本コラムは、サラリーマン・エンジニアだった筆者がシステム開発会社を起業するまでのお話です。今回は、試行錯誤の結果行き着いた人材採用の方法、会社の成長に不可欠な求人・採用にまつわる苦労話をお伝えします。

なかなか人材を採用できなかった筆者は方法を変え、社会人向けのIT専門学校卒業者の採用に注力することにしました。

都内にあるIT専門学校に足を運んで卒業生の紹介をお願いしたのですが、ほとんどの学校が派遣会社などと提携していて最初は門前払いに近い対応ばかり。それでもいくつかの学校と提携することができ、現在まで何人もの人材を採用するに至っています。

この採用方法には大きな利点がありました。社会人向けの学校ですので、卒業生は他業種などでの就業経験があり、必要なビジネススキルは身に付けています。また、職種を変えるということに本人も相当な覚悟を持って臨んでいますので、仕事に取り組む意欲は高いものがあります。このようにして採用した人材は、当社でも入社後1~2年でエンジニアとして飛躍的に成長を遂げています。

とはいえ、採用にあたっては工夫をしています。数ヵ月に一度ある外部の会社説明会では、必ず社長である筆者が説明を行います。他の会社は人事担当者が来る場合が多いので、社長自ら会社説明を行うことは会社に興味を持ってもらう上でとても効果があります。

参加者が一番知りたいのは、自分がどのような形で業務に携わり、エンジニアとしてスキルアップできる会社かどうかということです。エンジニアだった筆者自身の経験も踏まえて話をすることで、就職や会社に関する不安を払拭し、採用につなげることができていると思っています。

もう1つ重要なことは、社員の育成です。この点については、できる限りのコストと労力をかけるように心がけています。

まだ自社内で充分な教育設備を持つには至っていませんが、新卒採用時の入社研修については提携するIT専門学校の研修プログラムを用意し、入社後も外部の技術研修プログラムを会社の費用負担で受講できる制度を用意しています。資格についても、会社が推奨する資格については受験料、書籍代も含めて全額会社負担です。

筆者が研修とあわせて気を付けているのは、社員のスキルアップを考慮したプロジェクト配属です。

筆者は、社員全員が自身の仕事にモチベーションを高く持って取り組める環境が大切であると考えています。ですから、経験や能力を踏まえ、より一層ステップアップできる仕事を本人と相談しながら決めて行きます。

これは正直に言うとかなりしんどい作業です。タイミングの問題もありますので、なかなか思い通りにはいかないものですが、それを本人の希望や今後のキャリアプランを考慮しながら調整するのですから、難しくて当然です。ただその後、本人がモチベーションを上げて仕事をしてくれていると、とても嬉しく感じます。

ビジネス的な判断もありますから、すべてがうまくいくとは限りませんが、社員と会社の双方が納得できる選択肢を見つけるために最大限の努力をすることで、社員と会社の想いの乖離を生まないようにしたいと常々考えています。

執筆者プロフィール

雨宮 国和 (Kunikazu Amemiya)
株式会社ウイルワークス・システムズ代表取締役社長。十数年に渡るエンジニア経験を経て2002年に会社を設立。最近はバイクにハマる42歳。Bar好き。

『出典:システム開発ジャーナル Vol.5(2008年7月発刊)
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。