カーシェアリングのUberとLyftがそれぞれ「Jump」と「Motivate」を買収して、自転車シェアリングに参入した。中でもUberはUberアプリにJumpを統合して、近くにいるUberの車とJumpの自転車を1つのアプリから確認してライドを予約できるようにしている。

Uberによると、自転車シェアリング (Jump)を使った人は、それまでカーシェアリングを使っていた移動にJumpを使うようになる傾向が強い。それはUberの本業であるカーシェアリングの利用率低下を意味するのだが、Uberはその変化を大歓迎している。

  • Jumpのアプリも引き続き提供されているが、カーライドと共に使えるUberアプリからの利用が便利

それはUberがMediumで公開した「Understanding multimodality: An analysis of early JUMP users」で明らかになったもので、同レポートはサンフランシスコ市における5カ月間のUber+Jumpの統合効果に関するデータを紹介している。

5カ月の間に、Uber Bike by Jumpを初めて使用してからのライダーのライド数は15%上昇した。その多くはJumpの利用によるもので、Jumpも使い始めたライダーのUber利用は10%の減少だった。この傾向は特に道路が混雑する時間帯に顕著で、週日の午前8時から午後6時だとUber利用は15%減になる。サンフランシスコ市では放置自転車対策として、Jumpの電動アシスト自転車がわずか250台に制限されており、需要に応じて自転車の供給を増やせれば、車ではなく自転車を選択するUberユーザーがもっと増える可能性が高い。

Uber+Jumpユーザーの動向で明らかになったのは「使い分け」だ。Jumpの利用の69%は午前8時〜午後6時に集中し、それ以外の時間帯だとUberの利用が54%に達する。大雨になったある金曜日のJumpのライドは、金曜日平均を78%も下回り、Uberライドが40%上昇した。ユーザーは通勤時間帯など道路や公共交通機関が混雑する時間帯にJumpをよく利用し、雨の日や夜にはUberを活用している。こうした使い分けをUberはマルチ・モードと呼んでいる。

「快適で信頼性の高い自家用車と、1つの代替モードだけで競争するのは難しい。1つのモードで全ての状況に対応するのは不可能である。だから、人々の脱・自家用車を実現するには、公共交通機関、自転車、自転車シェア、カーシェア、ライドシェア、ウォーキングといった複数のモードの連係が必要になる」

Uberの目標は、Uberのカーシェア/ライドシェアにより乗ってもらうことではなく、都市の混雑や車による環境への影響を緩和し、人々の移動を効率化することだ。だから、Uberライドが減少しても、同社はJumpライドの増加を歓迎している。

  • 250W Class 1モーターを備えたJumpの電動アシスト自転車

Uberのレポートを読むと、レンタル自転車やレンタル電動スクーターが順調に成長しているように思うかもしれないが、それらのサービスは今、成否の分かれ目を迎えている。今年の春には色んなところに駐車されていた電動スクーターがしばらく前にサンフランシスコの街から消えた。電動スクーターに乗り慣れていない人による事故、放置スクーターなどに関して多数の苦情が市当局に寄せられ、許可制へと移行したためだ。最初の許可が下りるのは8月になる見通しだ。

日本に比べて米国では公道を使って新しいことを始めやすく、だから電動スクーターや電動スケートボードのような新しい乗り物や、電動スクーター・シェアリングのような新しい移動サービスが次々に登場する。それゆえに混乱も起こりやすく、競争に打ち勝とうとした業者によって、ある日突然、大量の電動スクーターが街にばらまかれるというようなことが起こる。「まずばらまき、うまく運んでから許可申請」、公共交通に関することでこの順番は完全におかしいのだが、「やってみてから考えよう」というアプローチのおかげで、スタートアップでも大きな成功をつかめる。

サンフランシスコにおける電動スクーター・シェアリングが全面禁止ではなく、市当局が規制に乗り出したということは、苦情を訴えた人達だけではなく、電動スクーターを求める人達も相当いたということだ。「ばらまいて、やってみた」段階を経て、電動スクーター・シェアリングは「考える」段階に到達した。電動スクーター・シェアリングの長所を残しながら、ばらまき期間に表出した問題を解決できるバランスのよい規制は可能なのか。台数制限が設定されたら、空いているスクーターの場所までしばらく歩くというような不便をユーザーが強いられるようになるかもしれない。それによって使われなくなる可能性もある。逆に、それを乗り越えるほどユーザーのサービスを存続・機能させたいという気持ちが強かったら、迷惑にならない場所または充電できる場所に適切に駐輪するというようなモラルが広がり、問題解決のプラス循環が起こり得る。電動スクーターや自転車のシェアリングが、新たな移動オプションとして定着すると期待できる。

そうなったらUberの言うマルチ・モードの価値が現実味を帯びるし、マルチ・モードに適した新たな都市デザインという未来も展望できるようになる。