米『The Wall Street Journal』紙主催の「D: All Things Digital」でMahalo.comのサービス開始が発表された。「the world's first human-powered search engine (世界初の人の力を使った検索エンジン)」だという。一部では"Googleキラー"として話題になっている。

Googleをはじめとする今日のWeb検索サービスでは、検索ロボットがWebサイトをクロールしてインデックス化し、アルゴリズムとフィルターによって順位付けした結果が自動的に検索結果として並べられる。Mahaloでは、検索結果ページを人が作成している。現在、サービスはアルファ段階で、検索ぺージが作成されているキーワードは約4,000語。今年末までの10,000語突破を目標としており、そのタイミングでベータに移行するという。正式版は「ベータ開始から間隔を置かずに提供する」というが、目標とするサービスの完成まで5年を見込んだプロジェクトであり、現在は5カ月目の段階に過ぎない。

人気キーワードの上位20%はWeb検索の8割

Mahaloで検索するメリットはリサーチの効率性アップだ。検索結果には、キーワードの簡単な説明、関連性の高いWebサイトのトップ7、関連性の高いビデオやイメージ、関連検索キーワードなどが表示される。さらにキーワードのタイプに合わせて、製品レビュー、関連ブログ、メッセージボード、小売店リストなど、様々な項目が追加される。キーワードに関する重要なネット情報を検索結果1ページから把握できる構成で、ユーザーは検索結果を数ページにわたって丹念に読んだり、同じキーワードでニュースやブログ、イメージなどを検索する手間から開放される。

GoogleでもUniversal Searchへの移行によって、複数の検索サービスをまたがった検索結果を得られるようになった。そこでGoogleとMahaloで「cheesecake (チーズケーキ)」を検索したところ、GoogleではレストランチェーンのCheesecake FactoryのWebサイトがトップで、Wikipediaの"cheesecake"が2番目。さらにチーズケーキのレシピに関するリンクが別枠で3つ、結果ページの最後にチーズケーキの写真が2点表示された。

対してMahaloは、Wikipediaがトップで、続いてマーサ・スチュワートのレシピページが2番目。これとは別にチーズケーキのレシピへのリンクが別枠で7つ。Cheesecake Factoryは、「チーズケーキを入手する場所」という枠で、オンラインショップなどと共に紹介された。また、チーズケーキ作りに必要な用具やレシピ本を販売するオンラインショップへのリンクなども表示されており、単純にチーズケーキを調べるためならば、Mahaloの方が便利である。ただし、Cheesecake Factoryのチーズケーキというように、より詳細な情報を得ようとすると、Mahaloには検索結果ページが用意されていない。その場合、Googleの検索結果が表示されるのだ。

MahaloとGoogleで「Paris Hotels」を検索した結果。Mahaloでは主要なガイドやレビューサイトがトップ。さらにランクやタイプに分類されたホテル情報が続く

人の手によって結果ページが編纂されているため、Malahoで結果ページが用意・更新されるペースはGoogleなどと比べようがないぐらい遅い。ただ、Web検索ユーザーの80%は最も検索されるキーワードの20%に集中するため、対応するキーワードの数が少なくても、的確なキーワードをカバーしていれば、ユーザーは充実した結果ページから高い満足度を得られるというのがMahaloの言い分だ。そのため、基本的な言葉だけではなく、「JFK Airport Plot (NYのJFK空港を標的とした爆破テロ計画)」や、「Microsoft Surface」などタイムリーな話題のキーワードの結果ページもすでに用意されている。

Ask Jeevesを思い出させない努力が必要

Mahaloは検索エンジンと言うより、検索型ガイドと名乗るのが正確ではないだろうか。検索結果ぺージを見渡すだけでキーワードの意味や関連情報を把握できる点では、Wikipediaに近いサービスという印象も受ける。少なくともGoogleキラーというのは的はずれな見方で、ガイドの補足、そしてガイド作成の土台としてアルゴリズム型の検索エンジンは不可欠。キラーどころか、現時点ではGoogleなしでは成り立たないサービスだ。

気になるのはMahaloの登場が、人の判断と検索ロボットのどちらが優れているかという比較議論になっている点だ。Malaho自身が"Human-powered"を強調しているためかもしれない。またはインターネットが普及し始めた頃、人の手によって分類が行われていた検索サービスがアルゴリズム型の登場で一掃されてしまった過去を引きずっているのかもしれない。だが、アルゴリズム型のスピードと収集・分析力を分かりやすく伝えるために、人の力も利用するというのがMahaloの狙いである。たとえば「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」を見に行く前にシリーズ全体をおさらいしたい時は、GoogleよりもMahaloを使う方が便利だ。ストーリーの背景や特殊効果に使われている技術について詳しく調べるならばGoogleである。

GoogleとMahaloのどちらの方が便利かではなく、目的に応じてGoogleとMahaloを使い分けることで効率的な調べ物が可能になる。そこが今、Mahaloが登場する意味であり、その辺りをMahaloはもっと上手く伝えないと、Ask Jeevesの歴史を再現してしまうことになりかねない。