文字数制限のあるツイートの利用に欠かせない短縮URLサービス。その代表的なサービス「Bit.ly」の.lyはリビアに割り当てられた国別トップレベルドメイン(ccTLD)である。リビア動乱でカダフィ政権側が反体制活動封じの一環としてインターネット遮断に乗り出したことで、このままではbit.lyリンクが機能しなくなるのではないかという懸念が広がっている。チュニジアやエジプトでは民衆デモの組織にFacebookやTwitterが用いられただけに、ソーシャルなネットツールをスムースに機能させるサービスをカダフィ政権が無効化できるとしたら、なんとも皮肉な話である。
リビアへの民衆デモの飛び火が伝えられると、Q&AサービスQuoraに「反政府デモ対策としてカダフィがインターネットを切断したら、http://bit.lyリンクはどうなる?」という質問が投稿された。これにBit.lyのCEOであるJohn Borthwick氏が回答を寄せている。
「エジプトで行われたように、リビアでインターネットトラフィックがブロックされたとしてもhttp://bit.lyや他の.lyドメインには影響しない」(Borthwick氏)。.lyドメインは5つのDNSサーバで運用されており、それらすべての権威がオフラインになるか、またはempty responseを返さない限り、.lyドメインは解決不可能にはならないという。5つのうちリビア内にあるのは2つだけで、あとは米オレゴンに2つ、オランダに1つという構成だ。さらに同氏はBit.lyが、bit.lyリンクをj.mp(北マリアナ諸島のドメイン)リンクに書き換えても機能するオプションを用意していることにも言及した。たとえば「http://bit.ly/eVrqpL」には「http://j.mp/eVrqpL」からもアクセスできる。
.lyドメインの生存期間は最長28日間
たしかに原油価格の高騰を引き起こすほどの政情不安であるにもかかわらず、これまでのところ.lyドメインの障害は報告されていない。国別ドメインは着実に運用されているように思える。しかしながらBorthwick氏の楽観的なコメントに対して、インフラ専門家のKim Davies氏が「(エジプトやリビアのような)政府の命令によるインターネット遮断に、国別ドメインが影響を受けないという誤った信頼を与えている」と反論している。
Borthwick氏が信頼の根拠としているリビア以外の国に置かれた.lyのDNS権威サーバについて、Davies氏は「リビア国外の権威サーバはリビア国内の.lyレジストリからのアップデート取得によって機能している」と指摘。アップデート取得が滞れば、リビア国外の権威サーバは.lyドメインに関する情報提供を停止する。
リビア政府が同国内でインターネット接続を遮断したとしても、直ちに.lyのレジストリオペレーションに影響することはないが、その影響は次第に広がっていく。.lyドメインの場合、DNSサーバに情報が保存されるTTL(time to live)が2,419,200秒に設定されており、リビア国内のレジストリ遮断からリビア国外のDNSサーバで.lyドメインが機能する期間は「最長28日」になる。
0日-28日とは微妙な長さだ。Bit.lyユーザーが空白期間なくj.mpまたは他の短縮URLサービスに移行できたとしても、過去の重要なbit.lyリンクをすべて修正するのは難しそう。ちなみに2004年4月にICANNが.lyドメインの障害に対するコメントを出したことがあった。その時は4月7日にDNSサーバの1つが停止し、わずか2日後に他のサーバもオフラインになってドメインへのアクセスに障害が起こった。
今や.lyドメインはBit.lyのほかにも、Graphic.ly、Embed.ly、Trunk.ly、Letter.lyなどさまざまなWebサイトやサービスに広がっている。しかしリビアの現状を鑑みると、十分に信頼できるとは言い難い。語呂がいい国別ドメインはユーザーにとってわかりやすく、マーケティングに有効だが、情報のやりとりやサービスの継続性が問われる場合は、信頼に足る国のドメイン、なるべくそのビジネスが行われる国のドメインで運用されているものを選ぶのが得策に思える。トラブルの要因は政治問題だけではない。.lyドメインについては昨年10月にvb.lyが警告なしでリビア政府によって差し押さえられた。検索ページに用いられた女性の写真がリビアのイスラム法に反するというのが理由だった。ネットにおける言論/表現の自由が、すべての国で保障されるわけではない。ドメインを管理する国によっては、その国の法律や文化、宗教などに配慮する必要がある。