発推進センターでは、異業種とも連携してIoTシステムのテストなども行える環境を構築する予定だという。
さらに、「守る」のサイバーセキュリティに関しても、従来はネットワークセキュリティの一部として扱われていたが、昨今のサイバー攻撃の動向からその重要性を考慮し、「サイバーセキュリティ研究群」として分化された。加えて、セキュリティ人材育成センターでは、研究成果を生かした演習などを行い、企業や自治体のセキュリティ担当者のレベルの底上げをねらう。