「恥ずかしかったけど、やってみると面白かった」

アクセンチュア マーケティング・コミュニケーション部 マネジャー 後藤邦彦氏

一般に、男女のコミュニケーションは異なると言われています。例えば、男性のコミュニケーションでは結論が重視される一方、女性は話を聞いてもらうことが大切だそうです。こうした違いは当然、会社のコミュニケーションの場にも持ち込まれるはずですが、お互いそのことを理解していれば、コミュニケーションもスムーズにいくのではないでしょうか。

女性社員と男性社員におけるミスコミュニケーションをなくすことを目標に、上司となる管理職のトレーニングを始めたアクセンチュア。具体的には、上司役、部下の女性社員役、オブザーバー役の3者によるロープレイングを行うことで、女性社員とのコミュニケーションについて学びます。

そのトレーニングを実際に受けた後藤さんは昨年1月に中途入社したばかり。アクセンチュアでダイバーシティに関連するマーケティング・コミュニケーションを担当したこともきっかけとなり、その本質を知り、理解が深まるようになったそうです。トレーニングを受けた感想を後藤さんは次のように話してくださいました。

「男性マネジャーが女性の部下役を演じるのですが、最初はちょっと恥ずかしかったです(笑)。でも、女性の立場になって考えてみるためにできるだけ入り込みました。私のグループでは全員が上司役、部下役、オブザーバー役のすべてをやりましたが、それぞれの立場に立って考えられるので、ロールプレイをするうちに、徐々に深い見方ができるようになりました。"実際に自分が部下だったらどう思うかな?"とか、"自分が上司だったら、こういう言い方はマズいかな?"とか考えさせられたり、オブザーバー役の時には客観的に見ながら冷静に指摘をしなくてはいけなかったりと、勉強になりました」

「コミュニケーションのとり方はお互いの関係に慣れてくると忘れがちですが、改めてその重要性を認識できました」と話す後藤さんのトレーニングに手ごたえを感じている様子に、ますます興味が湧いてきました。

トレーニングを受けた上司は変わったか?

アクセンチュア マーケティング・コミュニケーション部 中須藤子氏

さて、トレーニングを受けた上司を持つ中須さんの反応が気になります。「上司がトレーニングを受けた結果、ピンポイントで"あ~これが良かった!"っていう実感はまだありませんが(笑)。ただ、会社がダイバーシティは大切だと公言した上で、費用と時間をかけて真剣に取り組んでいるので、社員を大事にする会社なんだなぁという安心感が湧きました」と中須さん。

さらに、彼女はこう続けました。「ダイバーシティは抽象的なので、実際ダイバーシティを推進するために何かをするとなると、各個人の価値基準に左右されてしまうのではないでしょうか。だから、会社が一定の線を引いて"最低限これは守りましょう"というルールを決め、それに沿って人材を育てていくということが大事だと思うんです。会社が社内で(意図せず)傷つく人がいない状態を作り上げていこうとしていることはすごく助かります。」

少し前まではダイバーシティに力を入れているというと進んだ会社に思えたものですが、これから先ダイバーシティは最低限守られるルールへと進化していくのだろうということを、中須さんの言葉から実感しました。

女性管理職向けトレーニングの要望もあり

同社人事部の岩下さんは、「実際のところ、ダイバーシティに関するケースは職場によっても、社員によってもさまざまです。よって、トライ&エラーを繰り返しながら学んでいくことのほうが多いかもしれません。今後は、社内全体のバランスをとりながら、全社一律の取り組みだけでなく、各職場の状況に応じた取り組みに広げ、社員能力が100%生かされる環境を社員と一緒に作っていきたいと考えています。」と笑顔でまとめてくださいました。

今のところ、男性管理職対女性社員のコミュニケーションに関するトレーニングのみ実施されていますが、その逆の女性管理職対男性社員のトレーニングも設けてほしいという声も上がっているとのこと。「男性バージョンのトレーニングが行われたら、どんな反応があるのか?」など、同社のトレーニングの今後が気になります。

またインタビュー中は、コミュニケーションを大切にし、男女、上下を飛び越えてストレートに意見を言おうという「トーク ストレート」を社風とするアクセンチュアならではの和やかな雰囲気を感じました。もっと書きたい面白い話(番外編?)もあったのですが、今回はこの辺で終わりにしたいと思います。アクセンチュアの皆様、ご協力ありがとうございました!

左から後藤氏、中須氏、人事部の岩下氏

執筆者プロフィール

藤城さつき(Satsuki Fujishiro)
コンピュータ関連業界で働く女性のためのコミュニティ「eパウダ~」を運営。男性が多いこの業界における女性の人間関係・働き方・生き方について日々模索中。株式会社タンジェリン 代表取締役。