Twitterがタイムラインの表示を根本的に変えようとしているという報道から論争が広がった。現在のタイムラインにはフォローしている人たちのツイートが時系列順に並ぶが、新しいタイムラインにはユーザーが関心を持ちそうなツイートをTwitterが選んで優先して表示するという。つまり、価値の高い情報を効率的に入手できる方法になる。
それを改悪と見るTwitterユーザーから不満の声が噴出し、TwitterのCEOであるJack Dorsey氏が以下のツイートを行った。
We never planned to reorder timelines next week.(来週、タイムラインの並べ替えを実行する計画はない)
否定とも違う微妙なコメントである。
そしてThe Vergeがスクリーンショットも交えて、テスト版の新しいタイムライン表示の動作を解説する「Here’s how Twitter’s new algorithmic timeline is going to work」という記事を公開した。それによると、新しいタイムライン表示はTwitterが1年前に導入した「前回アクセスから今までのツイート」機能を拡張したような機能である。タイムラインを開いた時に、最後にアクセスしてから長い時間が経っていたら、それまでのハイライトを簡単に確認できるような並び順になる。タイムラインをプルダウンして更新すると現在と同じ時系列表示に戻る。頻繁にタイムラインにアクセスしていたら、最初からより時系列に近い並び順になる。そして、この機能を使うかどうかはユーザーがオプトアウトできる。
噂の新しいタイムライン表示は存在しているが、それはタイムラインを根本的に変えるようなものではなく、Twitterはこれまで同様に時系列の並びを重んじているようだ。
情報発信のサービスから情報収集のためのサービスに
新しいタイムライン表示の狙いがアクティブユーザーを増やすことであるのは言うまでもない。
Twitterの昨年7月~9月期決算は、売上高が前年同期比58%増だったにもかかわらず、平均月間アクティブユーザー(MAU)の伸びが市場の予想を下回って株価が下落した。IPOを果たしてからずっと同じ調子であり、MAUの伸び悩みがTwitterの見通しを曇らせている。だから、Twitterはアクティブユーザーを伸ばすことに懸命である。
では、なぜMAUの伸びが減速したのか。Twitterがマイクロブログであるのが大きな原因の1つに挙げられている。Twitterは”情報を発信したい人”にとって便利なツールであり、手軽なブログを開設するような感覚で利用する人たちによって成長してきた。しかし、世の中ブロガーばかりではない。積極的に情報発信する人への普及が落ち着いて、それがMAUの伸び悩みに現れた。
そこでTwitterは、Twitterをリアルタイムの情報を収集するためのツールに変え始めた。つまり、ブロガーではなく、読者にとって便利なツールにすることでアクティブユーザーの増加を狙っている。昨年の「前回アクセスから今までのツイート」機能もそうだし、「Moments」というTwitterスタッフがキュレーションするニュース/情報サービスも始めた。新しいタイムライン表示も情報収集のためのツールとしての強化の一環と言える。
ただ、これまでのMomentsに対する反応や、今回の新しいタイムラインに対するキビしい意見から予想すると、それらによってMAUの伸びがすぐに改善するとは思えない。手段を誤っているとは思わないが、Twitterの厳しい現状を好転させるきっかけにはなり得ない。
では、このままTwitterは失速していくのだろうか。Twitterは、自身の大きな可能性を上手く引き出せずにいるように思う。この1年を振り返ると、Twitterの動きで市場から最も歓迎されたのは、広告ツイートサービス「プロモツイート」を非ログインユーザーに表示する機能のベータ版テストを発表した時だった。ログインせずにTwitterページを使用している非ログインユーザーが数億人規模で存在し、Google検索にツイートが表示されるようになってから増加の一途である。そうしたTwitterユーザーに広告ツイートを提供する。
MAUが伸び悩んでいると言われるが、Twitterは3億人を超える人々からのリアルタイムのデータやインテリジェンス、メディア消費などを分析できるユニークな存在である。それが最も優れたコンシューマデータの1つであることは投資家やアナリストも認めており、たとえアクティブユーザーの伸びが鈍くとも、その価値を広告配信に結びつける方法を提案できたら、市場はそれをTwitterの可能性と見なす。
つまり、MAUの伸びで評価される土俵で戦う必要はないのだ。たとえば、Twitterのデータを活かした広告提供はTwitterの範囲に限られているが、それを広くWebに開放したらTwitterの評価は一変するだろう。売上高や営業利益率の伸びによりキビしい目が向けられるようになるものの、開発陣はすぐにMAUを伸ばさなければならないプレッシャーから解放され、利用体験の改善にじっくりと取り組める。Twitterがメディアサービスを目指すのであれば、それはスケーラビリティのビジネスであり、今もそしてこれからもオーディエンスの規模拡大のプレッシャーに直面することになる。もしデータサービスを目指すなら、開拓できる市場の規模で評価される。Twitterは後者に軸足を置いた方が好循環を生み出せると私個人は考える。