転身のきっかけ
起業してからの1年間は、私も含めた創業メンバー全員がエンジニアとしてフルに働き、何人かの契約社員を抱えて一応の売上と利益を確保しました。ただ筆者の心の中には「今までと同じ路線のビジネスをいつまでもやりたくない」という気持ちと、「このままでは競合他社との差別化ができずに会社を発展させることができない」という焦燥感が絶えず渦巻いていました。
また、ITバブル崩壊の影響により、ITサービス業界での案件数が激減している状況でもあったため、現状維持に対する相当な危機感を持ち始めました。
「今までと違うことをしなければ生き残れない」真剣にそう思いました。そこで筆者が思いついたのが、Webサイトと紙媒体のフリーペーパーを組み合わせた地域版コミュニティーメディアです。
筆者はエンジニアとしてずっとシステムの開発に従事していましたので直接ユーザーとビジネスをする機会がなく、コンシューマー向けのサービスを提供してみたいという思いがありました。
地域情報サイトの立ち上げ
そうして2004年に「日本橋ネット」というWebサイトを立上げました。サイトの概要はこうです。まず地域を限定し(この時は会社のあった日本橋)、地域情報サイトを立ち上げます。
サイトのコンテンツは、その地域にあるすべての公共施設や企業などのサイトへのリンク集。これはURLの電話帳のようなものなので無料で掲載します。そしてレストランなどの情報は「ご飲食情報」として業態・地域ごとに分類、検索できるようにして、お店の写真や情報を低料金で掲載します。他には「企業情報」として地域内にある企業の情報を、これも低料金で掲載しました。
ただ、これだけではメディアとしての面白さがないので、「日本橋を学ぶ」「日本橋を遊ぶ」「日本橋七福神めぐり」など、写真を交えて楽しい記事を多く載せるようにしました。また、Webサイトへの誘導媒体としてフリーペーパーも作りました。こちらは「日本橋ネット」の内容をフリーペーパー用に再編集し、月1回・数千部発行しました。誌名は「日本橋ネットかわら版」。
そして、2004年1月25日にWebサイトのオープンとフリーペーパーの創刊を同時に行ったのですが、いくつかのネット媒体と新聞に取り上げられ、それなりに反響もありました。
しかしながら、営業的には大失敗だったのです。続きは、次回お話します。
執筆者プロフィール
雨宮 国和(Kunikazu Amemiya)
株式会社ウイルワークス・システムズ代表取締役社長。十数年に渡るエンジニア経験を経て2002年に会社を設立。最近はバイクにハマる40代。Bar好き。
http://www.willworks.co.jp/
『出典:システム開発ジャーナル Vol.4(2008年5月発刊)』
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。