米GoogleがGmailの実験的機能を体験できる「Gmail Labs」を開始した。現在公開されている12の機能の中に「Email Addict (電子メール中毒)」というのがある。電子メール"チェック"中毒からユーザーを一時的に開放してくれる。クリックすると画面がブルーになり、「散歩、またはリアルワークをこなすか、スナックを……。15分で画面は戻ります」と表示される。その間、Gmailとチャット(Google Talk)機能を使えなくなる(リロードすれば元通りになる)。思わずニヤリとしてしまうジョーク機能だ。

「Email Addict」で15分間アクセス不能になったGmail

ニューヨークタイムス紙に掲載された「Lost in E-Mail, Tech Firms Face Self-Made Beast」という記事に、Basexが行ったインフォメーションワーカー調査が引用されている。それによるとインフォメーションワーカーの一般的な1日の使い方は、「生産的な作業」が25%、「ミーティング」が20%であるのに対して、「急を要さないメールやメッセージで仕事を中断された時間」が28%だという。1日の3分の1近くが生産的ではない時間でつぶされている。不要な中断で米国では年間に6,500億ドル以上のプロダクティビティの損失があるそうだ。これは大きい……。GoogleのEmail Addictも、あながちジョークとは言ってられない。

Intelにメールなしの日

昨年8月から米Intelがテキサス州オースチンとアリゾナ州チャンドラのオフィスで「Quiet Time」という試験プログラムを開始した。コンピュータで仕事をする時間の長いエンジニアとマネージャー合計300人を対象に、火曜日の午前中の4時間、電子メールとIMクライアントをオフラインにし、電話はボイスメールに転送、全てのミーティングや来客を断って、ドアや個人スペースの入り口に「Do not disturb (邪魔しないでください)」というサインを掲げてもらった。1人で仕事に集中したり、静かに物事を考える時間を作ったり、それが生産性やチームに与える影響を調べるのが目的だ。プログラム立案の理由として、頻繁なメッセージチェックによる仕事中断の問題も挙げられていた。

Quiet Timeを実施したチームは、さらに昨年10月に「No Email Day/ Zero Email Friday」を追加した。ノー電子メールと言っても、メールの使用が禁じられるのではない。直接話せる距離にいる人とはメールやIMを使わずに、なるべく直接会うか、電話でコミュニケーションしようという試みだ。Quiet Timeが中断を排して1人で集中できる時間を作るのに対して、No Email DayはメールやIMよりも密なコミュニケーションによる効率化や刺激を試そうというのだ。

さて米国時間の6月14日にIT@Intelのブログで、両プログラム参加者からのコメントを集計した結果が明らかにされた。Quiet Timeは、45%が生産性向上の効果を認め、71%が他のグループへの拡大を勧めた。「集中力が求められるクリエイティブな作業において受け入れられたのは予想通りだった」としているが、意外なことに人との交流に1日を費やすような職務の人からも1人で集中できる時間の効果が報告された。メールやIMを中断と思う意識が少なくても、集中して物事を考える時間の効果は大きいようだ。そのため現段階では、静かな時間を強要するのではなく、その効果を各個人が十分に理解した上で、それぞれが使い方を決めるのが効果的だと結論づけている。

一方No Email Dayは、効果ありが29%、他のグループへの拡大を勧めるという回答が60%だった。Quiet Timeに比べると低い数字だ。これは協力してくれたパイロットグループが席を離れたり、ミーティングに出席する頻度が高かったりしたのが影響したと分析している。つまりQuiet Timeのようにほぼ全てのタイプで効果が期待できるのではなく、1日中オフィスにとどまってデスクワークを続けるタイプ向けのソリューションということだ。Quiet TimeとNo Emai Dayを実施したチームは、今回の結果をマネージメントに説明し、さらに異なったタイプの社員グループやより大規模な実験を検討している。

まずは無意識のメールチェックを意識する

時々ダイヤルアップ接続の頃はもっと仕事に集中できていたよな……と思うことがある。常時接続では簡単にメールやWebブラウザを使えるので、コミュニケーションやリサーチ力はアップしたが、すぐにやるべき作業とは違ったことに寄り道してしまう。GoogleやIntelがメールチェック中毒を意識しているというのもよく分かる。

対策としてリアルな生活を反映させるという意見をよく見かける。1日に1度しか配達されない郵便を1日中チェックし続ける人はいない。ならば電子メールチェックも1日に1回は……ちょっと非現実的だが、仕事で使っているとしても「5分おき」や「15分おき」のチェックが必要ではない人は多い。新着メール確認を自分の仕事に集中できる間隔に設定するのは第一歩だ。またメールが送られてくるのは、自分が大量のメールを送信した後であることが多い。送信したうちの何割かがすぐに返信され、さらに返信という繰り返しが始まってしまう。集中したい時間を作るためにメールを一気に処理すると、逆に集中できなくなる可能性があるというわけだ。緊急を要するメールを除いては、送信のタイミングを図るのもテクニックである。

いずれにせよ、メールチェック中毒対策は自分がどの程度の頻度でメールをチェックし、どのくらいの時間をメールに費やしているかを知ることから始まる。GoogleはWeb検索やGoogle Readerで、ユーザーの利用時間を集計・分析するトレンド機能を用意している。Gmailにも"ちょっと一服"ボタンじゃなくて、同様の機能がほしいところだ。