チーム営業には会議力が欠かせない
- トップ営業の個人技に頼るのではなく、チーム営業をすべき
- 営業部門、サービス部門、マーケティング部門が連携して提案をすべき
- 個人でなく、会社全体で提案活動をすべき
このようなチーム営業を求める声が聞こえるようになって久しい。その結果、どうなっているかというと……会議が増えているのだ。
こんな声をよく聞く。
- 会議にやたらと時間をとられる
- 目的が不明なダラダラとした会議が多い
- 何が決まったのかわからない会議がよくある
こんな状態では、チーム営業どころではない。
これまでの本連載では、良い提案には顧客との良い対話が大事であることを話してきた。ところが、社内会議が無駄に多かったり長かったりすると、顧客との対話の時間がなくなり、良い対話どころではなくなるという本末転倒なことが起こっている。
では、会議をなくせばいいのか? そうではない。会議の質を変える必要があるのだ。
そもそも、会議の本質は、この2点にある。
- 化学反応 … いろいろな人が集まったことにより新しいアイディアを生み出す
- 行動 … みんなで決めて、みんなでそれぞれの行動に移す
会議とは、本来は非常に付加価値の高い、難しい業務なのである。よって、会議の主催者/参加者が会議スキルを持っていないと、話が上手く噛み合わず、ダラダラ会議になってしまうのだ。
そういった会議の場で、
- みんなを巻き込み
- いろいろなアイディアを呼び起こし
- グイグイ引っ張る
ことができる人もいる。会議スキルを身につけているのだ。
チーム営業を推進するには、社内会議を変える必要がある。会議の参加者に「みんなを巻き込み」「アイディアを呼び起こし」「グイグイ引っ張る」人がいれば、また、参加者全員がそのような人であれば、チーム営業も本当の意味で機能していくのだ。
会議力がわかるチェックポイント
さて、自分が会議スキルを身につけているかどうかは、以下のような口癖があるかないかを考えればわかる。
- 今日の会議のゴールはなんだっけ?
- それ、論点ずれてない?
- 今は、収束じゃなくて発散でいいの?
- まずはホワイトボードで整理して、見える化しようよ
- 何でそう思うの? 判断基準は何?
もちろん、まったく同じ言葉を使っている必要はない。しかし、類似の言葉を、会議の場、もしくはその準備の場で使ったことがないのであれば、会議力が低いと断言してもよいであろう。
会議の特徴は、「いろいろな立場の人が集まって、ひとつの結果を生み出す」ことにある。いろいろな立場の人が会話をすると、自然と話は分散する。この分散を集中へともっていくことは自然に成しえることはできず、以下のようなことが必要となるのだ。
- みんなで会議のゴール(会議の終わり方)を共有する
- みんなで同時に同じ論点について話す
- 議題が収束しているときなのか、発散しているときなのか、みんなで意識する
- 話されている内容を聞き流さずに見える化し、みんなでちゃんと理解する
- 判断基準を、みんなで理解した上で合意形成する
良い口癖 - 「ゴール」と「判断基準」
今回は前述の5つの口癖のうち、「ゴール」と「判断基準」についてもう少し話を進める。
ゴール
ダラダラ会議が行われる最大の原因は、会議のゴールが不明なことにある。会議に呼ばれ、資料の説明を受けるも、「これって単なる情報共有なの?」「説明を呼び水に、いろいろと意見を言えばいいの?」「OKサインを出せばいいの?」と、どうすれば良いか困った経験はないだろうか。会議の主催者は、この会議の終わり方、すなわち会議のゴールを明示する必要がある。
また、会議のゴールを主催者が事前に意識していれば、以下のような工夫にも繋がっていく。
- 単なる情報共有の会議なら、会議時間をできるだけ短くできるように工夫する
- いろいろ意見をもらう会議なら、参加者の人数が多すぎないようにする
- OKサインをもらう会議なら、まずはキーパーソンを事前に個別に押えておく
「ゴール」という言葉を意識するだけで、ダラダラ会議は変わっていく。ぜひ、試してほしい。
判断基準
この間、電車に乗っていて、以下のような日能研さんの吊り広告に目が留まった。小学生がこんな問題を考えているのは、すごいですね。
現在、「選挙投票率の低さ」ということが問題になっています。以下の3つの施策のメリットとデメリットをあげてください。
1. 選挙権の18歳までの引き下げ
2. 投票者への商店街などで使える商品券の配布
3. 非投票者への罰則
我々は大人なので、この問題をもう一歩進める。問題を「首相のブレーンとしてベストの案を1 - 3の施策から選ぶ」「しかもベストの案を複数の人と会議の場で意思決定する」こととする。みなさんは、どうやって決めるだろうか。
「リーダーのAさんの意見で決める」「ご意見番のBさんの意見を加味して決める」……
このような人依存な決め方では、「みんなを巻き込む」ということは実現できない。意思決定の判断基準を明確にして議論を進め、会議参加者が納得できる決め方をする必要がある。
たとえば、
- 純粋に「投票率を上げる」ことを重視するのか
- 一段上の概念の「公正な選挙が行われる」ということを重視するのか
- 発生する「コスト」を重視するのか
- 実現するまでの「スピード」を重視するのか
- はたまた「内閣支持率」を重視するのか
このような判断基準をあぶり出していき、どの判断基準をどの程度重視するのかを話し合うことで本質的な議論がなされるのである。「私は1がいいと思う」「いや私は2だと思う」という平行線の議論ではなく、「私は『公正な選挙』という観点を最も重視すべきだと思うので1を推す」「いや私は『公正な選挙』も成しえて、『内閣支持率』にも良い影響のある2がいいと思う」「いや『内閣支持率』を考えるとどれもやらないことがいいのでは」など、より本質的(?)な議論ができるようになるのだ。会議参加者全員が「判断基準」を意識して会議を進めると、短い時間で深い議論ができるようになる。こちらもぜひ、試してほしい。
繰り返しになるが、会議は難しい。しかし、「ゴール」「論点」「発散・収束」「見える化」「判断基準」といった考え方を会議の参加者ひとりひとりが持てば、会議は大きく変わっていく。ぜひともこれらを意識して、社内の会議を変えていってほしい。
今回は、ビジネスの基礎スキル「聴く、考える、伝える」の総合スキルである「会議スキル」について紹介した。詳しくは弊社のビジネスコアスキル研修についての説明、弊著『1回の会議・打ち合わせで必ず結論を出す技術』をご参照いただきたい(書評はこちら)。
執筆者紹介
斉藤岳 SAITO Gaku
アビームコンサルティング プリンシパル。東京大学大学院農学生命科学研究科修了。コンサルティングファーム勤務を経て2001年にアビーム入社。新規事業立上げ、事業再編、経営管理、業務改革等のコンサルティング経験多数。また、「会議で結論を出す技術」「インタビュースキル」「ソリューション営業スキル」等の研修を行っている。主な著書に『1回の会議・打ち合わせで必ず結論を出す技術』など。