スーパーボウルのスポット広告が最も高額なTV広告であるように、米アメフト・プロリーグNFLの試合はドル箱コンテンツであり続けてきた。そのNFLの視聴率がここ数年伸び悩み、昨年に大きく下落した。ただ、昨年の場合は週末ごとに米大統領選のニュースに国民の関心が向いたため、その影響を少なからず受けたはずだ。そこで、今年の数字に注目が集まっていたが、開幕からもうすぐ一カ月、前年比で視聴者数が10%を超える落ち込みが珍しくない。回復どころか、下落に歯止めがかからない状態である。

ただ、NFLだけが不振なのではなく、多くのスポーツのライブ中継が苦戦しており、「NFLですら不振」というのが正確だ。では、何が原因なのか? ネットでも試合中継が行われるようになった影響もあるが、それを考え合わせても落ち込みの幅が大きい。

この問題に関して、AXIOSが「Live sports audiences are getting older」と指摘している。スポーツ中継の視聴者の高齢化である。

たとえば、NFLの試合中継視聴者の中央値は2000年には44歳だったが、2016年は50歳である。他のスポーツも、MLB (メジャーリーグ)が52歳 (2000年)から57歳 (2016年)、ボクシングは45歳 (2000年)から49歳 (2016年)、オリンピックは45歳 (2000年)から53歳 (2016年)、レスリングは28歳 (2000年)から54歳 (2016年)と、いずれも上昇している。

スポーツ中継視聴者の年齢中央値、2000年から2016年の変化。米国は人口に偏りがなく、スポーツ中継の視聴者の高齢化が顕著

若い層がスポーツに関心がないかというと、サッカーの中継は比較的若い層に見られている。しかし、若い世代はTV放送よりもクラウドDVRサービスなどを使えるストリーミングを好み、それ以上にソーシャルメディアなどに配信される"まとめ"が人気だ。関心はあるけど、数時間におよぶ試合中継には付き合わず、10分程度でハイライトと雰囲気だけを効率的に楽しむ……というのが、YouTube世代のスポーツ観戦だ。

AndroidのGoogle Nowでも、フォローしているチームのスコアと共にハイライト映像が配信されるので、短時間で昨晩の試合をチェックできる

NFLの中継の平均視聴者数が低迷しても、広告売上高は年々順調に伸びている。ストリーミングやオンデマンドの需要が高まっていて、TV放送の下落分が相殺されるか、今は様子見の段階だ。それに広告主の多くはスポーツ中継に流す広告からネットに視聴者を引き込んだり、TV放送向けの広告をネットでも提供するなど、TVとネットをうまく組み合わせたマーケティングを展開している。ただ、スポーツ中継の昨年の規模の落ち込みは想定外であり、今年も下落が続いたら厳しい交渉を強いられることになるとRecodeは指摘している。

比較的若い人たちがサッカーを見ているとはいえ、視聴者年齢の中央値は39歳である。では、18歳~25歳のもっとも若いグループはどんなスポーツを見てるのか。それとも、全く見ないのか?

18~25歳が番組コンテンツを見るのはTV放送ではなく、オンラインである。Limelight Networksが行ったサーベイ調査によると、オンラインビデオの視聴で、18~25歳ではeSportsがスポーツを上回った。eSports、つまりゲームプレイの配信である。

ゲームは自分でプレイして楽しいもの、他人がプレイするのを見るだけなら「大したコンテンツにはならない」と言う人が少なくないが、自分もプレイしている競技 (ゲーム)で、うまい人の技やアイディアを見るのは楽しいし見飽きない。その点では、従来のプロスポーツの試合観戦と何ら変わらない。むしろ、eSportsの方が誰でもプレイしやすく、PCを使うのでTwitchやYouTubeのような動画共有サービスでプレイビデオを共有しやすい。また、様式化されたスポーツ中継に比べて、ゲームプレイ配信には様々な試みがあってエンターテインメント性が高い。

Dota 2 Championship

「eSportsはスポーツか」という議論は、ここでは置いておくとして、同じ自分の時間を使って番組コンテンツを見るなら、18~25歳はスポーツではなくeSportsを好む。言い換えると、18~25歳の年代層に限って言えば、eSportsはスポーツを上回るビジネスになっている。