岐阜県美濃市に本社を置く株式会社エクシールコーポレーションは、ウレタンゲルや防振シートなどの高機能樹脂を扱うメーカーです。様々な分野で活躍する樹脂商品を作り出すエクシールコーポレーションと数学との関わりを、開発営業部部長の川島正規さんにお聞きしました。

—本日はよろしくお願いします。まずは御社の沿革や事業内容についてお聞きしたいと思います。

よろしくお願いします。エクシールコーポレーションはもともと和紙の会社でした。呉服札と呼ばれる、反物の値札を作っていたんです。ただ、時代とともに呉服の需要も下がっていきます。そこで、同じ紙を使って何かできないか、というところでラベル印刷に業種転換しました。そのうちに、何かシールに付加価値をつけたいということで、シールの表面に樹脂をのせたぷくっとした感触がある製品を作るようになったんです。その樹脂がウレタンだったので、ウレタンを追求するようになり、ゲルというものを作るようになったのが主な経緯ですね。

—美濃和紙って有名ですものね。伝統産業から化学産業へ転換したわけですか。

はい。ウレタンゲルが使われているのはとくに家具等の転倒防止剤などです。それと、わが社で代表的なのはこの人肌のゲルというものでして…触ってみてください。

—本当に人肌のような弾力ですね!

液体を混ぜ合わせることにより、化学反応でこのような弾力を出せます。私たちがゲルと言うときは、このような液体と固体の中間のようなものを指しますね。現在力を入れているのは粘着マットなどに使われる、靴の裏の汚れを取るような素材ですね。洗って何度でも使えるんですよ。

—御社の商品のなかでも、画面保護シートは特に有名ですね。驚異的な衝撃吸収力があるということなのですが。

「ぷよシート」ですね。開発時には金属板の下に加速度ピックアップをつけて、衝撃にかかる力を検証したんです。

—なるほど、加速度の比較で衝撃吸収力を検証できますよね。

何も貼っていないガラスの衝撃吸収度から、貼ったガラスの衝撃吸収度を割ったものを衝撃吸収度としています。

—開発のための実験には数学が必須ですよね。いかに効率よく検討材料となる数字を出していくかってことですね。「ぷよシート」を開発するきっかけはなんだったんですか?

スマートフォンのタッチパネルに、実際に押したときのタッチ感を求める声が多かったんです。それが開発の契機ですね。あくまで感覚なのですけど、感覚という曖昧なものを、数学を使って製品に落とし込むという点ではおもしろいと思います。

—なるほど、感覚も数値化できれば開発の時のデータに乗せることができますものね。

ゲルの比率を変えれば柔らかさの感覚も変わってきますからね。

—ところで、川島さんと数学との関わりや、数学を仕事に生かしていることなど具体的に何かあればお伺いしてもよろしいですか?

たとえば何か依頼を受けて、その依頼を検討するときなど日常的に使っていますね。依頼に沿って製品を作る際に型へ流し込むわけですけど、体積で重量計算をしなければならないですからね。お客様の用意した図面を見て必要な樹脂はどのくらいかをすぐに算出し、見積もりを出すわけです。そういうときに数学はとても重宝していますよ。私はもともと理系で、大学では航空工学を学びました。風洞を使った空力のしくみなどをよく実験していましたね。

—開発も営業もされている川島さんならではのエピソードですね。

お客様に商品のもつ特長を説明する時にも数学は必要ですからね。先ほどの、感覚を数字に落とし込むという話も同じですが、やはり数学的に説明できると理解していただきやすいので。

—では最後に「ぷよシート」の効果を実験で見せていただきたいです。

はい、このように筒をスマートフォンに乗せて…この鉄球を落とします。

—なんともないですね。あの重さの鉄球をこれだけの高さから落としたら絶対にヒビがはいるのに、シートの効果はすごいですね。実験を見せてくださって、ありがとうございました!

他にも靴の裏の汚れをとるマットや、耐震用のシートなども作っています。色々なところで、ウレタンゲルが役立っているので注目してみてくださいね。

「感覚を数字に落とし込むことで共有できる形にしていく」というのは、とても大切なお話だと思いました。スマートフォンに鉄球を落とすときはさすがに緊張しましたが、さすがウレタンゲル、なんともありませんでした。開発だけでなく、営業の際に説得力を生むためにも数学を使っているというお話は大変興味深かったです。川島さん、ウレタンゲルと数学の貴重なお話、ありがとうございました!

今回のインタビュイー

川島 正規(かわしま まさき)
1973年岐阜県美濃市生まれ。熊本工業大学工学科構造工学科卒業。株式会社エクシールコーポレーション開発営業部部長。
「ぷよシート」の開発者。

このテキストは、(公財)日本数学検定協会の運営する数学検定ファンサイトの「数学探偵が行く!」のコンテンツを再編集したものです。

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