米Plaxoが、今年の8月1日に「Pulse」(ベータ)を開始して以来の接続数の推移を11月19日に明らかにした。以下がそのグラフである。11月1日にGoogleがソーシャルサービスの共通API「OpenSocial」を打ち出したのをきっかけに急上昇している。
OpenSocialは大きな話題になっているし、PlaxoはOpenSocialの参加メンバーに名前を連ねている。とはいえ、発表と同時にPulseに、これほどはっきりとした変化が見られたというのは、正直……意外である。理由がまったく想像できないという興味から、この統計結果についてPlaxoに聞いてみた。
アンチFacebookの先鋒として定着
Plaxoは、もともとネット上でアドレスブックを管理・共有するサービスを提供していた。オンラインアドレスブックのPlaxoをハブにすれば、ユーザーが利用している複数のメールクライアントやIMでコンタクト情報を同期できる。またオンラインアップデート機能を用いれば、誰かが連絡先を変更すると、すぐにアドレスブックを共有している人たちに通知され、同期を通じて各種アプリケーションにも自動的に反映される。Pulseは、Plaxoの機能をアドレスブックからソーシャルサービスに拡大したもので、コンタクトの変更だけではなく、写真の公開やブログの書き込みなど、様々なソーシャルサービスでのアクティビティをアドレスブックのネットワークで共有可能にする。ソーシャルサービスをフィードするサービスという感じだ。Amazon.com、del.icio.us、Flickr、last.fm、MySpace、Twitter、YouTube、Windows Liveなど、数多くのサービスをサポートしている。
筆者は以前、Google Calendarで管理しているスケジュールをMacとPCで同期するためにPlaxoを利用してみたことがある。ところが、すぐにGoogle Caledarのサポートが打ち切られてしまった。Plaxoのうたい文句通りに動作すれば、便利なサービスだと思ったが、対象とするWebサービスの変化に振り回されて、残念ながらサービスが安定しなかった。
そのような状況を変えるためにPlaxoは、とにかくソーシャルサービスのオープン化に努めてきた。たとえば8月にPulseを開始した時には、ネットワークメンバーのソーシャルサービスのアカウントを統合する「Online Identity Consolidator」のコードを公開した。今では、すっかりアンチFacebookの先鋒と見られている。
マーケティング担当バイスプレジデントであるJohn McCrea氏によると、「ユーザーにとってオープンなソーシャルネットワークが理想であっても、ビジネスには当てはまらないのではないか?」「ソーシャルネットワークは本当にオープンになれるのか?」という点について、社内でも様々な意見があったという。だがビジネス分野を含めて、OpenSocialでソーシャルサービスにオープン化の流れができたと指摘する。またOpenSocialの発表と同時に、Plaxoが「OpenSocial is now live on Plaxo Pulse (OpenSocialとともに歩み始めたPlaxo Pulse)」と題した声明を通じて、バージョン0.5からの対応を打ち出したことで、OpenSocialをいち早く体験できる場として注目されたのが接続数の急増につながったと見る。
OpenSocial景気でサーバ発注
PlaxoはPulseの現在の成長が一時的なものではないと判断して、ハードウエアインフラの強化にもふみ切ったそうだ。大丈夫かな……と心配になるが、その根拠はOpenSocial景気ばかりではない。ソーシャルサービス市場が急速に拡大するなかで、ユーザーのソーシャルネットワークの規模が広がるばかりで、人同士の結びつきの品質が衰えている。クローズドなサービスの弱点も同社にとって追い風になっているというのだ。そこでPlaxoはソーシャルネットワークを再びコンパクトで強固なものに変えるために、Pulseに「Dynamic Profiles」という新機能を追加した。ビジネスコンタクトや友人に対して、それぞれに適したプロフィール設定(写真、経歴、コンタクト、コンテンツ等々)で対応できる。この機能に対するユーザーからの良好な反応も同社の自信となっている。ソーシャルネットワーク本来のメリットを求めるユーザーは、自身のデータとネットワークを自身で管理する手法を重視するようになるというのが同社の見通しであり、それがオープン化の流れの中で加速されると期待している。
米国時間の10日には、OpenSocialに参加しているLinkedInが開発者向けのAPI公開とプラットフォーム戦略について一部情報を公開した。こちらもユーザーと企業、関連サービスとの結びつきを強化する展開を考えている模様だ。