マーケティング担当者向けに、アドテクノロジーの基礎知識を学ぶ本連載。前回は、マーケティングの基礎戦略となるセグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングをおさらいしました。
ターゲティングはアドテクノロジーにおける要の機能の1つです。このターゲティング手法の進化がきめ細かい広告配信を実現し、ディスプレイ広告の成長に大きく寄与してきました。
(2015年4月)現在のディスプレイ広告では、そのほとんどが、何らかのターゲティングを用いてキャンペーン設定が行われていると言えます。ところが、DSPにおけるターゲティング手法は、各社によって手法が少し異なります。今回は次の視点で代表的な方法を紹介します。
・ 広告主サイト訪問者を中心としたアプローチ
・ Web閲覧行動を中心としたアプローチ
・ハイブリット型
【1】広告主サイト訪問者を中心としたアプローチ
このアプローチを行う上で用いられる代表的な手法は、リターゲティング(※注)です。これは、ひとことで言うと「自社サイトに訪問したユーザーをターゲティングする手法」となります。
一度訪問したユーザーがサイトを離脱したのち、企業は、購入を保留した商品の再検討や関連商品の訴求、サイトへの再訪問など、ユーザーの状態を推定しアクションを促します。主に、複数商品やリピートする商品など、既存顧客へのアプローチとして利用されることが多い傾向にあります。
同手法はこの数年、最も予算が拡大していると言えるでしょう。その理由は、Webサイト上でユーザーのアクションが完結する「ダイレクトレスポンス型」の領域で積極的に利用されたほか、その成果が測りやすく、DSPのターゲティング手法として定着したためです。
また、昨今注目されている手法として、「ダイナミックリターゲティング」があります。これは、サイトに訪問したものの購入に至らなかったユーザーに対し、バナー内に複数の商品クリエイティブを生成し、「動的に変化させながら表示する」手法です。
ECサイトであれば、訪問したユーザーごとに、閲覧したページの商品やサービスを解析し、最適な採用素材(この場合は、購入する可能性が高い商品)を選択後、バナーを自動で生成します。もちろん、バナー内の掲載商品やサービスは複数の組み合せも可能です。
出稿には、広告主からの自社商品マスタ (商品リストや画像など)が必要となります。広告配信事業者は、どのユーザーにどのような商品を表示すると最適かを分析します。これは、各社によって独自のアルゴリズムが用意されており、単純な閲覧履歴だけでなく、蓄積された商品情報の解析や学習結果から、閲覧していないアイテムを抽出することもできます。
同手法は主に、商品点数が多いECサイトや旅行業界、不動産業界などで活用が進んでおり、今後も更に市場は伸びていくでしょう。
※注 : 「リターゲティング / Retargeting」は、マイクロアドの登録商標です。
【2】Web閲覧行動を中心としたアプローチ
代表的な手法は、行動ターゲティングです。ユーザーを、インターネット上での行動をもとに何らかのカテゴリに分類し、このカテゴリを組み合わせて指定することでターゲティング対象を絞り込む仕組みとなります。
従って、行動ターゲティングは、「ユーザーの興味・関心の特性に対するターゲティングする手法」と表すことができます。
例えば、サイトの訪問数そのものが少ない場合や、再訪問の頻度・回数が少ない場合、新しい商品のため認知が低い場合などに「見込客(潜在的顧客)へのアプローチ」として利用されることが多く、うまく活用することで、見込客の誘導を促すことが可能です。
【3】ハイブリット型
ハイブリット型とは、行動ターゲティングなどの外部データと、自社サイトのコンバージョンデータなどを積極的に融合してターゲティングする手法です。主に、「Look-alike」や「リターゲティング拡張」といった手法が挙げられます。
「Look-alike」は、コンバージョンしたユーザーが、どのオーディエンスカテゴリに所属していたかを知ることで配信対象を指定します。弊社のDSP「Logicad」の場合、広告主サイト訪問者やコンバージョンしたユーザーのオーディエンスカテゴリとDSP全体のカテゴリを比較することで、ターゲットユーザーと関連の強いカテゴリを選択することができます。
一方「リターゲティング拡張」は、コンバージョンなどを行ったユーザーに似ている対象者を、保有している膨大なインターネットユーザーの行動データなどから類似する行動・嗜好の特性を照らし合わせることで抽出します。
従って、「Look-alike」にように明示的にカテゴリを指定しません。これらは各社によって異なりますが、類似度や配信規模などで配信を指定します。
以上が、DSPにおける代表的なターゲティング手法の紹介となります。最後に、これらのターゲティングで考慮したい3つの視点を考えてみます。
1つ目は、中間ゴールを設定すること。最終ゴールとなるコンバージョン(CV)ユーザーだけでなく、CVに至る複数の過程を考えてみましょう。過程(中間)を分析対象とすることで、CV数が少ない時点でも新たなデータの取得や学習速度を高めことができます。
2つ目は、他の施策との関係性を考慮すること。データに対する判断では、「何を前提としているか」を忘れてはいけません。施策の影響を受けたユーザーかそうでないかによって、結果は同じでも判断は異なります。他の施策の影響を見ずにミスリードされないよう注意しましょう。
3つ目は、自社サイトのWeb解析で得られたユーザーセグメント情報を積極的に活用すること。各セグメントの分類条件をDSP配信設定や解析・学習に反映し連動することで、予測精度が向上します。これに伴い、注目を集めたソリューションが、ターゲティングユーザーの集約・管理を可能とする「DMP(データマネジメントプラットフォーム)」です。
次回は、このDMPについて解説します。
執筆者紹介
ソネット・メディア・ネットワークス 商品企画部
2000年3月に設立。ソニーグループの一員として、インターネットサービスプロバイダー(ISP)を運営するソネットの連結子会社としてインターネットマーケティング事業を展開する。国内最古のアドネットワーク事業者として10年以上の実績があるほか、RTBの市場拡大に先駆け、DSP「Logicad(ロジカド)」を自社開発。2014年10月には、インターネット広告に関する技術の精度向上を目的とした研究開発を行うラボを新たに設立するなど、独自のポジションを築く。