幸福になるための装置として
会社の方向性とは別に、社内にも目を向けて、社員やその家族、そして会社に関わる人たちが皆幸せになれるようにして行きたい。そんなことも考えています。
企業というのは、『人が幸福になるための装置』として一番効率が良い形であると筆者は思います。人は歴史上、幸福の追求のために様々な組織、形態を模索して来ました。そして現時点での最良の結論として「企業」と言う形態が選択されたのではないでしょうか。
もちろん、企業がいつでも人を幸福にしているかと言うとそうではありません。最近では度重なる食品偽装問題、そして以前からある公害や薬害の問題……不幸な事件の加害者となっているのが企業であるということも事実です。
しかし、企業というのは組織の1つの形態であり、その組織の最小構成要素が「個人」であるということであれば、すべての原因はその「個人」にあると思います。企業を生かすも殺すも「人」次第なのです。
筆者は会社に「技術と創造力で社会に影響を与える創造的企業となる」というビジョンと共に、「会社の発展と社員の幸福の希求を両立する」というポリシーを持たせています。
そしてそのポリシーを実現するために、本稿でお伝えしたような試みや努力を行っていますが、まだまだ力不足で実現の道は遠いといったところです。
"起業"という選択肢
最後にこのコラムのタイトルである「ITエンジニア"起業"という選択肢」は、本当に良い選択なのかを筆者なりの考えでお伝えします。
結論としては、「筆者にとっては良い選択だった」と言えると思います。強い願望を持って起業、会社経営に臨んだわけではない筆者にとって、起業後のこの数年間は自身の人生においてとても大きな意味を持つ経験となりました。
経営者は、自身の選択・行動による結果に対してすべての責任を持つことになります。また、会社という組織の長であるということは、社員や会社、そして社会に対しても大きな責任を負います。
これが筆者の意識を大きく変えました。これからもますます、難しい道を歩くことになるでしょう。でもそれは筆者にとって、自身の力を試すことができる大きな楽しみでもあるのです。
起業、会社経営に関しては、特別な能力は必要ありません。強いて言えば、困難な状況に直面しても前へ進もうとする推進力。そして、苦しい立場となった場合でも耐えられる耐久力。そのぐらいです。
ですから、もしこのコラムを読んで"起業"に挑戦したいと思ったら、自身の将来の選択肢の1つに「起業」と言うカードを一枚加えてみてください。きっとまた新たな展望が開けてくるのではないかと思います。
執筆者プロフィール
雨宮 国和 (Kunikazu Amemiya)
株式会社ウイルワークス・システムズ代表取締役社長。十数年に渡るエンジニア経験を経て2002年に会社を設立。最近はバイクにハマる42歳。Bar好き。
http://www.willworks.co.jp/
『出典:システム開発ジャーナル Vol.6(2008年9月発刊)』
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。