米デパート大手のMacy'sが、全米の400店舗に小型家電製品の自動販売機「e-Spot」を設置すると発表した。販売されるのは14.99~349.99ドルの価格帯の製品で、iPod (shuffle、nano、classic、touch)、キヤノンのデジタルカメラ、SamsungのMPEGカメラ、Bang & Olufsenのヘッドフォン等々だ。クレジットカードを使って簡単に購入できるものの、製品を試すことはできないし、質問に対応できるスタッフも店内にはいない。しかもMacy'sでは返品を受け付けず、返品するにはトールフリー番号に電話した上で製品を郵送しないといけない。

Macy'sが導入するZoomSystemsのe-Spot

ネットではe-Spotを評価する声は見あたらず、「こんなの誰が利用するんだ……」という論調ばかり。例えばe-Spotが導入されているMacy'sのサンフランシスコ店は、Apple Storeのフラッグシップ店と200メートル程度しか離れていない。シリコンバレー南部のバレーフェア店も同じモール内にApple Storeが入っている。iPodだけが取り扱い製品ではないとはいえ、やはり主力である。それなのにApple Storeの目と鼻の先のMacy'sにe-Spotを入れているのだから、一体誰が購入するんだ……と思われて当然だろう。

Macy'sによると、今回の本格導入は2年間におよぶパイロット・プログラムを経て決定したそうだ。Macy'sの買い物客には、大手家電量販店のようにセールススタッフから声をかけられたり、製品の手に取るためにケースのカギを開けてもらったりするのを不快に思う人がいるという。Apple Storeにしても、雰囲気になじめなかったりするそうだ。e-Spotでは液晶ディスプレーを通じて、じっくりと製品の説明や機能比較を確認できる。セールススタッフからプレッシャーをかけられることもなく、自分のペースで購入できる点が、Macy'sの客層に好評だったという。

そう言えば、エンジニアのおじさんたちの聖地とも言えるエレクトロニクスショップFry'sでも、バレンタインデーになるとジュエリーとメッセージカードのセットを机に山盛りにしただけのコーナーが出現する。大ざっぱに売られているところが安心感につながるのか、意外と手に取る人が多い。苦手なものを買いやすくという意味では、あのジュエリー・コーナーとe-Spotには通じるものがあるかもしれない……。

Macy'sにとってデジタルガジェット市場は無視できないほどの規模になっているものの、専用コーナーを設置するほどではない。だから自動販売機というソリューションに至った面もある。それでもApple Storeがすくいきれないコンシューマを取り込めるのだから、自動販売機とて侮れない。

キャッシュバックだけではないLive Search Cashback

さて先週Microsoftが商品検索サービスから実際に購入したユーザーに現金割引を提供する「Live Search Cashback」を開始した。やはりキャッシュバックは魅力である。これは使ってもらえそうだと思ったし、その後も使い続けてみて、他の商品検索サービスとは異なる印象がさらに強まっている。

通常、商品検索サービスでは価格比較のほか、オンラインストアの信用度や製品の評価なども参考にしながら購入を検討できる。ユーザーレビューなどを確認しながら、実際に買い物しているように様々な角度から商品を比較できるのが面白く、この買い物体験の優劣がユーザーのサービス選びのポイントとも言える。Amazon.comは、その最たる例だろう。

ところがLive Search Cashbackは、とことんシンプルなのだ。効率的に価格を比較し、最も安いストアを見つけ出せるものの、評価機能やユーザーの意見を参考にする機能などはなく、買い物を楽しめるサービスではない。価格比較から購入までのユーザーインタフェースはシンプルで分かりやすく、スムーズに進む。その点は評価できるのだが、なんだかe-SpotでiPodを買うような気分になる。この淡泊さの理由がサービス内でパートナー企業を公平に扱うためだとしたら、Live Search Cashbackはまさに自動販売機的なサービスと言える。

個人的には、様々な意見を吟味した上で製品やストアを購入したいので、商品検索サービスとしてLive Search Cashbackには物足りなさを感じてしまう。ただユーザーの中には、Microsoftが認めたパートナーストアから最も安い価格を見つけ出せるだけで十分という人もいるだろう。これまでの商品検索に不安感を抱いていた人には、むしろLive Search Cashbackはのクリーンさが安心感につながるように思える。キャッシュバック・プログラムのようなビジネス的要素と商品検索サービスを統合する難しさがあったと思うが、自動販売機のようなシンプルさで提供できるているところは見事である。