小さな出航
筆者は「会社=船」という考え方を、たびたび比喩的に用います。この比喩の意味については次回以降で述べますが、私たちの「起業=出航」はささやかなものでした。創業時のメンバーはわずか4名。全員が社員であり役員、そしてエンジニアでもあります。
当時は株式会社の最低資本金の制限がありましたので、4名で資本金1,000万円を出し合い、登記上の本社は筆者の自宅。経費節約のために、会社設立に関わる一切の手続きは筆者自身が行いました。会社設立手続きは、手間さえ惜しまなければ自分ですべてできます。行政書士などに頼めば20~30万円ぐらいはかかりますので、後は自分のふところと考え方次第。
筆者としては、会社設立の一切を自分で行ったことは、会社が1つの法人格として社会に認められていく過程を皮膚感覚で身に付けることができたので、その後の会社運営にも役立っていると思っています。
固定費は安く抑える
自宅が事務所では打ち合わせもままならなかったので、事務所を探すことになりました。会社が軌道に乗るまでは、家賃のような固定費を極力抑えようという方針でしたので、JR神田駅の近くにある古い事務所を借りました。
事務机が1つと会議卓、中古で入手したファイルキャビネットをいくつか置くと、もうスペースは一杯という状況です。それでもここは数年間使っていました。さすがに今は広めの事務所に移転していますが、見かけよりも内容で勝負という気持ちは今も変わっていません。
さて、登記上会社として認められ、事務所を開設しても、それはあくまでも形ができただけ。実際に営業を開始して収益を得てこそ、始めて会社として機能したと言えます。それにはまず、取引先(顧客)の確保が最優先です。次回は起業直後の営業活動について、失敗談も含めてお伝えします。
執筆者プロフィール
雨宮 国和(Kunikazu Amemiya)
株式会社ウイルワークス・システムズ代表取締役社長。十数年に渡るエンジニア経験を経て2002年に会社を設立。最近はバイクにハマる40代。Bar好き。
http://www.willworks.co.jp/
『出典:システム開発ジャーナル Vol.2(2008年1月発刊)』
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。