見積りの精度を上げる上で「結果のフィードバック」に加えて重要なのが、実績データの蓄積です。実績データを蓄積する際、以下のような手順が必要です。
1.目的を明確にする
やみくもに実績データを集めるのではなく、使用する目的から蓄積するデータを決めていきます。例えば、"見積り精度の向上"、"製品品質の向上"、"生産性の向上"といった具体的な目的を明確にするのです。
2.収集対象、収集単位、収集時期を決める
目的と照らし合わせ、収集対象とする実績データや収集単位、収集時期を決めていきます。上記の見積り式の精度向上を目的とするならば、対象となるデータは、見積り時の機能数、実績の機能数、見積り時の規模、実績の規模となります。
次に収集単位を決めます。規模は、グロスだと機能の種別ごとに規模の分布を見ることができず足し算へと分解できないので、「機能ごとの規模を収集しよう」という考え方にします。
収集時期は実績の機能数は外部仕様凍結時点、実績の規模は製品の完成時点というように、開発のマイルストーンと合わせて設定すると良いでしょう。
3.測定方法を決める
次に測定方法を決めておきます。機能数であれば、どの段階までブレークダウンされた機能を1つの機能として数えるのか、規模であれば、コメント行は含むのかどうかといった測定基準を決めることで、実績データの精度が向上します。測定方法の決定に迷いが生じた時は、ぜひ目的に立ち返って、何を計測すればいいのかを考えると良いと思います。
また、社外のベンチマークデータなどと比較することをスコープに含めるのであれば、社外の一般的な測定方法と合わせる必要があります。
執筆者プロフィール
藤貫美佐 (Misa Fujinuki)
株式会社NTTデータ SIコンピテンシー本部 SEPG 設計積算推進担当 課長。IFPUG Certified Function Point Specialist。日本ファンクションポイントユーザー会の事務局長を務める。
『出典:システム開発ジャーナル Vol.3(2008年3月発刊)』
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。