湿度が高く、不快指数の高い日本の夏。そんな気候でだるくなってしまい、夏になると何も食べたくなくなる、という方は多いかもしれません。
この連載では、忙殺され身体を酷使しがちなクリエイターが「健康的に創り"続ける"」ための知識を公開。敷居が高いイメージになってしまった「健康」を広く手の届くものにすべく活動されている鍼灸師・若林理砂さんが、忙しいクリエイターにもできる「健康への第一歩」につながるエピソードを語ります。第24回は、梅雨時からできる「夏バテ」の対処法について、お話しいただきました。
若林理砂
1976年生まれ。鍼灸師・アシル治療室院長。高校卒業後に、鍼灸免許を取得し、エステサロンの併設鍼灸院で、技術を磨く。早稲田大学第二文学部卒。2004年、アシル治療室開院。著書に「養生サバイバル」「安心のペットボトル温灸」など。好きな漫画/アニメは「進撃の巨人」「FSS」「おそ松さん」。一昔前は腐っていました。「どの宮崎アニメにも必ず出演している」顔立ちといわれています。夫はクーロンズ・ゲートの人。TwitterID:@asilliza
まだまだ夏には程遠く梅雨本番の今日この頃ですが、気温差によって体調を崩している方も少なくありません。
今や広く知られている「夏バテ」。あまりの暑さに食欲がなくなることがその症状なのですが、朝夕は涼しく日中は湿気が多くむし暑いこの時期から、すでに食欲減退は始まっています。最近、何となく胃が重いという方も少なくないのでは?
東洋医学において、湿気が多いこの時期には胃腸障害が格段に増え、少し食べすぎるだけで胃が重くなり、身体全体がだるくなると考えられています。ですので、梅雨のこの時期の食欲減退は、食べ過ぎないことが第一の予防法です。
次に、冷たいものやナマモノを多食することは控えます。これは真夏にも言えることなのですが、1日に何度も「冷たいもの」をとり続けて胃腸を冷やし続けると、身体の内側から冷房病にかかったような状態になります。このため、胃腸の働きが悪くなって食欲がなくなっていくのです。
「冷たいもの」というのは、かき氷やアイスクリーム、氷と同じくらいキンキンに冷えたジュースやビールだけでなく、冷蔵庫で冷やしたナマモノなども指します。梅雨があけて真夏になっても飲むものは冷蔵庫で冷やした程度の温度を基準とし、これより冷たいものの多飲・多食は控えましょう。
そして、梅雨時の胃の重だるさにはペットボトルを使った手軽なやり方である「ペットボトル温灸」がおすすめです。ホット専用ペットボトルに3分の1ほど水を入れてから、沸騰直前まで沸かした湯をのこり3分の2に入れてから蓋を閉め、図の丸の位置あたりを狙って、素肌に直接3~4秒、アチっとなるまで当てます。これを4~5回繰り返します。熱さを感じなくても3~4秒程度で離してくださいね。ここで示した胃の六つ灸と中かんを行ってやると、どうにも動きが悪かった胃がぐるぐるっと動き始めることが少なくありません。
夏においしいそうめんやそばは栄養バランスに注意
梅雨が明けて、夏本番からのお話に移ります。日本の夏は非常に暑いため、冷たくて喉越しがよく、水分が多い冷やしそば・そうめん・冷やしうどんなどをよく食べるようになります。しかし、こうした冷たい麺類を中心に据えると、炭水化物過多、かつ野菜もタンパク質もほとんどないメニューになりがちです。そうした食事を続けていると、栄養不足からさらにだるさを引き起こし、全く何も食べたくなくなるようなひどい夏バテへ一直線となります。
こういった状態を防止するには、必ず食事に「タンパク質」「野菜」「炭水化物」を揃えることが大切です。例えば、ゆでたそうめんを皿に盛り、水菜をキッチンハサミでザクザク切って入れ、その上にツナをトッピングして、プチトマトを添えれば上記の栄養素が揃ったことになります。
ほかのメニューであれば、冷やしそばを食べる際に、野菜のかき揚げに小柱や小海老が入ったものをあわせるのもいいでしょう。あるいは、冷やしうどんにコンビニで売っているサラダチキンを割いて入れ、ねぎやミョウガをキッチンハサミで大量にカットしてトッピングするなどすると、これもまた上記の栄養素を揃えることが可能になります。余談ですが、セブン-イレブンでは元々割いてあるサラダチキンも売られています。
また、台所などが熱くなるのを嫌って、料理をすることすら面倒になってしまい、買ってきたものを適当に並べるだけになり、バランスの良い食生活から程遠い状態に陥る方も少なくないようです。この場合も、先ほどの栄養素を揃えることを念頭に置くことが第一ですし、熱が出にくい電子レンジ調理を積極的に利用するのも手です。ジップロックコンテナがひとつあれば、様々な料理が可能です。詳しくはジップロックコンテナの公式ホームページや、拙著『養生サバイバル』をご覧いただければ幸いです。
そして、かなり頑張って食事に気をつけたのに夏バテしてしまった場合は、漢方薬で対応可能です。良い処方がいくつもありますので、一度専門家にご相談なさってみてくださいね。