ビジネスにならず
前回、システム開発の道からWebコンテンツプロバイダーへ方向転換を図ろうとしたきっかけ、地域情報サイトを立ち上げたお話をしました。しかし、営業的には失敗だったのです。
というのも、筆者は収益モデルとして、Webサイトとフリーペーパーを通じて地域社会との結び付きを持ち、地域内の小さなIT需要(企業やお店のWebサイト作成など)を数多くすくい上げて会社で請け負うことでビジネスとして成り立たせようと考えていました。しかし、見込みが甘すぎました。
媒体としての読者数を増やせても、どうしてもそこで止まってしまい、その先のIT需要の喚起までにはつながりませんでした。それ以前に、媒体の制作業務で手一杯となり、ビジネスへとつなげる仕組み作りに力を注ぐことができませんでした。
また、予算不足で充分なスタッフを確保できず、企画・記事執筆・写真撮影・各種段取りをすべて筆者が担当し、加えて広告の飛び込み営業も行っていました。これでは早晩手が回らなくなって当然です。
結局、半年ほどでサイトは閉鎖、フリーペーパーは廃刊となります。残ったのは赤字のみ。まったくの失敗です。
失敗、そして反省
今から考えれば、新しいビジネスを始めるために必要なマーケティング、予算調達、人や資材などの確保といった準備をほとんどしていませんでした。そして圧倒的に不足していたのが営業力です。例えば、フリーペーパーに掲載する広告に関しては先発のグルメ情報誌などが競合しています。
競合誌は飛び込み営業スタッフを多く活用し、ローラー作戦で営業をかけていました。事実、私が訪問したお店では、同じ情報誌の違う営業スタッフが週に何度も入れ替わり飛び込みで訪れたそうです。これではまったく歯が立ちません。
そうして出た結論は、ネットビジネスへ移行するのは時期尚早ということ。本業のシステム開発に回帰することに決め、筆者も社長兼SEとして開発の現場に戻りました。それでも決算2期目は大幅赤字となり、役員報酬を大幅に引き下げることになりました。筆者自身は経営判断を誤った責任をとって前年度より半分近く引き下げました。
しかしながら筆者は、すべての失敗は成功への糧になると信じています。近い将来、当社は改めてネットビジネスへ乗り出そうと考えていますが、きっとこの経験は無駄にならないでしょう。
次回は、システム開発を再始動してからの求人、採用の苦労と社員のモチベーションを高めるために心がけていることなどについてお伝えします。
執筆者プロフィール
雨宮 国和 (Kunikazu Amemiya)
株式会社ウイルワークス・システムズ代表取締役社長。十数年に渡るエンジニア経験を経て2002年に会社を設立。最近はバイクにハマる42歳。Bar好き。
http://www.willworks.co.jp/
『出典:システム開発ジャーナル Vol.4(2008年5月発刊)』
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。