前回は会社設立手続きを済ませて事務所を開設したところまでをお伝えしましたが、今回は会社の生命線である取引先(顧客)をどのようにして確保していったのかをお伝えします。
最初の営業
当初の取引先は、筆者自身がフリーランスのエンジニアだった際に契約をした実績がある2社のみでした。それまで「会社対個人」で契約していた関係を、「会社対会社」の取引関係に切り替えただけです。それが一番手っ取り早く確実な方法だったのです。その2社から請け負うことができたいくつかの案件に、筆者も含めた創業メンバー4名がそれぞれ参加しました。
筆者はこの時期、かなり焦っていました。このままの状態で取引先を増すことができなければ起業した意味がありません。それどころか、会社形態にしたことにより発生する事務所賃貸料などのコストが重くのしかかることになります。システム開発の業務に従事しながらも、日々取引先開拓について色々と頭を巡らせていました。
そんな時、社員の1人が参加していたネットワーク運用の案件が、契約形態が複雑な多重請負構造であることを知りました。ユーザーである某通信事業から弊社に至るまでの間に、何と4社も会社が介在していたのです。この案件は、当然ながら単価も低く抑えられていました。
筆者は早速行動を起こしました。この社員に頼んでユーザー側の責任者とアポを取り、自社のWebページをプリントアウトしただけの簡単な会社案内を持って打ち合わせに臨んだのです。筆者は先方に対して、のっけから直接取引を行いたい旨の話を切り出しました。
ビジネスマナー違反
これは今から考えれば、完全なビジネスマナー違反です。ただ、当時の筆者はそんなことも気付かないほどの「営業の素人」でした。焦りが生んだこの行動は、当然間に入っていた会社の知るところとなり、大騒ぎとなりました。特に2次請けの会社に至っては、元請けの会社に対して自社の社員だと偽って参画させていたことがバレてしまい、「損害賠償を起こす」と憤慨していました。もちろん、この会社には損害賠償を起こせるような法的根拠などありません。
しかしながら迷惑をかけたことは事実ですので、中間に入っていたそれぞれの会社に謝罪に回りました。その時救いの手を差し伸べてくれたのが元請けのA社でした。
A社の担当部長は私の説明を聞くと、2次請け以降の会社にこの件については不問に附すように通達を出し、筆者にはあらためてA社と直接取引をするようにと勧めてくれたのです。
執筆者プロフィール
雨宮 国和(Kunikazu Amemiya)
株式会社ウイルワークス・システムズ代表取締役社長。十数年に渡るエンジニア経験を経て2002年に会社を設立。最近はバイクにハマる40代。Bar好き。
『出典:システム開発ジャーナル Vol.3(2008年3月発刊)』
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。