今回は小麦粉などを作っている沖縄製粉株式会社を紹介します。
沖縄製粉は小麦粉だけでなく、サーターアンダギーなどの沖縄郷土料理のミックス粉も作っている地域への貢献度が高い企業でもあります。製粉と数学のつながりのお話を、沖縄製粉株式会社 品質管理室の石川愛貴さんにうかがいました。
-石川さん、本日はよろしくお願いします。御社は教育活動にも力をいれているんですよね。
はい、沖縄製粉では夏休みに親子手作りパン・沖縄そば教室を開催しています。2011年、2012年の夏休み期間には、福島から沖縄に滞在している子どもたち向けに「手作りサーターアンダギー教室」を実施し、沖縄の食文化や郷土菓子をお伝えしました。
-郷土料理の食育ですか。すばらしい試みですね!
沖縄でも郷土料理を知らない子どもたちが増えているので、このような活動はとても大切だと思っています。私も子どものころに受けたことがあるんですよ。
-今、そのような活動に携われているというのは素敵な縁ですね。これからもぜひ続けていってほしい活動です。さっそくですが、小麦粉を製粉するということについてお聞きしたいのですが。
はい。小麦粉というのは用途によっていくつかにわけられます。パンをつくる強力粉、めん類をつくる中力粉、お菓子や天ぷらなどに使われる薄力粉などですね。
-料理をするときに使いわけますよね。
これは小麦粉に含まれるタンパク質、グルテンの量と質によって決まってくるんです。
小麦を製粉するときには、「調質」といって、水を含ませて製粉しやすいようにする工程があります。この行程において使われる計算式があるんですよ。目標となる水分値になるように加える水の量を決める式で、以下のようなものです。
-水を含ませるのですか。知りませんでした。水分値によって小麦粉の性質が変わってくるわけですね。
はい。できあがった小麦粉の水分が目標と大きく違っていたら、製粉しにくいだけでなく、おいしいパンや麺やお菓子ができなくなってしまいますからね。だから、製粉にとって重要な計算式なんです。
-ひとくちに小麦粉といってもさまざまな性質があるんですね。それぞれの小麦粉の性質をきちんと出すためにも、大切な数式ということですね。
料理に合わせてさまざまに使いわけなければいけませんからね。弊社の小麦粉は沖縄の郷土料理に合うものだと自負しております。
-ところで石川さんは数学がお得意でしたか?
算数・数学ともに大好きで、得意分野でしたよ。小学校に入る前から算数が大好きで、家族にたし算・ひき算の問題を出してもらって解いたりしていましたね。小学校に入ってからは、車に乗っているときに前の車のナンバーをかけ算の問題にしていました。勉強というより遊びの1つでした。
-車のナンバー遊び、あれは楽しいですよね! ゲーム感覚で計算の勉強ができるところもとても良いですよね。
なので、中学校にあがって数学になってもとても楽しく勉強できました。現在も仕事で役立っています。
私の現在の所属は品質管理室ですが、以前はミックス粉の開発などをしていました。ミックス粉の開発は小麦粉やお砂糖の割合を考えたり、材料費を計算したりしなくてはいけませんので「数字」は重要です。
こちらの写真は小麦粉・ミックス粉などの新商品やレシピ開発を行ったり、できあがった小麦粉をパンやお菓子にして品質を確認する際に使うオーブンです。最後は実際に作ってみなければわかりませんからね。
-開発にも携わられていたのですか。それはもう数学を多く使うことになるでしょうね。
ただ、暗算がそれほど得意ではないので、子どものうちにそろばん教室に通っていればよかったなと思いますね(笑)。
-でも昔から算数や数学が好きで、それを仕事にも役立てているなんて理想的です。製粉のお話、とても興味深かったです。石川さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。
小麦粉を目標とする性質に近づけるためにも、数式が利用されているということがわかりました。子どものころから算数・数学が得意だった石川さんは、社会でその数学を生かしているわけですね。
これからも郷土の料理を次世代につなぎながら、さまざまな学問の扉を子どもたちに提供してあげてほしいなと思いました。
今回のインタビュイー
石川愛貴(いしかわ あき)
沖縄製粉株式会社 品質管理室
沖縄県出身。
青森大学工学部生物工学科卒業後、2002年沖縄製粉株式会社入社。
研究開発室開発課を経て、2013年から現職。
このテキストは、(公財)日本数学検定協会の運営する数学検定ファンサイトの「数学探偵が行く!」のコンテンツを再編集したものです。
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