2年近くApple Storeのジーニアスバーで働いていたScotty Loveless氏のブログ投稿「The Ultimate Guide to Solving iOS Battery Drain (iOSのバッテリー浪費を解決するための究極ガイド)」が実用的と話題になっている。

Scotty Loveless氏はブロガーとしては無名の存在だったが、Daring FireballやThe Loop、Marco.orgなどApple関連のトピックを扱うブログが究極ガイドを取り上げたことでスポットライトが当たった。すぐに中国語、韓国語、フランス語、スペイン語などに翻訳されたものの、日本語がないので、ここで主な内容を紹介しよう。

iOS 7.1がリリースされた後、バッテリー浪費が増大したというユーザーの不満の声が報じられた。「iOSアップデート」→「バッテリー浪費増のクレーム」は、過去に何度か繰り返されてきたパターンだが、Scotty Loveless氏によると、99.9%と断言できるほどiOS自体がバッテリー浪費の原因になっていることはない。アプリと設定が原因であるケースがほとんどであるそうだ。

まず最初に、iOSデバイスでバッテリー浪費が起こっているかどうかをテストする方法。[設定]→[一般]→[使用状況]で「使用時間」と「起動時間」をメモする。スリープ/スリープ解除ボタンを押して端末をスリープさせて5分間待つ。そしてオンにしてもう一度「使用時間」と「起動時間」をメモする。正常にスリープしていれば、起動時間は5分増え、使用時間の増加は1分未満に収まっている。もし使用時間の増加分が1分を上回っていたら、バッテリー浪費が起こっているので以下の問題解決方法を試してみる。

  1. Facebookのバックグラウンド更新と位置情報サービスを無効に。
  2. バックグラウンド更新する必要のないアプリは、バックグラウンド更新を無効に。
  3. マルチタスク機能でアプリを終了するのを止める。
  4. 1-3までで問題が解決しない場合は、一時的にメールのプッシュ受信をオフにして様子を見る。
  5. 不要なプッシュ通知をオフにする。
  6. バッテリーの%表示を止める。
  7. 1-5までで問題が解決しない場合は、Apple Storeに行く。
  8. 携帯の受信が弱い場所では機内モードに切り替える。

補足説明すると、[1]Facebookアプリの電力食いはよく知られているが、バックグラウンド更新と位置情報サービスをオフにした途端に12%だったバッテリー残量が17%に跳ね上がる珍現象をScotty Loveless氏は確認している。

[3]iOS 7ではマルチタスク画面(ホームボタンを2度押し)でアプリの画像を指で押さえて上にスワイプすると、そのアプリを終了できる。そうすることでバックグラウンドで動作するアプリが減り、バッテリー消費を抑えられるように思えるが、実は終了させると再びアプリを使う時に全てをもう一度メモリに読み込むため、終了させない方がiOSデバイスは効率的にアプリを動かせる。メモリが不足したら、iOSは容量を確保するために自動的に不要なアプリを終了させるので、ほったらかしで大丈夫なのだ。

[4]については、必ずしもプッシュ受信が原因にはならないが、Exchangeで利用しているメール・アカウントの確認時に頻繁にループする現象が存在するそうだ。その場合、6時間以内でバッテリーがなくなってしまう。

[6]の%表示は、それ自体がバッテリー浪費するものではない。だが、神経質すぎる人は、たとえ正常に動作していても、数字が減っていくのを見て心配してしまう。そのうちにバッテリー残量の減りを確かめるためだけに、iPhoneを点けたりする。それでは本末転倒。精神衛生のために、思い切って%表示を止めてしまう。

%表示はバッテリー残量が正確に分かるけど、減っている印象を持ちやすいという

[7]はiPhone 5以上限定になるが、Apple Storeに最近、細部にわたってデバイスのバッテリー消費をチェックできる新しいツールが導入された。それを使えば、バッテリー消費の様子を細かく診断してもらえる。また[1]から[5]まで試して効果がない場合、バッテリー自体に問題がある可能性も十分に考えられる。

[8]携帯の電波が弱いところでは端末が電波を探すためバッテリー消費が増大する。気をつけなければならないのは、強い電波のWi-Fiに接続している時でも、もし携帯の電波が弱いと電話やSMSのために端末は携帯電波をつかもうとする。電話などが必要なければ、コントロールセンターで機内モードをオンにした後にWi-FiボタンをタップするとWi-Fiのみ使用できるようになる。

無名のブロガーに突然スポットライト

さて、「The Ultimate Guide to Solving iOS Battery Drain」公開後にScotty Loveless氏のブログのトラフィックが跳ね上がったそうだ。3日後にScotty Loveless氏が公開した「Overwhelmed」によると、Twitterの通知を切っておかないとうるさくて仕方がないほどになり、そして有名なWeb媒体からコンテンツ提携の勧誘も舞い込んだ。

有名なWeb媒体でも読まれるようになれば、名前を売るチャンスである。最初に話を聞いた時にはグラっと傾いたというが、個人媒体を成功させているShawn Blanc氏Marco Arment氏Rick Stawarz氏などの助言もあって、最終的に全ての申し出を断ってしまった。

「全てのポストを"Viral"に広めようとしたら、私は自分のブログを読みたくなくなるだろう。小細工やトレンディなタイトル、怪しい盗用で意地汚くページビューを稼ごうとするパブリケーションがたくさん存在する。これまで、そんな気持ちの悪いパブリケーションのことなど気にとめていなかったが、この数日はイヤでも考えさせられた」

Scotty Loveless氏のブログはMidiumではないが、Mediumに似たシンプルなスタイルであり、その成功はMedium登場以降の新しいブログの波を実感させる。

Evan Williams氏とBiz Stone氏が立ち上げたMediumは、Twitterのような爆発的な成功には至っていないものの、その思想は着実に広まっている。表面的に読者を驚かせてページビューを稼ぐのではなく、コンテンツの質、編集の質で勝負する。文字中心の記事が主役のブログに対して、少なからず成功に懐疑的な声が上がったが、「The Ultimate Guide to Solving iOS Battery Drain」のように価値のあるコンテンツは文字だらけでもたくさんの人に読んでもらえている。

加えてソーシャルメディアとの相乗効果で、今やたとえScotty Loveless氏のような無名の存在にも瞬く間に注目が集まるようになった。もちろんスポットライトが当てられたのはApple Storeの元ジーニアスという経歴だけではなく、表現力や文章力を含めて、Scotty Loveless氏が読者を楽しませる力を備えていたからで、それを証明した同氏が、コンテンツの質を捨てて、ただページビューを追求する理由はないのだ。