7-9月期の決算がほぼ出そろったが、AppleとAmazon.comは対照的な結果になった。「Appleは82億2000万ドルの黒字」、「Amazonは2億7400万ドルの赤字」、しかしAppleよりもAmazonの数字と内容の方を好意的に評価する声が散見されるのだ。

決算発表のたびに赤字転落の可能性を予測していた米Amazon.com。7-9月期の決算は、その言葉通りになった。売上高は138億600万ドルで前年同期の108億7600万ドルから27%も増加したものの、2億7400万ドルの純損失を計上した。同社の赤字は2003年以来のことだ。同期にはクーポン共同購入サイトLivingSocialへの投資の減損費用1億6900万ドルが含まれている。しかし、それを除いても1億ドルを超える損失である。Kindleをほぼ原価で販売する戦略が少なからず影響したのは明らかだ。これには厳しい目が向けられるかと思いきや、Amazon株は一時的に落ち込んだものの、週末明けには決算前の水準に戻り、そのまま上昇を続けている。

Amazon.comの株価推移チャート

Appleの7-9月期決算は、売上高が前年同期比27%増、純利益が同24%増だった。iPhoneの販売台数は同58%増、iPadは同26%増と、非の打ちどころがない数字が並ぶ。ところが、iPadの販売台数(1400万台)がアナリストの1700万-1800万台という予想を下回った……ただ、それだけで失望感が広がっている。例えば、TechCrunchのコラムニストMG Siegler氏は「Appleは、このタイミングでiPad miniをKindle Fireと同じ価格に設定しなかったことを後悔しているはずだ」と述べている。

Appleの株価推移チャート

AllThingsDによると、AppleがiPad miniを発表した翌日、199ドルのKindle Fire HDの売上が前週比3倍に跳ね上がったそうだ。iPad miniの価格が329ドルからと、発表前の噂よりも高かったためだ。

しかし、AmazonとAppleに対する評価を分けているのは小型タブレットの価格ではない。ForbesでPascal-Emmanuel Gobry氏は「(Amazonの赤字決算と)Appleの予想を下回ったiPadの数字を比べると、Kindle FireがiPadのシェアに食い込んでいる可能性が見えてくる (iPadの販売台数は、発表が現実味を帯びてきたiPad miniの影響を受けている可能性もある)。それが事実なら、数字以上に大きいことだ。これまでどのようなタブレットも、Appleのタブレット市場支配にくぼみを付けることができなかったからだ。数多くの挑戦者が現れたものの、ひと桁の市場シェアという穴すら空けられなかった。Kindleは、その状況を変えたかもしれない」。また「異なるフォームファクタ、異なる価格とビジネスモデル、独自のコンテンツとアプリのエコシステム……Kindle FireはiPadを真似なかったから成功した」とも指摘している。

Amazonは、その"攻め"の姿勢が評価されている。後追いやコピーではなく、独自性を持って小型タブレット市場でユーザーの心をつかみ取ろうとしている。一方Appleは、iPad miniにメインカメラを搭載するなどiPadと同じ機能を持たせ、iPad用のアプリを使用できるようにするなど、iPadであることをiPad miniの武器としている。その結果が329ドルという価格である。価格差は大きいものの、今のiPad市場の大きさを考えたら、iPad miniの成功は揺るがないだろう。しかしながら、このAppleの戦略は"守り"と受け止められている。

「まだ競争は始まったばかりだが、これらの業績から伝わってきたのは、果敢にタブレット市場に食い込もうとするAmazonの姿勢であり、ディフェンスに徹するAppleだ。どちらがスティーブ・ジョブズを継承しているかというと、ジェフ・ベゾスである」(Gobry氏)。

タブレットの脱獄がDMCA違反に

Library of Congressが28日に、3年に1度見直しているデジタルミレニアム著作権法 (DMCA)のセーフハーバー対象を発表した。今回はフェアユースの観点から、様々な議論を呼んでいる。例えば、スマートフォンの脱獄はセーフハーバーだが、タブレットは除外された。10月28日から、米国でタブレットのJailbreakはDMCA違反に問われる。ほかにもDVDのコピー、新しいスマートフォンのアンロック(2013年1月から)などがDMCA違反になる。

今回のセーフハーバー改訂は、エンターテインメント全般において、コンテンツのオンライン販売やクラウドサービスが主流になったと見なしているのが前回と大きく異なる。しかしLibrary of Congressにも迷いがあり、ユーザーはまだまだ移行の過程にあるから、改訂の内容が現実のユーザーにフィットしていない部分が多々ある。

今回の改訂を評価するわけではないが、DRMや囲い込みが認められやすいのが致し方ない面もある。音楽がそうであったように移行の時期は著作権が厳格に保護され、市場が安定したらフェアユースの環境(DRMフリーの音楽のオンライン販売)が整えられる。今は、2003年にiTunes Music Storeが登場した時のように新しいスタイルが試される時期なのだ。こうしたチャンスを逃さずに攻めているのも、今のAmazonに対する期待につながっている。