前回は、会社でシステム部門の仕事をしている鈴木一郎君がTechNetを使って、Windows Server 2008が備えるハイパーバイザ型仮想化機能「Hyper-V」の基本について、情報収集を行う過程について紹介した。
前回は基本的な内容のドキュメントしか取り上げていなかったが、TechNet Onlineで公開されているドキュメントはそうしたレベルにとどまらない。さらに突っ込んで調査を深めていく過程について、見ていくことにしよう。
実際に仮想化を推進するために考えなければならないことは?
TechNet Onlineには「仮想化TechCenter」というコーナーがあり、マイクロソフトの仮想化技術に関連する情報が公開されている。そのうち、製品ドキュメントにアプローチしてみるところまでを前回に紹介した。
こうしたドキュメントを活用することで、製品の概要、動作に必要なシステム要件、仮想化によって得られる利点や、仮想環境におけるWindowsサーバのライセンスなどの概要を把握できる。これらの情報は、仮想化環境を実現する際に必要なハードウェアやソフトウェアの調達費用、システム設計、といった情報をまとめる際に有用だ。
TechNet Onlineの「製品ドキュメント」で公開している文書は、Word形式のものが多い。手元にダウンロードして保存すればオフライン状態でも読めるようになるし、その必要がなければ直接Wordで開いてもよい |
どこの会社や組織でもそうだが、新製品を導入することで得られるメリットを明確に提示できなければ、会社のお金を使って導入しようとしても、承認を得ることはできない。そういったときに、訴求したいメリットをまとめた文書があれば、提案資料をまとめる際に役に立つはずだ。もっとも、ベンダが宣伝している内容をそのまま載せればいいというものでもなくて、自社の事情に合わせてどういった形で活用するか、まで考えなければならないが。
ともあれ、マイクロソフトが公開している製品ドキュメントにある「仮想化のメリット」が納得のいくもので、かつリーズナブルな経費で実現可能であれば、Hyper-Vによる仮想化によってサーバ環境の合理化を図れそうだ、という結論になったので、その方向で報告書をまとめることにした。
しかし、実際に仮想化環境を導入していくためには、どんな用途のサーバが仮想化に向いているのか(または向いていないのか)を把握する必要がある。それに、どういった作業が必要なのかも確認しておかないと、作業の見通しを立てることができない。作業の見通しが立たないと、必要なタスクのリストアップやスケジュールの見積もできない。
そこで、さらにいろいろと文書を調べてみた。
この「計画および展開ガイド」があれば、Hyper-Vの利用に必要なハードウェアのシステム要件や、Hyper-Vの上で実行できるOSの種類などの情報を確認できる。
このリンク先には、「仮想化テクノロジの適切な選択」「Windows Server Virtualization」「Windows Server 2008 Terminal Services」「Microsoft Application Virtualization 4.5(App-V 4.5)」「System Center Virtual Machine Manager 2008」などの分野について、計画・設計の参考になる文書へのリンクがまとめられている。
インフラストラクチャの計画と設計Windows Server Virtualization (571 KB)
自社で "身体を張った" 事例も公開されている
以下のリンク先からダウンロードできるWord文書では、特にマイクロソフト自身の事例を取り上げて、データセンターの逼迫問題と、それに対して仮想化によって問題を解決しようとした際の考え方について述べている。自社で実際に "身体を張って" 得たノウハウは貴重なものだ。
Microsoft IT 事例 : 仮想化候補のサーバーの特定(1.46 MB)
Microsoft IT 事例 : Hyper-V 仮想化テクノロジを使用した仮想マシンの展開のベスト プラクティス (2.38 MB)
一般論だけでなく、自社でサーバの仮想化を取り入れた際に、どういった考え方に基づいて作業を進めたかを文書にまとめて公開している。マイクロソフト以外の企業で仮想化を取り入れる際にも、こうした情報は参考になるだろう |
また、Windows Server 2008がR2にバージョンアップするのと併せて、Hyper-Vについても機能強化が図られるという。そこで、R2のHyper-Vにおける機能強化点について把握するため、以下の文書を調べてみた。
Windows Server 2008 R2 Hyper-V よく寄せられる質問 (1.27 MB)
この文書、タイトルには「よく寄せられる質問」とあるが、対象がR2になっている点に注意が必要だ。つまり、初めてHyper-Vについて調べるユーザーではなく、すでにHyper-Vを使ったことがあり、R2における改良点について知りたい人が対象なのだ。
このように、TechNet Onlineで公開されている製品ドキュメントは内容が多種多様で、実戦的な内容のものが多く含まれている。自社で導入計画を立てる際に、参考になりそうだ。