女性比率が増えつつあるとはいえ、まだまだ男性社会と言われるITエンジニアの世界。仕事の内容や技術力に男女差はなくても、女性エンジニアには女性特有の悩みが尽きないはず。女性エンジニアの生の声を探るべく、女性エンジニアの方たちに集まっていただきました。初めのテーマは、女性にとって大きなターニングポイントである「結婚と出産」です。

今回、座談会に協力いただいたのは、次の4人の女性エンジニアの方たちです。皆さん、同じエンジニアといえど、年齢・職種などは異なります。

A美さん。システム開発に携わって15年、開発の全体像や限界、会社における自分の立場が見えてきて、ここ5年ぐらいは開発から退いている。自分のやりたいことと会社の方針のギャップに悩んでおり、今後はどのようにすれば自分が生かせるかどうかを思案中

B代さん。肉体労働系・請負常駐プログラマー生活で聞いた「社内システム開発=楽園」という噂を信じて転職し、現在はRFP作成に関わる業務に従事。就職して初めてできたゆとりのおかげで入籍やら結婚式を一気に終え、育児と仕事を踏まえた今後の生き方について模索中

C子さん。男性だらけの職場でのプログラマー経験を経てSEに。現在は見積りや予算、スケジューリングを考慮しなくてはいけない業務に奮闘中。出産を経ても今の仕事を続けることができるのか? 自分の体力に合った解決策を探している

D奈さん。PHPをメインに扱うフリーのWebプログラマー。フリーではいつまで仕事が続くか自信がないので、再就職も視野に入れて将来を考え中(この歳&子持ちで職があるかな~)。ピアノ初心者ですが、最近弾いてないのでバイエル後半からやり直しになりそう

--女性にとって大きく生活が変わるイベントと言えば結婚です。女性エンジニアの中で結婚はどのような位置付けにあるのでしょうか?--

A美 私は元々あまり結婚願望がない方ですね。事務職の女性だと、ある程度の年齢に達したら結婚するのが暗黙のルールとなっている会社が少なくないと思いますが、「みんなが結婚しはじめたから、私もそろそろ結婚しなきゃ……」なんて考えなければいけなくなるのがイヤで、エンジニアという職を選んだところがあります。でも、同世代の女性エンジニアは出産して辞めてしまった人が多いですね。私は女性の先輩と話すのが好きなんですが、今はそういう相手も少ないです。

B代 私は最近結婚したのですが、以前は結婚なんて考えられないくらい忙しくて。「これはまずい!」と思って転職しました。転職して少し落ち着いたので、ようやく入籍しました。周囲に女性の先輩が少ないのは私も同じ。会社からは「君が後輩の目標になってほしい」なんて言われるんですけど……。

C子 女性の先輩はいても、上司はほとんどいないですよね。後輩も結婚や出産を機に辞めてしまう人が多くて。でも、残っている女性エンジニアは向上心があって、さっぱりした、面白い人が多くて楽しいですよ。

A美 各年代に1人くらい、子育てを終えても現役で頑張っている女性エンジニアがいるけど、大抵は旦那さんもこの業界の人ですね。事情をわかってくれて協力的な旦那さんがいないと仕事を続けていくのはつらいのかなと思います。

C子 業界内恋愛も多いですよね。8割くらいそうなんじゃないかな? やっぱりパートナーが同じ業界だと理解がありますよね。

--妊娠、出産を期に退職する方が多いようですね--

B代 子供ができてからも今の仕事を続けられるかというと、難しいと思います。例えば、今の職場はオフの時間、それも夜中でも、メッセンジャーなどを使って仕事について意見交換をする風潮がありますが、子供ができたらそうもいかないでしょう? 子供ができたら、独身の頃と同じ調子では働けないし、働いてはいけないとも思うんです。

A美 この業界は多いですよね、夜でも休日でもどっぷり仕事のことを考えているっていう人が。

B代 周囲がそういう人ばかりだと、他の人と同じことができない自分が悪いような気がしてしまいます。仕事とプライベートのバランスがうまく取れればいいと思うのですが、女性の上司はバリバリやってきた人ばかり。「君がそういう人になればいいよ」と言ってもらえても、目標がないと難しいです。

C子 最近は産休や育休などの制度が充実してきていて、子供を持った女性が仕事を続けることも増えてきましたが、それでも不安はありますよね。本当に職場に復帰できるのか、在宅で仕事をすることができるのか、自分の体力で家事や子育てと並行して仕事が続けられるのか……解決策を探している状態です。

D奈 手に職をつけたいからエンジニアになったという人は多いのですが、実際に戻ってくる人は少ないですね。1年ブランクがあるとIT業界に戻ってくるのを諦めてしまうんです。
私が以前いた会社では、産休や育休を挟んで復帰する場合、元のエンジニアの仕事をさせる部署と、事務職に異動させる部署がありました。エンジニアとして復帰できる部署の上司は「仕事をする上で、男女差やブランクは関係なく、仕事ができるかできないかが大切。できる人にはブランクを埋める努力をしてもらえばいい」と言っていました。

C子 うわー、いい職場ですね!

『出典:システム開発ジャーナル Vol.6(2008年9月発刊)
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。