樹脂材料などを基に設計形状を再現する3Dプリンタは近年急速な成長をみせています。かつて1台数百~数千万と非常に高価でしたが、一台数十万円代から手に入る製品の登場や省スペース化により、多くの企業が注目しはじめています。そんな3Dプリンタを導入することで設計現場では試作品を手軽に作成できるようになり、大幅な時間短縮ができます。
また、3Dプリンタは3次元データを基に造形を行うため3次元CADが広く普及した今、設計を効率化するのに適したシステムになります。このように3次元設計環境で大きな効果を発揮する3Dプリンタを、より快適に活用をするためには適したCADの選定が必要になります。
3Dプリンタ活用に必要な機能を備えたSOLIDWORKS
3Dプリンタを使用する上でCADシステムは造形品の基となる3次元モデルを作成する重要な役割を持ちます。そのため単純な設計・モデリング以外にさまざまな機能が求められますが、SOLIDWORKSは各種機能を備えています。
ファイルのエクスポート機能
ファイルのエクスポートでは多くの3Dプリンタで使用される(.stl)形式へ出力できます。ほかのシステム・ツールを用いることなく直接3Dプリンタ用のデータを作成できるため、即座に試作作成が行えます。
CADデータの品質チェック
3Dプリンタ側でデータを読み込む際、正確な形状を認識できないなどのエラーを避けるため、CADデータの品質(PDQ)を評価する「エンティティチェック」、「ジオメトリチェック」機能が搭載されています。データ出力前にエラー原因となりうる形状の有無をCAD上で確認・修正し、3Dプリンタで使用できるデータを作成します。
造形時の問題に配慮したCAD機能
3Dプリンタによる造形では正確な形状を再現しづらい場合への対処もCAD上で行う必要があります。
ヒケ・ソリを避ける中空化処理
中身の詰まった塊形状ではソリやヒケといった変形が生じやすくなりますが、SOLIDWORKS「シェル」フィーチャーにより、モデル内部を中抜きし簡単に中空化にできます。外形上が複雑な場合でも、「組み合わせ:除去」フィーチャーによりマルチボディで除去する領域を指定し、モデル内部の中抜きが行えます。
薄肉部位の有無を検証
部品内に極端に肉厚の薄い部位がある場合も正確な形状が再現されにくいため穴が開いてしまう問題が生じますが、「厚み分析」機能を用いることで、事前にCAD上で問題となる肉厚の有無を確認できます。
造形時のサポート材に配慮した分割処理
不要なサポート材が作成されないよう1部品を複数に分けて造形する場合、「部品分割」フィーチャーにより容易に1部品を複数ボディ、ファイルに分けられます。
効果的なレビューを可能に
3Dプリンタ作成の試作品に加えSOLIDWORKSの各種拡張機能の併用することで、設計変更が必要な箇所や製品の安全性、試作品使用時の様子、製品完成時のイメージなどをより正確に把握できるため、より精度の高いレビュー・設計検討を行えます。
機能 | 詳細 |
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SOLIDWORKS Simulation | CAD上で部品・アセンブリを対象にした構造解析により強度計算を行い、製品の安全性能を評価。 |
SOLIDWORKS Motion | アセンブリを基に機構解析を行い、製品使用時の駆動の様子などをシミュレーション。 |
PhotoView360のご紹介 | CAD上で設計データを使用して写実的なレンダリングイメージを作成。 |
3Dスキャナを活用するための「ScanTo3D」
実在の製品を測定し3Dデータを生成する3Dスキャナも性能向上が進み、ものづくりの現場で注目されています。3Dスキャナの活用により設計データ作成の負担を軽減し、3Dプリンタの活用により設計検討に要する期間を短縮できるため、どちらも設計の大きな効率化を果たすことができるシステムとして多くの企業が導入を検討しています。
しかし、3Dスキャナの活用にはCADシステムに3Dスキャナの計測データを読み取る機能が必要になります。SOLIDWORKSでは、拡張機能「ScanTo3D」により点群・メッシュデータの取り込みができます。必要に応じて点群・メッシュを修正し、サーフェス・ソリッドボディをウイザード形式で半自動作成することができるため、だれでも簡単に3Dスキャナのデータを活用できます。
3Dスキャナ、3Dプリンタ、どちらも実物の部品・製品を設計に活用するための装置になりますが、SOLIDWORKSではそれぞれの装置を効果的に使用できる設計環境が提供されます。
(本稿はCAD Japan.comより提供を受けた記事を編集したものです。)