頭が痛い、やたらと眠い、体がだるい……日々創作にいそしむクリエイターにとって、こんな症状は身に覚えのあるものかと思います。あるいは、原因もないのに落ち込んだり、イライラしたりなど、気分が悪い方向へ向かう時もあるのではないでしょうか。

病気ではないけれど、不快な症状。それらはもしかしたら「天気」が原因で起こっているものかもしれません。

この連載では、忙殺され身体を酷使しがちなクリエイターが「健康的に創り"続ける"」ための知識を公開。敷居が高いイメージになってしまった「健康」を広く手の届くものにすべく活動されている鍼灸師・若林理砂さんが、忙しいクリエイターにもできる「健康への第一歩」につながるエピソードを語ります。第8回は、ダイエット法の流行と、「痩せる」前に考えたい事柄を、若林さんの体験を交えて語っていただきました。


若林理砂
1976年生まれ。鍼灸師・アシル治療室院長。高校卒業後に、鍼灸免許を取得し、エステサロンの併設鍼灸院で、技術を磨く。早稲田大学第二文学部卒。2004年、アシル治療室開院。著書に「養生サバイバル」「安心のペットボトル温灸」など。好きな漫画/アニメは「進撃の巨人」「FSS」「おそ松さん」。一昔前は腐っていました。「どの宮崎アニメにも必ず出演している」顔立ちといわれています。夫はクーロンズ・ゲートの人。TwitterID:@asilliza

突然ですが、「南の島のハメハメハ大王」という歌をご存知でしょうか? NHKの子供番組「みんなのうた」でよくかかっていた曲ですが、この歌の中に出てくるハメハメハ大王の子供は、風が吹くと遅刻、雨が降るとお休みしてしまいます。

実際、天気が悪いと気分が乗らない……という方は意外と多いのではないでしょうか。その「気分が乗らない」という現象、単に気持ちの問題だけではなく、実際に体に気象が影響しているのかもしれないのです。

天候による体調悪化は「気象病」

私自身、10代後半から20代にかけて、台風が近づいたりするとどうにも体調が悪くなり、だるくて何もする気にならなかったり、ひどい時は目が覚めたら昼近くで、学校の授業がすでに終わっていた……などということもありました。天気が悪くなると体調が悪くなるので、この現象を「気圧アレルギー」なんて勝手に呼んでいたのでした。

そうこうしているうちに、何かのきっかけでこの「気圧アレルギー」は実在しており、学術的に研究されていて、正式名称は「気象病」というのだと知りました。

一口に「気象病」と言っても、さまざまな症状が存在しています。私の場合、低気圧に反応して古傷が疼いたり、偏頭痛など各種の痛みが発生したり、だるくて動けなくなったりするタイプでした。

そのほかにも、気温差で循環器系の変調が起きたり、冬場の日照不足で精神的な病が悪化したり、または強い南風が吹いたときに精神的な変調や注意力散漫が起こったり…原因や症状は本当に多種多様です。

気圧の変化で体調不良…その対処法は?

かいつまんで説明しただけでも、非常にやっかいに聞こえる「気象病」。実際、治療がなかなか難しいものではあるのですが、気圧の変動を主因とするものに限り、気象病の影響を押さえる方法が存在しています。

答えから言えば、酔い止めの薬、あるいは漢方薬の五苓散を、後述するタイミングで飲むことです。五苓散はむくみや下痢、めまい、頭痛などへ処方する漢方として売られていますが、その作用から気象病にも効果を及ぼします。

気圧変動に敏感なタイプの方は、気圧の下がり始めと上がり始めのあたりで、体に変調をきたすことが多いのです。人体の中で、こうした気圧の変化を感知しているセンサーは内耳の前庭に存在しています。センサーの感受性を下げる働きのある薬が、酔い止め、あるいは五苓散ということなんですね。

薬局にて「内耳に作用する酔い止め薬をください」と薬剤師の方にお願いすると、目的に合った薬を選び出してくれますので、ぜひ尋ねてから購入してみましょう。これを、気圧の変動が起こるあたりに服用するのです。

また、東洋医学的な対処方法として、五苓散のほかにも、完骨・れい兌というツボにペットボトル温灸をしたり、内関というツボに米粒をサージカルテープなどで固定して時々押して刺激したりするものもあります。ペットボトル温灸に関してはこちらのサイトに簡単な方法が掲載してあります。

こうした対応策は、気圧が大きく変わる前にあらかじめ行っておくことで効果を発揮します。私は気圧変動による体調管理を目的にしたスマホアプリ「頭痛―る」を愛用しています。気圧の低下をアラートで知らせてくれるので、気圧の大きな変化に備えることが簡単になります。

そのほか、私のTwitterアカウントでは、毎朝「養生予報」というものを行っています。その日の天気図で予測される体調不良を予告し、それに対応する養生法を簡単にお伝えするツイートで、毎日あさ7時から8時ごろにはお届けするようにしています。毎朝Twitterという手軽な手段でチェックしていただくことで、気象病に悩んでいる方の体調管理に役立ててもらえればと思い、長らく続けているものです。

人間は気圧に左右される生き物

ここまでお読みいただいて、「自分も天気によって体調がおかしくなる気がする…」と感じた方、それは気のせいではなく、本当に「天気」のせいです。はっきりと症状が出てしまう方に限らず、地球で暮らしている以上、その影響は避けがたいものなのです。

それを象徴するエピソードを最後にお話します。つい先日、家族でピクニックに出かけたことがありました。しばらくは暖かくて屋外で過ごすのが楽しかったのですが、一転にわかに掻き曇り、空気もひんやりしてきたので退散することに。ピクニック自体は満喫しましたし、雨に降られたわけでもないのですが、車に乗り込むあたりで家族全員がわけもなくイライラし始め、険悪な感じになってしまいました。これは……と思って「頭痛ーる」で気圧変動を確認したところ、それまで高かった気圧がちょうど下降し始めたところだったのです。人間は気圧の変動でこんなにも気分が変わるのか……と再認識した出来事でした。

気象病は、原因不明の体調不良の要因として考えられる大きなもののひとつ。心当たりのある方は、一度自分がどんなときに体調や気分を悪くしているか、天気という観点からも見直してみてください。