最終回となる今回は、NE555タイマーICにデュアルのD型フリップフロップ74HC74を用いて、信号を分周し、さらにLED駆動用のパワートランジスタを付けたので、実際にD型フリップフロップ動作の波形とLEDの点滅をテクトロニクスのオシロスコープ「TBS1022」を用いて確認してみたいと思う。
ロジック信号を、アナログ増幅してパワートランジスタを駆動させるため、npnトランジスタによる2段増幅回路を考えた。このため、秋葉原で小信号トランジスタと耐圧200V以上電流容量1A程度のパワートランジスタを探した。
前回述べたように、最近の秋葉原の電気部品街には、抵抗やコンデンサなどの受動部品の店は多いのだが、トランジスタやICなどの店は少なくなった。今回の回路では、ガード下の部品屋には目的とするトランジスタはなく、電流増幅率hFEが200~300で耐圧が10~20V程度の小信号トランジスタと、パワートランジスタが欲しい、と言ったが、製品名を言ってくれなければ探せないと言われた。製品名まで相手に伝えなければ入手が難しい時代になったことを感じた。他の店をたずねたが、若松通商を紹介された。結局、若松通商にて前段のトランジスタとして2SC1815小信号トランジスタと、ルネサス エレクトロニクスの2SC3840パワートランジスタを入手したのであった。
LEDの駆動回路として、当初2段増幅回路を製作した。このような時にやはりオシロスコープでチェックできることは心強い。ただ残念なことにアースの取り方が悪いせいか、発振してしまった(図1)。フリップフロップからの駆動増幅回路の失敗である。昔、ラジオ少年だった頃、真空管アンプでカソードフォロワに発振防止用の電解コンデンサを入れるとよいと書かれていたことを思い出した。しかし電解コンデンサがないため購入しなくてはならない。もう一度、秋葉原に足を運ぶことは時間がかかるため、気が進まなかった。
本当に失敗なのか、発振だけなのか、やはり確認しておこうと思い、フリップフロップの出力もテクトロニクスのオシロスコープTBS1022で見てみることにした。図2の(a)はフリップフロップ1段目からの出力波形である。発振しながらも何か分周されているようでもある。図2の(b)はフリップフロップ2段目からの出力である。やはり分周はされている。タイマーからフリップフロップまでの回路は間違っていない。その先の駆動回路が発振しているため、入力部がその影響を受けていると考えた。
発振しているのは増幅率が高すぎて位相が回ってしまったためだろうと考え、増幅率を抑えるため、駆動回路初段の小信号トランジスタを外してみようかと考えたが、パワートランジスタを直接駆動できるほどの電流がとれるだろうか、と悩んだ。その時浮かんだ妙案が、ダーリントン構成にしてみたらよいかもしれない、という考えだった。ダーリントン構成は、初段のエミッタをパワートランジスタのベースに直結して、電流増幅率を初段と2段目の掛け算で高められるという回路である。
この回路の初段のトランジスタは低耐圧、小信号なので、初段のトランジスタのコレクタは、ロジック回路を動かす電源と同じVcc電源(4.5V)に接続し、パワートランジスタのコレクタをオープンコレクタ構成にし、50個直列のLEDに接続した。パワートランジスタのエミッタには電流リミッタとして1kΩの抵抗を設けた(図4)。
このダーリントン構成のドライブ回路を、3つ設けた。タイマーNE555の出力、D型フリップフロップの出力1、それを分周した出力2のそれぞれをダーリントントランジスタのベースに接続した。これらの出力を再びオシロスコープで観測した。それが図5である。
これだけでは、LEDとの関連性がわかりにくいため、ビデオ(図6)を撮った。星の形をしたイルミネーションを動作させると、タイマー出力とフリップフロップの1段目出力の2つだけでも4つの点滅パターンを得ることができた。1つをA、もう1つをBとすると、A、B共にオン、Aのみオン、Bのみオン、ABともオフ、という訳だ。常時オンさせておくLEDストリング(緑)も含ませると、多彩な点滅パターンを構成できる。
以上で、今回の連載を終えるが、今年のクリスマスイルミネーションまでに、出力を3つにした8通りの点滅パターンを構成するためのLEDストリングスを作ってみようと思う。