昨年11月に米国でもスタートしたTwitterのサブスクリプションサービス「Twitter Blue」。Googleで「Twitter Blue review」と検索すると、以下のような懐疑的な、または落胆したというレビューが並ぶ。
- Twitter Blueに月額3ドルの価値はあるのか?(Engadget)
- Twitter Blueを試してみました、皆さんは必要ないでしょう(Android Central)
- 月3ドルの支払いで、Twitterの使い勝手は良くなるのか?(Slate)
- 始まったTwitter Blueに落胆した理由...(MUO)
しかし、Twitter Blueが残念なサービスなのかというと私は月額2.99ドルの価値はあると感じていて、うまく導けたらこれから大化けする可能性もあると思っている。ただ、サブスクリプションが嫌われる典型的なパターンにはまっているのも事実で、今回は約4カ月使ってきて実感したTwitter Blueの悪い点と、その可能性について紹介する。
Twitter Blueに対する一般的な評価が低い理由は「Twitterはアプリの基本的な改善をBlueの有料枠に制限するべきではない」というThe Vergeのレビューが的を射ている。
Twitter Blueを契約すると、「ツイートの取り消し」「ブックマークフォルダ」「リーダーモード」「カスタムナビゲーション」「限定アプリアイコン」「広告なし記事」のほか、Twitter Blueラボ機能として「長尺の動画のアップロード」「1080p動画のアップロード」「NFTプロフィール画像」が利用できるようになる。
Twitterはそうした豊富な機能をアピールしているが、盛り沢山の機能が歓迎されるとは限らない。基本無料のTwitterで、ユーザーが有料サブスクリプションを契約する判断基準になるのは「無料サービスでは得られない体験」である。例えば、「広告非表示」は広告に頼る無料サービスでは不可能なことであり、広告を煩わしく感じている人は広告非表示のためによろこんで有料プランに加入する。Blueの開発が噂になっていた頃、Twitterユーザーがもっとも期待していたのはタイムラインからの広告非表示だった。
ところが、Twitter Blueの機能は「ツイートの取り消し」や「ブックマークフォルダ」のような、無料サービスにも提供した方がTwitterのエコシステムの利益になりそうな機能ばかり。有料であるべき機能がほとんど含まれなかった。言い換えると、機能豊富でもユーザーが有料サブスクリプションを契約する理由が乏しい。Twitter Blueの登場によって無料サービスの向上が鈍りそうな恐れも相まって、Blueに厳しい視線が向けられた。
では、なぜ私がTwitter Blueを使っているかというと「広告なし記事」だ。唯一の無料サービスでは実現できない機能であり、それだけに月額2.99ドルを支払っていると言っても過言ではない。
「広告なし記事」は昨年5月にTwitterが買収したScrollの機能で、広告ベースで無料配信されている記事を広告フリーで読めるサービスだ。Twitter Blueネットワークに参加する媒体の記事のツイートに、[Twitter Blueで広告なしに]というラベルが表示され、それをタップまたはクリックするとパブリッシャーのWebサイトで広告なしの記事が開く。
記事にバナー広告が表示されないだけではなく、記事が迅速にロードし、そしてオリジナルの体裁を崩すことなく読みやすいレイアウトで表示される。記事を快適に消費できる体験になっているのも大きなポイントだ。Blueネットワークには、The Atlantic、Billboard、Business Insider、BuzzFeed、BGR.com、Eater、HuffPost、Salon、Los Angeles Times、Rolling Stone、Slate、USA Today、VOX、The Washington Postなどが参加している。
これまでにもFlipboardのようなモバイルデバイスに最適化して読みやすくニュースを提供するサービスはあったが、Twitterならその場で記事の話題に関する自分の考えをリツイートしたり、メディアの投稿にコメントするといったことが簡単だ。情報のインプットとアウトプットを同じ場所でこなせる。また、Twitter Blueには「話題の記事」というフォローしているユーザーによって過去24時間に最も共有されているトップ記事25本がリストされるセクションが用意されている。自分のネットワークの中で注目すべき話題を簡単に把握できるのもTwitterならではのユニークな体験である。
ニュース配信/消費を変える可能性
ニュースや話題を追う方法というと、20年前は新聞とテレビの報道番組が主流だった。それがインターネットの普及で一変した。Wall Street JournalやNew York Timesのようにいち早くデジタルに適応した媒体は読者の変化に対応でき、それができなかった、またはやらなかったメディアは活字読者の減少と共に衰退している。テレビのニュースもテレビを見る人の減少に直面している。Nielsenのレポートによると、2021年のニュース専門ケーブル局の視聴率はCNNが前年比38%減、Fox Newsは34%減、MSNBCは25%減だった。かつてのように朝やプライムタイムにテレビでニュースをつけっぱなしするのが家庭の普通の光景ではなくなりつつある。
その一方で近年、ソーシャルメディアがニュースを効率的に追う方法として台頭し、今や米国人の71%がソーシャルメディアネットワークからニュースを得ているという。そんなに多いのかと思うが、寝る前や起きた後、仕事が一段落した時、時間が空いた時にスマートフォンを手にする頻度を考えると納得だ。
ただし、ソーシャルメディアはニュースを見つけて共有する方法としては優れていても、快適に消費できる方法とは言いがたい。Twitter Blueはそれを一連の快適なニュース体験にまとめ上げている。加えて、Twitter Blueのパブリッシャーのネットワークがニュースのキュレーションのようにも機能し、信頼できるソースからのニュースを読むことを促す。アクセス数を稼ぐために疑わしい情報を流すニュースソースとそれを拡散するソーシャルメディアの問題の対策にもなっている。
TwitterはTwitter Blueからの収益の一部をBlueネットワーク内のパブリッシャーに還元しており、各パブリッシングパートナーが広告付きで配信するより1人あたり50%多くの収益を上げられるのを目標としている。TwitterとScrollの相性は非常によく、Twitter Blueのニュース体験を考えると、ユーザーとパブリッシャーの間のプラス循環は決して不可能ではないように思う。
しかし、残念なことにTwitterは豊富な機能のお得感を強調してBlueを展開している。結果、ニュース配信とニュース消費を大きく変えられる可能性が、Blueの表面的な機能群の中に埋もれて見過ごされてしまっている。