「GoogleはAndroidブランドと距離を置くようになる」
「Googleタブレットは"Google Play"と呼ばれるだろう」
MicrosoftでWindows Home ServerやWindows Phone 7を手がけたCharlie Kindel氏がブログで、Googleが自ら提供すると噂されているタブレットについて、"Google Play"ブランドで投入してくると予想している。書き込みのタイトルは「Google Will Abandon Android (GoogleはAndroidを断念する)」だ。
大胆すぎるタイトルだが、突飛な指摘ではない。Android搭載端末の数が増えるに従って、Androidの断片化が拡大している。それでもAndroidのシェアは順調に伸び続けている。断片化の何が不都合かというと、断片化が進むとGoogleが以前のようにAndroidコミュニティ全体をコントロールできなくなることだ。結果、混沌さが増している。ところが、その中からAmazonのKindle Fire (端末)/ Kindle (コンテンツ)/ Appstore (アプリストア)のような、Androidを採用した独自のモバイルソリューションが出てきている。しかもAmazonのAppstoreが売上効率でAndorid Marketを上回っていることが示すように、ユーザーはAndroidブランドよりも、自分たちの要望に応えるブランドや信頼できるブランドを受け入れている。
Androidは今や、複数のコミュニティやプラットフォームが存在できるぐらい大きい。Androidをコンシューマ向けのビジネスとして見た場合、GoogleはもはやAppleだけではなく、Androidコミュニティ内にも現れたライバルに対抗する措置も講じないといけない。だから"Google Play"という統合的なデジタルエンターテインメント・ブランドを立ち上げ、そこにAndroid Marketも統合した。
「Androidには、Googleのコントロールから外れた中途半端なブランドが錯乱している。もしGoogleが、ハッとするようなエンドツーエンドのユーザー体験を作り出し、タブレット市場で絶対的な存在となっているiPadと競合したければ、体験に関わる全てをコントロールしなければならない。彼らが十分に賢ければ(私はそうだと思う)、ブランドがユーザーインタフェース、デバイス、OS、アプリ、そしてサービスと同じ様にエンドツーエンドの体験の構成部分であることを、彼らは理解するはずだ」(Kindel氏)。
だから、GoogleはGoogleタブレットをPlayブランドでアピールすると予想している。そうなれば、GoogleはAndroidブランドを"ingredient brand (成分ブランド、例 : Certs with RETSYN、Intel Insideなど)"として扱うようになると見る。
Androidスマホのような地位を築けないAndroidタブレット
Androidの断片化を懸命に否定しているGoogleが断片の1つになるというのは、なんとも皮肉な話である。Googleタブレットの名称がPlayになるかはともかくとして、Androidの断片化は避けられないのだから、Androidの中にいくつかの確かなソリューションやブランドが並び立つ方向に進むというのは現実味のある予想だと思う。
個人的には、もし本当にGoogleの脱Androidブランドが起こるとしたら、それがGoogle"タブレット"から起こることに大きな意味があると思う。
AllThingsDのJohn Paczkowski氏が3月23日に、Consumer Intelligence Research Partners (CIRP)のデータを基に「Appleと同じぐらいiPhoneを売っている(家電量販大手)Best Buy」と伝えた。CIRPの調査で、米国でのiPhone販売におけるAppleのシェアは15%。通信キャリアのAT&Tは32%、Verizonは30%、Sprintは7%、そしてBest Buyが13%、その他(プレゼントなどで購入場所が不明)が3%だ。Paczkowski氏は、Best Buyの予想外の売上シェアに驚いているが、やはりこのデータを見て思うのは通信キャリアの圧倒的な存在感である。
通信キャリアとの関係作りなくして、モバイルフォン事業は成り立たないのが現状だ。Androidの場合、OEMの影響も受ける。Kindel氏は「ハッとするようなユーザー体験のためには……体験に関わる全てをコントロールしなければならない」としているが、それをスマートフォンで実現するのは難しい。しかしタブレットなら、思い通りのユーザー体験をデザインできる。
スマートフォンとタブレット、機能や見た目に共通点は多いが、背後にあるものは大きく異なる。それはApple製品も例外ではない。スマートフォンとタブレットの違いはAppleの基調講演での製品アピールやブランディングにもよく現れている。iPhoneの新製品を発表するとき、同社はiPhoneのターゲット市場がスマートフォン市場、そして15億台から20億台と見られる携帯電話市場全体であることをアピールする。一方でiPadの発表ではタブレット市場全体を示すことなく、それはiPadが切り開く市場であると説く。iPadは既存の市場に広がるデバイスではなく、純粋に新しい利用体験を示すデバイスなのだ。だからiPad 3=新しいタブレットではなく、そのものズバり「The new iPad (新しいiPad)」なのだろう。ちなみに8日にAssociated Pressが「Apple's 'iPad' is the only tablet people know」と、iPadがタブレットの一般名称になりつつあると伝えている。
タブレット市場の争いは裏返せば、ユーザー体験とブランディングの争いである。だからデバイスの性能や仕様の比較なら優位な製品もあったAndroidタブレットが、これまでiPadに大きく引き離されてきた。タブレットは今後、モバイルの主戦場になるだろう。販売台数の伸びという点でもそうだが、その勢力関係がタブレット端末だけで決まるものではないからだ。デバイス、アプリ、デジタルエンターテインメント、サービスなど、モバイルの総合的なユーザー体験が評価される場になる。