繰り返し伝えることも重要
「何度言ったらわかるんだ!」という台詞を部下にぶつけてしまったことはありませんか? 筆者も過去に何度も口にしてしまった台詞です。
しかし、ある事柄が再発するということには、何らかの必然性があるはずです。理由が理解できていないのかもしれません。また、原理原則を様々なシーンに応用できていないということもあるでしょう。
こういう状況でもリーダーは諦めるわけにはいきません。時には何度も何度も繰り返し伝えなければなりません。とても根気を要する作業ですが、重要なことです。
繰り返し伝えることの効用は、本人だけではなく周囲への理解も促すということです。場合によっては、次回は周囲が個人のミスをフォローし、チームとしては問題をクリアできるかもしれません。
何度も同じことを言うと、何か無駄をしているような気になってしまいますが、相手の習慣化を助けるというスタンスで向き合えば、これまでとは違った接し方ができるかもしれません。
人は完全に理解していなくとも、習慣化されれば行動することができます。そして、完全に習慣化されて初めてその意味を理解することができるようになった、ということは少なくないのです。
根気よく大切なことを伝えるという姿勢は、チームには必ず浸透します。繰り返し伝えることは、無駄ではなく必要なことなのです。
「立場」より「メリット」を伝える
叱るというと、何となく「○○してはいけない」という否定的なニュアンスがあります。ですから、あることをしてしまった部下に対し、「なぜ○○してはいけないのか」という説教型のアプローチだけでは部下の心に届かないかもしれません。特に「担当は君なのだから」「その立場があるだろう」的なアプローチでは、なかなか聞く耳を持ってくれないでしょう。
転職も珍しくない時代ですから、多くの企業ではスタッフの組織に対する忠誠心は落ちてきているのが現状です。また逆に、企業や組織もその人の"立場"を長く保証するという時代でもありません。もとより、安定していない「自分も部下」という立場を強調して叱ったとしても効果は疑問です。しかし部下も、「自分にとって何らかのメリットがある」ということがわかれば、言われたことに対する受け取り方も変わってきます。望ましい行動はどういったものかを説明し、そうするとどのような結果が生まれるのか、というメリットを伝えることも効果的でしょう。
逆に、立場を論点に持ち出すと問題の本質がぼけてしまいます。叱る時はあくまでどの行動が、どういう理由で問題なのか、という点にフォーカスすべきです。つまり、「君の立場を考えると好ましくない行動だった」といった指摘の仕方では伝わらないのです。実際に理解できていないことが原因で問題が起きたのですから、「課長であるお前が何をしてるんだ!!」などと言ったところで、あまり変わりはないのではないでしょうか。
ましてや、上司の立場をふりかざして怒ったりしてはいけません。「お前のせいで、いったいどうしてくれる。俺の立場はどうなると思ってるんだ。上になんて説明したらいいんだ」などと言っても、部下は心の中で「そんなの知るか」と舌を出しているのが関の山でしょう。
執筆者プロフィール
佐藤高史 (Takashi Sato)
株式会社コラージュ代表取締役。ビジネスコンサルタントとして人事教育・研修プログラムを数多く開発。著書「最強のプレゼンテーション完全マニュアル」(あさ出版)。
『出典:システム開発ジャーナル Vol.4(2008年5月発刊)』
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。