前回は、プリンタのインストールと共有設定について解説した。前回にも述べたように、作業の要領はデスクトップ版Windows同士で家庭内LANを構築してプリンタを共有している場合と大して変わらない。
今回は、家庭内LANではあまり遭遇しないと思われる、プリンタドライバ・アクセス権・スプールといった分野の話について取り上げてみよう。
共有プリンタのアクセス権設定
あまり意識する機会はないのだが、実は共有フォルダだけでなく共有プリンタにもアクセス権がある。もちろん、対象が異なるわけだから、アクセス権の内容も共有フォルダとは異なる。
プリンタに設定できるアクセス権には、以下のものがある。いうまでもないことだが、フォルダの共有アクセス権設定と同様に、ネットワーク経由で共有プリンタを利用する際に影響する設定だ。
・印刷
・プリンタの管理
・ドキュメントの管理
・アクセス許可の読み取り
・アクセス許可の変更
・所有権の取得
ただし、後の3つは通常は表示しておらず、[特殊なアクセス許可]に包含する形になっている。
なお、アクセス権のうち[ドキュメントの管理]は耳慣れない言葉だが、これは出力した印刷指令を取り消す際に関わってくるアクセス権だ。通常はシステムアカウントの[Creater Owner]に対してこの権限を設定しているので、出力を指示した本人であれば印刷の取り消しを指示できる。
この設定を変更して、たとえば管理者でなければ取り消しを行えないように設定することも、理屈の上では可能だ。管理者の仕事が急増して大変なことになりそうだし、そもそもそんなことをする必然性は薄い。「理屈の上では可能」という話である。
この設定は、プリンタの[プロパティ]ダイアログにある[セキュリティ]タブで行う。手順は以下の通りだ。
[コントロールパネル]の[ハードウェア]以下にある[デバイスとプリンター]をクリックする。
続いて表示する画面のプリンタ一覧で、アクセス権の設定を変更するプリンタを選択してから、右クリックメニューにある[プリンターのプロパティ]を選択する。(同じ右クリックメニューにある[プロパティ]は共有設定と無関係なので、間違わないように注意したい)
- 続いて表示するダイアログで[セキュリティ]タブに移動して、アクセス権の設定を行う。設定操作の手順はNTFSアクセス権や共有アクセス権の場合と変わらず、内容が異なるだけだ。
共有プリンタでは共有フォルダと違って、情報保全などの面でセンシティブな問題が発生する可能性は低い。一般論としては、プリンタに対して既定値と異なるアクセス権を指定する必然性はほとんどないはずだ。
もっとも、重要な機密情報を扱っている部署の人間が、他所の部署のところに設置してある共有プリンタに間違って出力しないように設定する、といった需要は考えられるかも知れない。個人的経験からすると、「○○本部長専用のプリンタだから、他の人は印刷できないように指定したい」という要望が出た事例が1件あったぐらいだ。
共有プリンタに追加ドライバを加える
Windows NTの頃から引き継いでいる使用なので「今更」な話ではあるのだが、念のためにプリンタドライバの入手経路について解説しておこう。
クライアントPCのOSとしてWindows NT系のOS、すなわちWindows 2000/XP/Vista/7/8を使用する場合、ネットワーク経由で接続するプリンタで使用するプリンタドライバは、プリンタを共有しているコンピュータからダウンロードする仕組みになっている。
ということは、プリンタを共有しているコンピュータの側で、そこに接続するクライアントと異なるアーキテクチャのCPUに対応したプリンタドライバしか持っていないと、ドライバのインストールに失敗して印刷不可能、という事態が発生する。昔のように、x86・MIPS・Alpha・PowerPCと多様なアーキテクチャに属するCPUが存在する時代ではないが、x86とx64とItaniumという違いは依然として存在する。
プリンタを共有するWindowsサーバ側で、所要のプリンタドライバをすべて用意しておくのが、もっとも確実な方法といえる。もしもWindowsがプリンタドライバを持っていない機種のプリンタであれば、メーカーのWebサイトなどから入手する必要がある。
すでにプリンタを組み込んで共有しているWindowsサーバで、さらに異なるアーキテクチャのCPUに対応するプリンタドライバを追加する際の手順は、以下のようになる。
[コントロールパネル]の[ハードウェア]以下にある[デバイスとプリンター]をクリックする。
続いて表示する画面のプリンタ一覧で、追加ドライバをインストールするプリンタを選択してから、右クリックメニューにある[プリンターのプロパティ]を選択する。(同じ右クリックメニューにある[プロパティ]は共有設定と無関係なので、間違わないように注意したい)
続いて表示するダイアログで[共有]タブに移動して、下端にある[追加ドライバ]をクリックする。
続いて表示するダイアログで、クライアント側で使用するOSのチェックボックスをオンにする。選択肢には[x86][x64][Itanium]があるので、その中から必要なものについてチェックボックスをオンにしておいて、[OK]をクリックする。
Windowsがプリンタドライバを持っていれば直ちに組み込みを行えるが、Windowsがプリンタドライバを持っていない場合には、メーカーが提供するドライバディスクを用意する必要がある。
スプールに関する注意点と、共有方法に関する検討
プリンタを共有しているWindowsサーバでは、複数のクライアントPCから送られてきた出力データをいったん自分のハードディスク上に溜め込んでから、それを順番にプリンタに出力する。俗に「スプール」と呼ばれる動作のことだ。
既定値では、スプールする場所はシステム ドライブになっている。そのため、プリンタの共有を行うサーバでは、ハードディスクの空き容量に余裕を持たせる必要があるかもしれない。
その代わり、プリンタを共有するサーバが大量のデータをスプールできる体制を整えているのであれば、プリンタを個別に、直接ネットワーク経由で共有する(つまりサーバを介さない)よりも確実性が高いかも知れない。
つまり、複数のプリンタをプリンタ共有用のサーバで束ねて、すべての出力をいったん、そこでスプールしてから個別のプリンタに送り出すわけだ。少なくとも、プリンタが内蔵するメモリの量よりは、プリンタ共有用のサーバが持つパトーディスクのスプール用領域の方が余裕があるだろうから、大量のデータを消化するには向いているのではないか、というわけだ。
その代わり、クライアントPCからプリンタ共有用のサーバに向かうトラフィックと、そのサーバからプリンタに向かうトラフィックの二段構成になるので、ネットワークのトラフィックは増えるのではないかと予想される。その代わり、サーバとプリンタを物理的に近い場所に配置する必要はないので、ローカルポートに接続するよりも配置の自由度は高い。