3回にわたってお伝えしてきた新興ストレージベンダー座談会のレポートも今回が最終回。これまで、新技術の動向や今後の展望などについて紹介してきたが、最後は、ストレージ導入検討者の皆様へのアドバイスの意味も込めて、特徴的な導入事例と検討時のポイントを聞いたのでご紹介する。

シリーズ企画『新興ストレージベンダー座談会』

以下の記事も併せてご覧ください。

性能以外が評価されたフラッシュストレージ

Panasas (スケーラブルシステムズ) 戸室氏

Panasas販売代理店 スケーラブルシステムズ代表取締役 戸室隆彦氏

──次に、事例を基に最近のストレージの話題を見てみたいと思います。Panasasさんは、大規模環境での事例を挙げていました。

Panasas (スケーラブルシステムズ) 戸室氏:基本的には事例を公表していないので、概要だけになります。

Panasasは、拡張性が特徴的なストレージなので、傾向としては、クライアントやOSの構成、環境を変えず、毎年増設していくパターンが多いです。毎年増設して、10シェルフ(ストレージ構成の最少単位で40~160TB構成)を超えるような構成になったケースもあります。

従来のNASアーキテクチャで課題となっていたスケーラビリティやパフォーマンスのボトルネックが解消できますので、大規模な並列処理システムでの先端的な研究などに使われています。

──QNAPさんはハイブリッドストレージですね。

QNAP (テックウィンド) 野嵜氏

テックウィンド(QNAP Systems) 営業本部PM二部 プロダクトマネージャー 野嵜太郎氏

QNAP (テックウィンド) 野嵜氏:社名は出せないのですが、ある建設業のお客様でパブリッククラウドと連携した事例が新しいと思います。Microsoft Azure上にバックアップをとりつつ、すぐにアクセスできる場所にもデータを置いて利用しやすくしています。データの内容に応じた使い分けができている良い事例になっています。

──Synologyさんは、霧島酒造さんの事例を挙げています。

Synology(アスク)児島氏:霧島酒造さんは、情報系・製造系のディザスタリカバリーシステムを構築した事例です。全国の拠点ごとに分散配置したNASを1つのインタフェースで統合的に管理できるようにしています。各拠点のNASを情報システム部門がリモートから管理でき、しかも使い勝手がいいということでご好評を頂いています。

小さな事業所や工場では、ITに明るい人が少なく、些細な作業でも現地に行かなければならないケースが多いです。リモートから管理できる環境というのは有り難がられています。

──Violin Memoryさんは、大日本印刷さんの事例がうれしかったと回答いただきました。

Violin Memory 青野氏

Violin Memory シニアテクニカルセールスマネージャー青野雅明氏

Violin Memory 青野氏:半導体用フォトマスクの生産管理システムのHDDストレージをオールフラッシュに刷新した事例です。

オールフラッシュストレージは、性能にメリットを感じて採用されるケースが多いのですが、大日本印刷さんでは、性能よりもむしろ、コンパクトで運用管理がシンプルな点を評価いただきました。ハードディスクと比べて壊れにくいということもあり、「素の箱」としてシンプルにデータを保全。こうした事例は、フラッシュのコストが下がってくればますます増えると考えています。

──Nimbleさんは、Yahoo! JAPANさんとアーレスティさんの事例です。

Nimble 川端氏:Yahoo! JAPANさんは、2014年にOpenStack基盤を構築する際のストレージシステムとしてご採用いただきました。Nimble Storageでは、OpenStackのCinder対応ドライバーを提供しています。

OSイメージの高速コピー機能などを、ストレージ側にオフロードすることで不要なトラフィックを排除したりしています。アーレスティさんでは、全社VDI化の取り組みを支えるストレージ基盤として採用していただきました。1200台の仮想マシンを10万IOPS以上という環境から提供しています。

ピュア・ストレージ 阿部氏

ピュア・ストレージ・ジャパン マーケティング部長 阿部恵史氏

──ピュア・ストレージさんはお客様との話で印象に残っていることはありますか?

ピュア・ストレージ 阿部氏:ワークロード特性の異なるデータベースを当社ストレージに集約するケースが多いです。

ディスクベースのストレージでは、インスタンスごとに個別のストレージプールを作って、筐体やドライブ単位でワークロードがかちあわないように設計する必要があります。しかし、フラッシュの場合はその辺りをそれほど厳密につくらずに、放り込んでいっても大丈夫です。NTTぷらら様は、ボリューム設計なしに5つのワークロードタイプの異なるデータベースを当社のフラッシュストレージにすべて集約させ、性能向上を実現されています。あるバッチ処理は所要時間が従来の10分の1に短縮されて、あまりに短時間で終了したため監視チームが異常終了ではないかと確認を求めてきたこともあったそうです。

サーバ統合やサーバ集約は進んでいますが、その後ろのストレージの統合はまだこれからだと思います。そんなときにオールフラッシュやフラッシュベースの製品は向いています。NTTぷららさん、三井住友建設さんなど多くの事例があります。

──少しお客様が異なるかもしれませんが、サンディスクさんはいかがでしょうか?

サンディスク 山本氏

サンディスク コマーシャルセールスマーケティング シニアマネージャー 山本哲也氏

サンディスク 山本氏:クラウドプロバイダーやSNSによるフラッシュ採用を挙げさせていただきました。斬新で、特殊な用途として導入しようというより、皆さんが普段何気なく使っているものにフラッシュが採用されているというケースです。肌感覚で信頼を置いているという意味ではインパクトがあると思います。

また、処理能力やレスポンスを示す意味では、科学技術振興機構(JST)が提供している論文検索システムへのフラッシュの採用実績があります。加えて9月24日に東京証券取引所と富士通の両社が連名で現物商品売買システムのリニューアルを発表されましたが、この新システムにもFusion ioMemoryが採用されています。

──ティントリさんの特徴がよく出た事例があれば教えてください。

ティントリ 羽鳥氏:ティントリ製品は富士通様にOEM提供していますが、その富士通ブランドで導入した3D CADのVDI事例があります。当初は、一般的なストレージでVDI化していたのですが、動画でコマ落ちしたりしていた。そこで、ティントリを採用し、仮想化ソフトが提供する仮想GPUやストレージ管理APIを使って、高性能なワークステーションをVDI環境から提供できるようにしました。お客様からは、パッチ当てやクローン作成、展開が迅速に行えるようになったと喜ばれています。この導入事例の新しい点は、GPUの仮想化を実現していることです。GPUの仮想化は今年に入ってVMware環境でサポートされるようになりました。そこで従来のグラフィックワークステーションに取って代わるVDI導入が今後更に増えていくと思いますが、そのような負荷の高い仮想デスクトップが大量に稼働するような環境であっても、ティントリは自動的にワークロードの稼動状態を把握してQoSを行うことにより、常に高速かつ安定したパフォーマンスを出すことができるのです。