日米の生活を比べると、米国でおすすめできるものの方が圧倒的に少ないのだが、郵便物の投函は米国の方が便利である。映画やテレビで、赤い旗のような形をした棒が付いたかまぼこ型の郵便箱を見たことがあると思う。自分の家の郵便箱に手紙を入れて赤い棒を立てておくと、「配達してもらいたい郵便物あり」の合図となり、配達の際に回収してくれるのだ。
大都市は別として、車移動が基本の街では通りに設置されているポストが少ないし、郵便局に行くにも車を出すことになるので、配達の際に郵便を回収してくれるのはありがたい。またオンラインショップ/サービスを利用する上でも便利だ。たとえば買った製品を返品する際には、送られてきた箱に返品用のラベルを貼って、配達の時に渡すだけだ。Webで予約し、郵便でDVDをやり取りするスタイルの映画レンタルサービスが米国で人気なのも、見終わったDVDを自宅の郵便受けに入れておくだけで返却できるからだと思う。ポストや郵便局で投函するというひと手間が必要なら、レンタルショップを利用するのと変わらない。その点で、米国の郵便の集配システムは、ローカルショップを持たないオンラインストアやオンラインサービスの成長を影で支える存在ではないかと思う。日本にはない、ちょっとしたサービスなのだが、その違いが様々なネットビジネスを生み出すきっかけになっている。
購入時に中古買取価格を保証
TechForwardという金融サービス会社が、そんな米国の郵便のメリットも活用した「Guaranteed Buyback」という新サービスを開始した。電子製品の中古買い取りを保証するサービスである。新品を購入する際にGuaranteed Buybackプランを同時に購入すると、その時点でTechForwardが算出した金額での買い取りが保証される。たとえば米国で399ドルで販売されているiPod touch 16GBモデルのGuaranteed Buybackプランは9ドルだ。これを購入すると、3カ月以内(220ドル)、3~6カ月(180ドル)、6カ月~1年(130ドル)、1年~18カ月(110ドル)、18カ月~2年(80ドル)で買い取ってくれるオプションが確定する。
対象各製品の買い取りプランはTechForwardのWebサイトで確認できるので、中古市場やオークションなどと比較しながら、じっくりと検討できる。TechForwardの価格予測エンジンは、複数の中古市場の統計だけではなく、製品トレンドや市場動向、新製品リリースのロードマップなどを加味し、「洗練された統計分析アルゴリズムを用いて、価値の下落ペースや転売価格を正確にはじき出している」という。たとえばiPodは9月初旬に新モデルが発表されるので、夏に近づくにつれて現行モデルの買取価格が下落する。色んな製品の買取価格をながめて比較するだけでもけっこう楽しめそうだ。
これまでパソコンやデジタル家電の購入はじっくり模様眺めが一般コンシューマのスタイルだった。Guaranteed Buybackのテンポラリーオーナーシップ(一時的所有)は、いわゆるコールオプションである。自動車のリースサービスに近く、パソコンや家電市場において、そのようなスタイルを一般コンシューマが受け入れるかは興味深いところだ。相場が動いてこそ有効なモデルであり、07年のように刺激的な製品が続々と登場すれば機能する。ユーザーが最新モデルを貪欲に求め、古い製品がきちんとリサイクルされる活発な状態を作り出すのがGuaranteed Buybackの狙いなのだ。アーリーアダプターや新しい製品に触れる人が増えれば、新しいテクノロジの進展にも加速がつくと期待できる。
コンシューマのリスクや面倒を軽減
Guaranteed Buybackの米国における身近なライバルはオークションサイトのeBayだ。同サービスでの落札価格に比べると、Guaranteed Buybackプランの買い取り価格の方が若干下回るようだが、買い取り保証という安心感がある。昨年のiPhone米国発売のようにリリースからわずか数カ月で100ドル値下げされたり、またはHD DVDプレーヤーを購入した直後にWarnerのブルーレイ一本化のようなことが起こったりしたとしても、Guaranteed Buybackプランで確定した買い取り価格は変わらないのだ。しかも製品を手放すときに、郵送用のボックスはTechForwardが用意し、送料は無料である。箱につめてラベルを貼って、配達員に渡したら完了だ。買い戻し価格は完動品であるのが条件だが、故障しても送料無料でリサイクルは請け負ってくれるので、それだけでも十分に検討の価値があるように思える。
「買い取り保証」という部分が目立つサービスだが、電子製品の買い換えやリサイクルにまつわるコンシューマのリスクや面倒を軽減するサービスになっているのが個人的にはうれしい。そのような部分がしっかりしているからこそ、Guaranteed Buybackという購入スタイルが純粋に検討されると思う。むしろ問題はパソコンや家電メーカーが昨年のような勢いを維持して、TechForwardの期待に応えられるか……だ。