現在、皆さんはネットワークを利用しない日はないと思います。例えば、インターネットの閲覧、インターネットでの買い物、電子メールなどいろいろな用途で利用していると思います。
最近は、ネットワークを使用するための端末も多岐にわたっています。PCやタブレット、スマートフォンなどの情報通信機器にとどまらず、IoT(Internet of Things、*1)と呼ばれるあらゆる「モノ」を介して利用することができます。
本連載では、あらためてネットワークを学びたい方、これからネットワークを学びたい方のために、TCP/IPの仕組みを中心に、ネットワークではどのような仕組みによりデータ通信が行われているのかについて解説します。
*1 IoT : 世の中に存在するあらゆる「モノ」に、有線や無線などの通信機能を搭載し、インターネットに接続したりモノ同士を相互通信したりすることで遠隔操作や計測、自動制御や自動認識を行うこと。例えば、エアコンに通信機能を持たせて、外出先からエアコンの電源を操作したり、電力メーターに通信機能を持たせて検針員に代わって電力使用量の情報収集をしたりといったことを可能にする。
企業のネットワークの仕組み
まずは、会社の中のネットワークはどうなっているのかを見ていきましょう。図1を見てください。一般的な会社のネットワークを抜粋したものです。
社内には、メールサーバやいろいろな業務用サーバ(例えば、勤怠管理システムや販売管理システムなど)があります。通常はこれらのサーバはサーバエリア(図1 <1>)としてサーバルームなどに収容されています。
そして、社員が利用しているPCはネットワークを介してメールサーバにアクセスすることにより、メールの送受信ができます。また、社内の業務用サーバにアクセスすることで勤怠管理や販売管理をPC上で閲覧や入力をして業務の管理を行うことができます。それに加え、社内のネットワークはインターネットにも接続されています。それによって、社員のPCからインターネットのホームページの閲覧が可能となっています。これは、社員のPCが社内のネットワークを介して社内ネットワークと社外ネットワークを接続しているからです。
ネットワークの種類(LANとWAN)
では、社員のPCはどのようにして社内や社外と接続しているのでしょうか。これは、LANやWANといったネットワークを使って接続しています。
会社のネットワークは大きく分けて、LAN(Local Area Network)とWAN(Wide Area Network)に分かれます。
LAN(図1<2>)は、フロア内やビル内、キャンパス内(例えば、工場などの複数の建物が点在している敷地)といった比較的狭い範囲で複数のコンピュータを接続するネットワークです。一方、WANは本社と支社といったように距離が離れている拠点間を接続するネットワークです(図1<3>)。
LANとWANは接続する範囲に加えて、定常的にかかるコストも違います。WANは、通信事業者が展開しているWANサービスに契約をして拠点間の接続を実現しています。そのため、定期的に通信料を通信事業者に支払う必要があります。WANには、以下の表のようないろいろなWANサービスがあります。それぞれのWANサービスは特徴や通信料が違います。そのため、どのWANサービスを契約するかをよく検討する必要があります。
広域イーサネット | IP-VPN | 専用線 | |
---|---|---|---|
高速性 | 第1位 | 第2位 | 第3位 |
料金 | 安価 | 安価 | 高価 |
特徴 | ・通信事業者の網内の回線を共有 ・ルータは不要 ・主にスイッチを使用 ・ネットワーク層のプロトコルは依存しない ・運用はユーザー側で実施 |
・通信事業者の閉域網内で回線を共有 ・ネットワーク層のプロトコルはIPのみ可能 ・ルータを利用可能 ・専用線から流用が可能 ・運用は通信事業者で実施 |
・回線を占有 ・回線速度は保証される ・ルータが必要 |
このようなWANに対して、LANは通信事業者を介して接続していません。LANでは、複数のコンピュータをスイッチ(写真1)というネットワークデバイス(機器、*2)に接続して通信を実現しています。そのため、定期的な通信料はかかりません。しかし、日々の運用は基本的に自分たちで行う必要があります。LAN内で何か障害があった場合は、自分たちでその障害箇所を見つけて原因を切り分けて修復する必要があります。
*2 ネットワークデバイス:コンピュータネットワークで特定の機能を持つ装置のことを言う。代表的なものとして、ハブ、スイッチ、ルータ、ファイアウォール、アクセスポイントなどがある。
ネットワークを構成する機器
PCやサーバをLANで接続する方法として、有線で接続する方法と無線で接続する方法があります。有線で接続する場合は、PCに搭載されているNIC(Network Interface Card、写真2)にケーブルを接続します。
このNICは、通常のPCでは1枚しか搭載されていません。つまり、1本のケーブルしか接続できないということです。例えば、PC-A、PC-B、PC-Cという3台のPCでデータの送受信することを考えてみましょう。
PC-AとPC-Bでデータの送受信をしたい場合、1本のケーブルで2台のPCを接続することで可能になります。次に、PC-AがPC-Cとデータの送受信をしたい場合、PC-Bのケーブルを抜いてPC-Cに接続しなおす必要があります。次に、PC-AがPC-Bと再度データの送受信したい場合は、PC-CのケーブルをPC-Bへ接続しなおす必要があります。これでは、非常に不便です(図2)。
そこで、複数のケーブルを挿すことができるポートを搭載したスイッチを介すことで複数のPCを接続することが可能になります。つまり、ケーブルを差し替えることなく3台のPC間でデータの送受信することが可能になるわけです。
一方、無線で接続する場合は、PCに無線アダプタを搭載し電波を使ってアクセスポイントと接続します(写真3)。
このアクセスポイントは複数のPCと電波でデータのやり取りをするだけでなく、スイッチと接続をして有線LANと無線LANとの橋渡しもしています。
スイッチに複数のPCを接続した範囲が1つのネットワークとなります。社内にはこのネットワークが複数存在しています。例えば、本社にあるネットワークと支社にあるネットワークは別のネットワークということです。それぞれ別のネットワークをつなげるためには、ルータ(写真4)というデバイスが必要になります。
こうしたスイッチやルータの仕組みや機能などについて、今後わかりやすく紹介をしていきたいと思います。
第1回のまとめ
- コンピュータネットワークの代表的なものとしてLANとWANがある。
- スイッチは複数のPCを集線する装置である。
- アクセスポイントは有線LANと無線LANの橋渡しをする装置である。
- ルータは複数のネットワークを接続する装置である。
板倉 恭子
ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス推進本部 第1応用技術部 ネットワークアカデミーチーム所属
ネットワークインストラクター歴13年で、過去にCisco認定インストラクター試験の試験官にも従事。
ネットワークをベーススキルとして、オリジナルコースや顧客要望に合わせたカスタマイズコースのカリキュラム作成やコンサルタント業務を担当。